意外と優しい1
パトカーが来て、警察から話を聞かれた後、おじさんの家で待つように言われて、移動することにした。近所の人が何人か集まってきていて、警察の人が、
「はい、戻ってくださいね」と、呼びかけていた。と言っても、田んぼ、畑の多い場所なので、それほど人は多くない。先ほど襲われたときも、通りかかる人は一人もいなかった。
「あの人がお父さんを殺したのかな?」心がまだ落ち着かず、何を言っていいかも分からず、一番気になっていたことをつい聞いてしまった。
「お前、いきなりそういうことを言うな。事情も分かってないんだし」送ってもらいながら、東条さんに怒られた。
「でも、だって、気になって」
「お前の父親は殺人と決まってないのに、お前が決めつけて言ってしまったら、大概の人は驚いてしまうぞ」
「そう言われるとそうだけれど」なぜか、あの人がひき殺した犯人だと感じていた。ほとんど確信に近いものがあった。
「事情を詳しく聞いてみないと分からないだろう。でも、お前はそう感じるのなら、そうなのかもな?」
「あの人、お父さんとかかわりがあるんだろうね。それで私も狙ったのかな?」ナンバーを確認したら、あのひき逃げの車だと分かった。喫茶店の見える位置に止めていなかったようで、それで、あの時、喫茶店の近くに居ても分からなかったのかもしれない。
「見張ってたのかな? あの店で」喫茶店から、私とおじさんが何度もうろついた場所は見えなくもない。ただ、人影がいるとしか認識できない程度だ。それでも不安だったんだろうから、何度も見ていたのかもしれない。
「あいつが本当のことを言えば、分かるだろう」
「本当のこと?」
「元木たちの態度と変わらない場合だと長引くから」
「ああ」としか言えなかった。ああいう人たちの考えることは良く分からなかった。
「とにかく気にするな。家に戻ってから話したほうがいい」と言われてしまった。