松島2
設定を考えたのは、かなり昔になります
警察に届けたほうがいいだろうと言われて、おじさんと二人で警察に行った。目撃者の人の連絡先を教えてもらって、警察に教えて、
「せめてナンバーが分からないと、難しいかもしれないですよ」と言われてしまった。
家に帰ってから、
「大丈夫だった?」幸枝さんに聞かれて、うなずくしかできなかった。
ノックがあり、雪人さんがドアを開けたら、
「聞きたいことがあったから」と、東条さんがドアの外に立っていた。
部屋に入ってから、
「本ばかりだな。片づけに来る女性もいなさそうだ」と東条さんが見回していた。
「女性?」雪人さんが驚いていた。
「この間の女性」
「この間?」
「同郷の女性」
「ああ、真澄ちゃんか」と笑っていたので、
「真珠は傷ついてた。お前、気づいてないのか? あいつの気持ち」雪人さんが困った顔をしていた。
「その顔は知ってるんだな。それで、どうする? 同郷の子と戻って結婚でもするのか?」
「いや、それは……」
「煮え切らないな」
「しない」
「ふーん」
「できないと断った。正月に戻るように言われたけれど、今年は戻れそうにないから。断ったけれど、結婚の話もしていたから、はっきり断ったよ」
「なんで?」雪人さんが窓の外を見て、
「真珠の気持ちを知って、どう思った?」と聞かれて、
「うれしかったけれど」
「そうじゃなくて、付き合う気があるかどうかを聞いている」
「付き合うって言うのは、きっと、彼女のほうが困ると思うから」
「どうして?」
「それは……」
「どう思ってるんだ? 真珠のこと。好きなのか?」と聞かれて、困った顔をした後、
「かわいいと思う。ひたむきで優しくて」
「気にはなっているみたいだな」
「彼女の気持ちはとてもうれしかったから」
「だったら、どうしてはっきり言ってやらない?」
「僕はもうすぐ東京を離れる。それに、向こうでも忙しいだろうから、彼女と会う時間は」
「デートするぐらいの時間作れよ」
「無理だよ。そういうところで、無理というか。友達と約束していても、忘れてしまうぐらい没頭してしまうときがあって、何度か約束を守れないことがあった。彼女と約束しても、同じことをしてしまうだろうから。真珠ちゃんは身近な誰かと楽しんだほうが」
「あいつの気持ちはどうなるんだよ? お前のことをずっと憧れていたんだぞ。はっきり、答えを出さないまま、このまま別れるって言うのか?」と聞かれて、困った顔をした後、
「僕はそばにいないほうがいいと思うから」
「卑怯だよな。女性に決めてもらいたいってスタンスか? 相手の女性は困るだろうな。真珠の気持ちぐらいは応えたらいいと思うけど。どう思っているのかだけでも告げたらいいだろうに。あいつ、ずっと、篝里さんにあこがれていたみたいだ。気持ちを伝えなかったのも。ああ、知ってるだろ。あいつの父親のこと。遠慮があったから。ああいうことがあって、きっと、言わないかもしれないから。俺がよけいな口出しをしていると思っているだろう?」
「いや、それは……」
「俺から教えないと、あいつ、お前には言わないと思うからね。だから言っている。おせっかいなんて焼くのは、俺はしたことはない。でも、一言言わせてもらいたいから、そうしないと、篝里さんは何も答えを出さないまま、ここからいなくなるだけだろう?」雪人さんは何も答えなかった。
「それでは、思いを残したままになる。せめて、あいつがこっちに戻ってきたら、言ってやれよ。あいつのことをどう思っているのか。真珠がどうするかは知らないけど。気持ちぐらいは応えろよ。たとえ、デートする時間がなかったとしてもね」雪人さんが黙ってうなずいていた。
「真珠は今、支えがいるんだ。どうしても」
「支え?」
「狙われたんだよ」
「狙われた?」
「事情は詳しくは言えない。父親の失踪のことに関係があるのかもしれないけれど、支えにぐらいなってやれよ。あいつは篝里さんに憧れ続けていたからな。せめて、優しい言葉ぐらいはかけてやれよ。そういうこともしなさそうに見えるからね」
「君がいるだろう?」
「あいつが好きなのは、篝里さんの方だから」雪人さんは黙っていた。