表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Fortune-teller  作者: marimo
6.リサーチ
25/266

リサーチ5

「そういう相手しか受けてないよ。こっちが払う相手だとお金が続かないだろ。それに勘違いされない程度で抑えているし、家まで送らない。せいぜい、駅まで。迎えに行くことはしたこともないし」

「ふーん、でも、デートでしょ」

「デートと言えばそうかな。でも、リサーチをかねてるし」

「リサーチ?」

「女性との会話で色々と勉強中だからね」

「呆れた。それじゃあ、相手がかわいそうじゃない」

「喜んでるよ。相手はうれしそうに食事してるし、気分良く帰ってるし」

「次のデートでも?」

「ああ、合わないタイプ、会話しても底が見えるタイプは二度目はないよ。でも、続いても、せいぜい数回程度」

「とっかえひっかえになるわけだ」

「誘われると断れなくてね」

「評判が悪くなりそう」

「そうか、俺の周りも似たようなものだけど」

「宝陽って、遊び人のナンパ師が多いって聞いたことがある」

「誤解だな。俺は誘われたことはあっても、そこまで誘わないよ。深入りされると困るし」

「浅い付き合いなんだ」

「広く浅くがモットー。親父と同じ」

「お父さんに似たのね。うちの父親と大違い」

「お前の父親のタイプなら分かるな」

「知らないくせに。有名じゃなかったよ」

「有名?」

「画家だったの」

「ふーん。でも、分かるって言ったのは別の意味。雪人って人に似てるだろうな。性格か顔か、そういう部分が」と言われて驚いた。そう言われてみたら、確かに似ている部分があった。父も優しくて怒ったところを見たところがない。穏やかで海のような人だった。思い出して辛くなってうつむいてから、

「気にしない」と呪文を唱えた。

「なにが?」と聞かれても黙っていた。

「画家の娘にしては、趣味が悪いかもな」

「趣味?」

「受ける場所に合わせて服装を選んでこないからな」

「え、どういう意味?」

「普通はサバトを受験する前に、リサーチはするだろ。そこの有力者の好みの服装って言うのがあるだろうから、それに合わせて服装から髪型とか、色々変えてきてもいいと思うけど。お前は野暮ったかったから」

「失礼ねえ。普段着で行って何が悪いのよ」

「今度からそれぐらいは気を使えよ。占い以外にも気配りは必要だ」そこまで考えてなかったので、ちょっと落ち込んだけど、

「母子家庭だと無理だよ。あなたのようにおこづかいたっぷりじゃない。バイトも許可が要る学校だしね」

「家でバイトしろよ」

「プロキオンと違って、お客さんはそれほど来ないの」

「営業努力が足らないな」

「お坊ちゃまに言われたくない」

「俺は高校までは確かにおこづかいはもらってたけど、大学からは自力だ。だから、ずっとバイトしてるんだし。友達もあまりただでは占わないからな」

「え、そうなの?」

「母親がそうしたんだよ」

「お父さんがくれるんじゃないの?」

「父親は見栄っ張りだけど、車を買ってくれた程度。おこづかいとか生活費とか、そういうものは親父の秘書が管理していて、俺がもらえるのはお前と変わらない程度のおこづかいだけ。母親は気前は良かったけど、大学からは『自分で何とかしろ』って言われたからな」

「ふーん、でも、もらえるだけいいじゃない。お姉ちゃんなんて、学校に内緒でバイトして貯めてた」

「ふーん、しっかりしてるな」

「ある部分だけしっかりしてる」

「お金だろう?」と聞かれて、にらみたくなった。

「ああいうタイプは早めに終わらせたくてね」

「え、それで、早めに席を勧めていたの?」東条さんは姉だけは世間話は少なめで、早めに席を勧めて、早めに占っていたように感じた。

「ああ。相手に合わせるからな。せっかちな人には早めに、苦手なタイプはそれなりに、学生は毎回似たような相談だから、それで早めになるし」

「そう言えば、気になってた。学生割引と内容の濃さが関係あるってどういう意味?」

「だから、働いている人だとそれなりに悩みが深かったりするんだよ。学生だと成績や親、友達、恋愛が一番多いからな。それでそこまで時間は掛からないから早めになるだけ」

「料金に合わせて占ってるってこと?」

「そういうわけでもないけどな。働いている人だとじっくり占いを聞きたがる人もいるよ。それで時間が掛かる人が多いだけ。学生だとそこまで熱心なのは少なかったよ、俺はね」

「あなたの場合はファンが多そうね。雑談のほうが多くなるタイプでしょ」

「それも大切だろ。また、来てもらわないといけない。気分良く帰ってもらい、また、来たいなと思ってもらわないと。リピーターが多くないと成り立たないからな」

「商売上手だね」としか言えなかった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ