虫の知らせ3
冬休みが近いこともあり、周りは楽しそうだった。私はただ、ぼんやりすることが多い。この頃、変な夢ばかり見るからだ。
「おーい、月野。占ってくれ」例によって高津が寄ってきた。
「ダメだって」とそばの女の子たちが止めてくれた。
「ごめん」とだけ言って机に伏せた。
「もう、無神経だな。真珠だって、いつもいつも占えないってことぐらい知ってるでしょ」
「え、ああ、そういえばそうだったな」
「高津はすぐそれだ。前に分かっていることなのに、すっかり忘れて、また頼んでくる。普通さ、それぐらい覚えて」
「ああ、分かったから」女の子たちにこれ以上責められたくないらしく、高津が逃げ出しているようで声が聞こえなくなった。
「あれだから、いつまで経っても同じような相手と同じように失敗するのよ」
「もういいじゃない。高津のことは忘れて違う彼氏を見つけたら」そばで言い合っていた。伏せているとはいえ、そばにいるから聞こえてしまうんだけど。そういうのにも気づいていないのか、
「あいつ、つくづく無神経」
「わかったってば。それだとあいつ、気づかないよ」
「別に好きな訳じゃないんだからね」未練たっぷりな声でそばで話している。
「わかった、分かった。いいよ、言い訳は。好きならそれで」
「違うってば」
「でも、高津、この間、気に入った女が見つかったみたいだぞ」誰か、男子の声が聞こえた。そういう情報は言わないほうがいいと思う。
「痛いなあ」教えた男子を叩いたらしくて、
「俺に八つ当たりするなよ」とやりあっていた。