縛り4
「お前は似てるんだよ、俺に」
「そう?」
「だから、ほっとけないんだろうな」
「わざわざ来てくれると思わなかった」
「泣いているように思ったから」
「え?」
「お前が泣いている気がして、居ても立っても居られなくてね。だから、行った」
「そう」
「呼んでいる気がしたからな。行ってよかったよ。そばにいるだけで違うと思うからね」
そう言えば、東条さんが来てくれて、なんだかほっとしたのを思い出した。誰かに聞いてもらいたかったことを、母にも神宮寺にも言えなかったけれど、東条さんにだけは素直に話せて、なんだか不思議だなと思った。
「あなたって、不思議」
「ん?」
「あなたになら話しやすいのかもしれないね。そういう雰囲気を持ってる」
「よく言われるよ」
「そう言うから駄目なんでしょ。うぬぼれや」
「本当に言われるから言ってるというのにね」
「あえて口に出さなくてもいいというのに。何で、うちのクラスの男子といい、あなたといい、よけいなことまで口にするんだろう?」
「無理だよ。つい、言ってしまってるんだからね。中々直らないだろうな。いくら注意されてもね」
「そういうものなの?」
「性格とか考え方のくせって、中々直らないと思うけど。だから、毎回同じところで失敗したりして、行動パターンが予想がつくタイプがいるだろ」
「高津がそう。毎回、女の子ともめる、浮気する気持ちが分からない」
「浮気じゃないかもな」
「どういう意味?」
「全部本気」
「呆れるなあ」
「目の前にかわいい子、好みの子が座ったら、つい、声を掛けたくなるタイプなんじゃないか。彼女がいても」
「えー!」
「そういうタイプもいるさ」
「あなたも?」
「気軽に話しかけはするけど、彼女まで昇格はないかもしれないな。せいぜいデートどまり」
「勘違いされちゃうわけだ」
「想像してみろよ。合コン会場に呼ばれる。『彼女、いますか?』とそばのかわいい女の子に聞かれるとする。大概の男は、正直に言わない。その場の雰囲気に合わせて答えを変える。はぐらかしたり、いないと言ったりするかもな」
「え、なんで?」
「その場に彼女がいないやつが多いと気を使うこともあるだろ? それに、目の前の子とうまく行くかもしれないのに、彼女がいるとわざわざ教えないかもね」
「えー、それって不誠実じゃない」
「絶えず違う女性に目が行くタイプはそうだよ。その場がしらけても、『彼女がいるから』と言えるのは少ないだろうな。せいぜい、どっちか分からないように返事をしなかったりする程度でね」
「ふーん」
「女の子も同じだと思うけど。お前、自分があこがれている男性に、『君、好みだなあ、彼氏いるの?』と聞かれて、彼氏がいたとしても、どう答えるんだよ」
「さあ、そのときになってみないと」
「だから、そういうことがあるからね。友達として会っていても、女の人ってやきもちを焼く人も時々いるからなあ」
「違うでしょ。あなたはどっちつかずすぎる。怪しまれるあなたが悪い」
「そうか? 俺は中々彼女はできないかもしれないな」
「なんで?」意外なことを言うので驚いた。