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Fortune-teller  作者: marimo
意外と優しい
241/266

意外と優しい4

 東条さんは、帰ると言うので、外まで見送ることにした。改めて、

「ごめんね」と謝った。

「泊まってやりたいけれど、俺を待っている女性たちがいるために、泣く泣く帰らないといけない」

「はあ? 懲りてないね、あなた」おじさんがいなかったので、

「お前、あの人にちゃんと言えよ」

「なにを?」

「好きだと。付き合ってほしいと」と言われて、驚いた。

「どうして、そんなことを言うの?」

「あきらめきれるのか?」と聞かれて、

「良く分からない」と答えた。

「なんだよ、それ」

「高根の花だと思っていたから、付き合いたいとか、そういうことも考えないで、とにかく憧れだけで見てた。優しくって、頭が良くって、顔も良くて」

「俺の方がいいだろう」と言い切ったので、

「うぬぼれが強いね。それは好みの問題 雪人さんのほうが素敵」

「そうか? 運動ができなさそうだけれど。世渡りも下手だろうし」

「え?」

「相変わらず、相手を美化して、ちゃんと分かってないな。あの人のこと。ちゃんと見ろよ。それで、俺とどちらがいいか選べ」と言われて驚いた。

「え、でも」

「ちゃんと考えておけよ。宿題だ」

「えー、嫌だ」

「うるさい。お前はそれぐらい言わないとはっきりさせないだろうから。それだと俺が困る」

「別に困らなくても、その間に、あちらの美女、こちらの美少女と遊べばいいでしょ。いたずらや痴漢に遭いそうな美女と」

「お前、根に持ってるだろ」

「ああいうときに本音が出るよね。警察の人にそこまで説明する?」

「いや、分かりやすく言ったほうが」

「懲りないわね」と言ってから、東条さんの服を見た。

「え、これ?」東条さんが困った顔をしたあと、

「かすり傷だ」服の一部が破れていた。上着で隠れて見えにくくなってはいたけれど、

「言わなかったじゃない。警察の人にちゃんと言わないと」

「いいよ、これぐらいは」

「この服、高いんでしょ?」

「いや、大丈夫だから」東条さんの顔を見た。笑っていて、

「笑い事じゃないよ。もし、刺されていたらどうなっていたか」

「大丈夫。ちゃんと避けただろ」

「馬鹿。そういう問題じゃないでしょ。あなたは無茶よ。相手はナイフを持ってたんだよ。いくら貧弱な体形の男性だったとしても」

「お前も結構、相手に失礼なことを言ってるぞ」と笑っていて、東条さんにしがみついた。

「お、おい」と東条さんが珍しく慌てていて、

「ごめん」としがみついたまま言った。

「どうした?」と優しい声がした。

「ごめん、私のために。東条さん、怪我しなくて良かったよ」

「大丈夫。真珠がついていてくれるから」

「でも、怪我してたら」

「大丈夫。真珠が無事だったことのほうがうれしい」と言ってくれたので驚いた。

「じゃあ、良い子でいい夢を見ろよ。東京で会おう」と言いながら、頬にキスされてしまい、

「あー!!」と怒った。

「さ、退散」と離れてしまい、

「もう、要領がいいんだから」とにらんだけれど、それほど嫌ではなかった。前はあれだけ嫌だったのに。東条さんはさっさと車に乗り込んで行ってしまい、

「ま、いいか。減るもんじゃないし」と言ってから、おじさんのところに戻った。

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