広大おじさん1
駅に降り立った。おじさんが迎えに来てくれているはずだけど、と見回した。父親代わりのような存在であるおじさんだけれど、実際には母のおじに当たり年齢はいっている。見回していたら、おじさんらしき人が近づいてきて、手を挙げていた。そちらに寄っていったら、
「良かった。ちゃんと着いて」
「そこまで子供じゃないから」
「でも、心配だよ。藍子もそそっかしいところがあるから」
「お母さんに似てるかな、私?」
「似てるだろ。顔もそっくりになってきたな」
「え、そう?」
「お前もモテるようになるぞ。もう少ししたら」
「え、なんで?」
「そう思える」
「そうかな? お姉ちゃんのほうが」
「あの子はどんどん下がってくるかもなあ」
「え、そういうものなの?」
「寒くないか?」と言いながら、荷物を持ってくれて、
「大丈夫だよ。持てるよ」と言ったけれど、
「お前は輝子と違うな。だから、あの子はモテなくなる。もしくはすぐにダメになる」
「え、そう?」
「男に荷物を持たせて、お礼も言わないようなのは、付き合っていくうちに疲れるだろうし」
「え、そうなのかな? よくわからなくて」
「綺麗なだけでモテるとしても、難しいだろうな。あの子が結婚したいと思っている相手には。今のうちに見つけておかないと難しいかもしれない」と笑っていた。
「え、なんで?」
「若いのが一番だろ」
「え、やだ、それ」
「お前は大丈夫だ。輝子はそれぐらいぐらいしか取り柄がない」
「おじさん、言い過ぎ」
「でも、そうだろう。私や勝友君、お前に家事をやらせて、長電話しているような娘では」
「そうなのかな? 綺麗ならいいじゃないって、お姉ちゃんなら言いそう」
「あの子に合わせるのはやめておきなさい。これからは」と言われて驚いた。
「どういう意味?」
「真珠は良い子すぎるから」と頭をなでられた。
「全然よい子じゃないって。勉強だって、それなりで、容姿だって」
「そうか? かわいいと思うぞ」ともう一度なでられた。
「お姉ちゃんのほうがかわいいと思うけどな」
「年寄りには真珠のほうがかわいいと言われるだろ」
「そうかもしれないけどね」近所のおじいちゃん、知り合いのおじさん。ほとんどが、私には「かわいい子だね」と言う。お姉ちゃんにはなぜか言わない。ときどき、「綺麗な子だね」と言っている人もいるけれど、そう言われたら、少ないかもしれない。
「どうしてなの? お姉ちゃんのほうが綺麗だよ」
「はは、どうしてだろうな?」とおじさんが笑っていた。