縛り5
「母親を見てると、中々女性とは深く付き合えないかもしれない」
「え?」
「なんてね」とはぐらかした後、「とにかく、一緒に旅行に行こう。そうして楽しめば」
「えー、あなたと一緒だと楽しめない」
「会話に困らないよ。俺は大抵の話題には合わせられるしね」
「え?」
「どうした?」
「なんでもない」この間の雪人さんとの会話を、つい思い出してしまった。
「それにさ、人によって、立ち直る速度が違うんだよ」
「速度?」
「そう。女の子って、結構、周りの女性の意見に振り回されている気がするんだよな」
「男は違うの?」
「うーん、どこかで理性的というか、感情に振り回されない部分があるというか、鈍感と言うか」
「え、そう?」
「男の方が気づかないだろ、色々と」そう言われると、そうかもしれないなと考えていたら、
「それで、最後は理性の方が勝つというか、そう言うところがある人が多い気がするよ。でも、女の子の方が立ち直りは早かったりするかもしれないな」
「そう言われるとそうだね」
「それで、そのきっかけと言うのが大事だと思うからね」
「きっかけ?」
「そう、食欲を満たしたり、前のことを忘れるような非日常を体験したりしているうちに、いつの間にか気分が紛れている」
「非日常?」
「日常とは違う時間と空間のこと。だから、例えば、テーマパークでアトラクションを楽しんだり、映画を鑑賞したり、旅行もね」と言われて驚いた。
「旅行」
「そう、だから、一緒に」と言われてにらんだ。そうしたら、
「そういうのも大事なんだと思うけれど。割と女性とか旅行に行きたがるだろう? 煮詰まるとそういうのも全部忘れらるような空間と時間があるからだと思う。そう言うときに俺みたいな話題が豊富で明るいタイプはお薦めだからね」
「なんだか煙に巻かれているような」と言ったら笑っていて、
「いつでも電話してこいよ。付き合ってやるから」
「やっぱり上から目線だね」
「楽しいと思うぞ」と言われてしまった。