父の足跡3
「聞いても教えてくれない」
「そっとしておきなさい」
「分かってる。その人の息子のことも、会うことを反対してるし」
「息子?」
「ああ、そう言えば、この間、会ってると思う。来てくれた人」おじさんが驚いていた。
「そうか、彼が」しばらく黙った後、
「あの人が好きなのか?」と聞かれて、
「とんでもない。あの人はちょっと困る」と慌てて訂正した。
「あれ、そうなのか? てっきり、好きなのかと思っていたが」
「ただの同業者の子供で、占い師の見習いとして、ライバルって位置関係なだけ。ただ、向こうは勝手に、私を気に入っているみたいだけれど」
「そうか、血は争えないな」
「え、どういう意味?」おじさんが困った顔をしていて、
「やっぱり、お母さんとあの人、恋人同士だったんだね」
「それは昔の話だから。言いたくないんだろう」
「気持ちは分かる。お父さんの圭吾さんのほうは良く知らないけれど、息子のほうは、女性とのデートで忙しそう。よくわからない人だしね。価値観が違いすぎるから」
「そうなのか」
「お父さん、どこを歩いたのかな? こっちに来たら、わかるかもしれないと思ったけれど」おじさんに頭をなでられた。
お父さんの手帳に書かれた、地名を案内してもらうことにした。本当は、松島に行きたかったけれど、それだと遠回りになるからと、後にしようと言われた。
道に迷って、違う道に入ってしまい、かなり経ってから気づいて、
「戻らないといけないな」とおじさんが言ったけれど、
「ここは来た気がする」
「そうなのか?」
「そう思えるの」
「それなら、もう少し先まで行ってみようか」
「この道はバスは通らないのかな?」
「通るかもしれないが、聞いてみないと」
「真珠はお母さんに似ているんだろうな。感受性が強くて」
「お母さんもこうだった?」
「良く怒っていたよ。男性が違う人とデートしていたのが分かるって」お母さん、すごいかも。
「あの子は良く電話が掛かってきていた。男性から誘われて」
「お姉ちゃんと同じだね」
「見た目が派手だからかもしれないな。真珠もお化粧をしたら違ってくるさ」
「お母さんに目が似てるって、何度か言われた。そうかな?」
「お父さんよりは似ているな。性格はお父さんにもお母さんにも似ている。適当に流すところとか」
「おじさんも似たようなところがあるでしょう?」
「そうだったな」と笑った。
「あ、待って」と止めてもらった。
「どうした?」
「この辺り」窓の外を見た。なんだかとても気になった。車を降りて、あたりを見回した。なんてことはない風景だった。近くに林があり、人は誰もいない。辺りは薄暗くて、民家が遠くにある程度で、
「どうかしたのか?」と聞かれて、
「なんだか、気になって、不思議だね」おじさんがあたりを見回していて、
「お父さんもここを通ったのかもしれないな」と言われてうなずいた。