蒲生さん4
正月前に大掃除ではなく、中から小ぐらいの掃除をやっていたら、
「ねえ、あなた」と毛皮を着た女性が店に入ってきた。ただ、体形が太かったので、「熊?」と驚きそうになったけれど、よく見たら、中年の女性で、化粧は濃かった。
「ねえ、あなたがそう?」いきなり聞かれて、
「あの、お客様ですか?」と聞いた。
「今日は予約は受け付けていないはずですが」今だと手紙の相談の数が増える。新年向けを顧客に発送したりして、母はその準備に追われている。そのため、コーヒーを頼まれていて、そろそろ作らないといけないなと思っていて、相手は店を見回して、
「汚い店ねえ」とバカにするような態度だった。
「あの、どちら様でしょう?」
「あら分からないの?」とバカにしていて、
「初めての方ですか?」
「失礼な子ね」どっちがなんだろうなと思えた。横柄な態度、飛び入りの客と言うわけでもなさそうで、
「蒲生よ」と名乗ったので驚いた。
「ああ、あの」と相手を見てから、
「私の首を絞めた」とつい、言ってしまった。それぐらい嫌な気分になった。
「なんですって?」相手が睨んでいたら、母がやってきた。
「真珠、コーヒーはまだ?」と言いながら、店に入ってきて、
「どなたなの?」と母に聞かれて、
「蒲生さん」
「あなた、母親?」蒲生さんの母親らしき人が聞いていた。
「そうですが」母が答えたら、上から下まで値踏みするように見て、馬鹿にする態度に変わった。母はカジュアルな格好をしていたからかもしれない。店を見回して、
「こういう家の人だと、言いがかりをつけてくるものなのねえ。嘘までついてね」と言ったので驚いた。
「お言葉ですが、あなたの息子さん、で、いいですよね?」母が聞いて、相手は顎を突き出していて、母を馬鹿にするような態度のままで、
「息子さんが娘を襲ったのは事実ですけれど」
「でっちあげでしょう?」と言い切った。呆れてしまった。すごい親かもしれない。
「うちの俊夫ちゃんに限って、そんなことをするわけがないわ。たちの悪い女に引っかかって、大方、金目当てなのね」
「お金?」と私が聞いたけれど、母が、
「言いがかりはそちらでしょう。映像をご覧になってからおいでください」
「それもでっち上げよ。そうに決まっているわ。そうでなければ、何かの間違いよ。訂正しなさい」と命令口調で驚いた。
「訂正?」私が驚いていたら、
「あら、訂正するのは、そちらになるかもしれないですよ。もしも、あなたの息子さんが」
「お母さん」と止めた。