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Fortune-teller  作者: marimo
松島
229/266

松島4

 しばらくぼんやりしていた。買い物に行っていた幸枝さんが戻り、二人で話をしているのが聞こえてきた。おじさんと幸せそうにしていて、年が離れていても仲がいいんだなとみていた。お父さんとお母さんも仲良しだった。お母さんが一方的に怒り、お父さんが黙ってそれを聞いてあげる。そういうケンカを何度かしていた。そういう部分はお姉ちゃんが似ている。お姉ちゃんはお父さんのことをどう思っていたんだろうな?

「どうした?」おじさんがそばに来て、聞いてきた。

「お姉ちゃんとお父さんのこと。私のことも認めてないって、教えてもらった。お姉ちゃん、家族が嫌なの?」

「恥ずかしいんだろう」

「どうして?」

「比べているからだよ。友達の家と比べて自分の家を卑下している。嫌っているんだ」

「そうなんだ。お母さん以外は駄目ってことなんだ」

「母親を認めているのは自分の自慢できる部分、容姿が認められるからかもしれないなあ」

「容姿ね。お姉ちゃん、それが自慢なんだ?」

「あの子はそこの部分が間違っているが」

「え、なんで? 綺麗なら何でも許されるものなんじゃないの?」おじさんが笑っていた。

「笑い事じゃないよ」

「いや、そう考える一部の人がいるのは確かだけれどね。見た目に振り回される人は、相手の本質を見ていないか、見ようとしていないんだ。つまり、見えるようになったら、そこで駄目になるだろうから。見た目の派手さに振り回されていて、自分に合っているかという部分は重要視してないのかもしれないからな」

「はあ、意味わかんないね、それ」

「真珠はあまり深く考えなくてもいい」

「違う。占いを頼まれるじゃない? 結構、容姿の悩みって多いんだってば。それを聞かれても、私、アドバイスしてあげられない。お化粧に興味がないわけじゃないんだけど、そんな余裕なく、生活してきたからねえ」

「これから、やっていけばいいさ」

「お父さんに悪くて、してなかったの」

「どうしてだ?」お父さんと喧嘩をしたやり取りを教えた。旅行前だったから、心残りだったことも言ったら、

「ははは」と笑いだした。

「笑い事じゃないよ」

「お前のお父さんは気にしてないぞ。むしろ、真珠に悪かったと思っているだろうな。生きていたら、『気にしなくてもいい』って、笑ってくれるはずだぞ」おじさんの顔を見た。おじさんが笑ってくれたので、なんだかほっとしていた。

「そうだね、お父さん、そういう人だったね。変なこだわりを持っていたのは、私の方だったんだ。勝手に縛られていたのも、お父さんじゃなくて、私に問題があったかも」

「気にしなくてもいい。大丈夫。真珠はそのままで十分かわいいぞ。絶対に、男がほっとかないから。誘いが多くなるのは真珠の方だ。誘われていないのか?」と聞かれて、そう言えば、神宮司もいたなあと思いだした。

「いるんじゃないか」

「ははは。だって、男友達だもの。そういう意識で見られないよ」

「東条さんという人はどうなんだ?」

「あの人も良くわからない。優しい人だって、友達が言ってる」

「こちらまで真珠を心配してきてくれたから、恋人なのかと思っていたよ」

「違うよ。あの人、もうすぐ大学を卒業するの。私なんて、まだまだ子供扱いだし」

「そうなのか? 年は離れているけれど、仲はいいんじゃないのか?」

「大学生から見たら、高校生って子供かな?」

「そう言われてもなあ。どうだろうなあ」おじさんが困っていた。雪人さんと会話が合わないのは、あの人が大人びているからかもしれないなあ。友達の会話とはあまりに違いすぎた。学問的な話題なんて、友達の誰もしていない。神宮寺だって、テレビの話とか、雑談に「言語以外のコミュニケーション」なんて話題はしないだろう。その辺の違いが、年の差なのか、学歴の差なのか。

「国立大学から大学院にまで進む人って、大人びた人が好きかな?」

「相手の人は国立なのか? それは、確かに難しいかもしれないなあ」

「そう、やっぱりそうかな? 話題が合わなかったから」

「うーん、そう言われてもなあ」

「おじさんは今はどういう話が多いの?」

「天気が一番だな。野菜はそれが関係ある」

「なるほどね」

「あとは健康の話だな」雪人さんの周りだと、健康談義も骨がどうとか、筋肉がどうとか、グリコーゲンがどうとか言い出しそうだ。

「デオキシリボ核酸。アデニン、チミンと言われても」

「市民?」

「ついていけない」

「俺も分からないぞ、それ」とおじさんが笑っていた。

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