表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Fortune-teller  作者: marimo
黒い車の人
232/266

黒い車の人3

この章は注意が必要な表現があります。ご了承ください

 おじさんはおおらかで優しい人で、幸枝さんはうれしそうに世話をしていた。年の差は気にならないのか、近所の人が、「奥さん」と呼んでいたので、夫婦だと思われているんだろうなと思った。勝手口から戻ってきた幸枝さんが、台所にいる私を見て、

「休んでいなくて大丈夫?」と聞かれた。

「大丈夫です。ちょっと、不安になっただけだから。ごめんなさい。私のせいで」

「あら、謝ることはないわ。私、こういうのは慣れているの」

「へ?」さすがに驚いて見てしまった。幸枝さんは笑いながら、

「わざわざ説明することじゃないのかもしれないけれど、私ね、前に結婚していたことがあるの。ただ、籍はいれてはいなかっただけで。その人の問題があったから、あの人と一緒になることも遠慮していたの。でも、誘ってもらってうれしかった。こっちに来れたことで、やっと解放されたから」困ったなあ。聞いた方がいいんだろうか?

「真珠ちゃんたちにご迷惑をかけるかもしれないから、私のほうが」

「え、どうしてですか?」

「私の前の主人も、問題を起こす人でね。警察に呼ばれたことが何度かあったの。ケンカしたり、お酒のトラブルがあって」

「大変だったんですね」

「そういう時に、あの人が何かと心配してくれて。こちらに移住するからと誘ってもらうまで、そういう関係ではなかったの、わたしたち」

「え?」さすがに驚いた。幸枝さんが笑って、

「私が困っているから、こちらに呼んでくれたのね。だから、それに甘えてしまったのは私のせいだから。真珠ちゃんは遠慮しなくてもいいのよ。むしろ、私のほうがご迷惑をかけているのだから。勝手に押しかけて」

「おじさんととても仲がいいから。それでいいと思いますけど」幸枝さんが笑いながら、

「真珠ちゃんは大人ね」

「えー、子供っぽいって言われます。背もそれほど高くないし。お姉ちゃんのほうが高いんです。お父さんもそれほどは高くなかったし、お母さんも低いし、誰に似たんだろうねって、お姉ちゃんは言われてます。きれいだから、突然変異だとか言ってましたけれど」

「真珠ちゃんは、真珠ちゃんよ。あの人に似てる。おおらかで優しいところが。私のような女でも、そうやって気を使ってくれるから」

「そんな。私、家が占いを商売にしてるから、あれこれ言われ続けてきてますからね。大概のことは流す癖がついちゃって」

「あら、そうなの?」

「お父さんが喫茶店を、お母さんが占いを。それで、今度のこともあるから、お姉ちゃんは怒ってばかりいるし。お母さんは気丈に振る舞っているけれど、私はどう受け止めたらいいのか分からなくて、それでおじさんに会いたくなって。それなのに、あんなことがあったから。この家の人にも迷惑を掛けちゃったな」

「あら、お互いさまよ。大丈夫。絶対にお父さんが守ってくれるわ。真珠ちゃんが、笑ってくれるほうが嬉しいはずよ。お父さんなら」幸枝さんに言われてうなずいた。

「私の父もね。優しい人だったら良かったわ。家出しちゃったからね、私は」

「え?」

「さ、食事の準備をしないといけないわね」幸枝さんが明るい声を出していた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ