黒い車の人8
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近所の人に頼んで、ロープを持って戻り、男性を縛り上げたあと、東条さんが私を見て、
「大丈夫か、真珠」と聞かれて、
「え、いや、大丈夫ではあると思う。というより、あなた、どうして、ここにいるのよ? 東京にいたんじゃないの? さっきの電話は?」
「車を止めて、おじさんの家の近くで、お前に確かめようと電話をしたときだ。まったく、なんで家におとなしくしてないんだ」
「え、だって、狙われていても、家までは」わからないはず……ナイフの男性を思わず見た。
「あれ、どうして家が分かったんですか?」と聞いても答えてくれなくて、
「とにかく、警察に電話をするよ」と東条さんに言われて、うなずいた。
ロープを借りた近所の人がやってきて、
「大丈夫かい?」と聞いてきた。
「はい、すみません。ロープをお借りして」
「警察に電話をしますから、見張っててください」と東条さんが言って、
「え?」と嫌そうだったけれど、東条さんに言われて、相手を見張っていた。後ろ手に縛って、足も縛ってあり、転がっていたけれど、目は明らかににらんでいて怖かった。もがいてはいるけれど、やせすぎて力はなさそうで、ほどけることはなさそうだった。
「この人、何をしたの?」近所の人に聞かれて、
「えっと、ひき逃げ?」とナイフの男性に聞いた。車は遠くにあるけれど、なぜかこの人の車だと確信していた。
「あの車、あなたのものなの?」と聞いた。
「お前のせいだな。お前が来なければ、俺は逃げ切れたんだ。お前さえ来なければ」と言い出して、
「お父さんを殺したの?」もう一度聞いた。
「え?」近所の人が驚いていたけれど、
「真珠、そこまでにしておけよ」と東条さんに止められて、
「えっと、少女を襲おうとして、襲った犯人を捕まえました。……はい、来てください。え、いや、痴漢やいたずら目的ではありません。まだ、子供ですし、それほどの美女ではないので」と東条さんが説明したので、思わずこぶしで東条さんの脇腹を叩いた。
「痛いだろ。あ、いえ、こちらのことで」と東条さんが慌てて言いわけしていたけれど、
「はい、ですから、すぐに来てください」と東条さんが説明していた。