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Fortune-teller  作者: marimo
5.偏屈な人
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偏屈な人3

学校を早く帰るようになったため、

「付き合い悪い。占ってよ」と言われたけれど、

「ごめん。しばらく占えない」と断った。お金を払ってもらえるような占いじゃないってことに気づいて、さすがに気軽に占えなくなって断った。何人かに頼まれてはいるけれど、誰か一人占うと、「あの子は占ったのに」とぼやいてくる子が必ずいるので、そういうこともできない。

女の子の場合はそういう部分でうるさい子もいるからだ。怜奈ちゃんは、

「ほっとけばいいって」と気軽に言うけど、さすがにそういうのでもめるのは好きじゃない。男子を取り合ってけんかしていた女の子たちが、グループを組んで張り合っていたことがあって、それで巻き込まれたこともある。占いでどちらが優勢かを教えろと言われて、さすがにできなくて、何とかごまかして逃げた。結局、その二人のどちらも振られてしまい、他校の女の子と付き合ったらしくて、その男子はかなり責められてはいたけれど、何しろかっこいい男子だったため、相手に優しい顔で謝られたら、それ以上強く言えなくなっていたらしい。それを見て、「好きになったほうが負け」と言っていた女子もいた。

「好きになったほうが折れるしかないってことでしょう」怜奈ちゃんに言われても良く分からない。お付き合いと言うものをしたことがない。告白はされることもしたこともない。そういうのがどうも苦手だ。神宮寺とは噂になったらしいけど、私は何も言われたことはない。向こうは適度にモテるのでデートをしていたらしいと言う目撃情報は聞いたことがある程度。誘われたことも誘ったこともなかった。

 お店に行って、掃除をしてから、先生にお金をもらえるような占いのことを聞いた。

「お金ねえ」と考えていて、

「そうだねえ。一人一人満足する部分が違うこともあるからねえ」

「どういう意味ですか?」

「そうだね。内容重視の人もいれば、ファッション感覚でおしゃれな人に占ってもらいたいとか、素敵な場所で占ってもらわわないと駄目と言う人もいるし、有名な人だったらいいとか、好みが違うからね。若い女性だとそういう人も多い。この間来たお客さんは、ずっと通ってくれている人だけど、うちはそういうのばかりだから。好みの問題かもね。相談しやすいってことも重要なんだろうね」

「相談ですか?」

「そう。女性の場合は恋愛や結婚、進学や就職、子供の相談に、人間関係とか色々あるけど、親身になって相談したいって言うより、愚痴を聞いてもらいたかったり、話し相手になってもらいたかったりすることも多いからね。友達にも親にも相談できないことを相談したいってことかもしれないな」

「はあ」

「でも、人によっては真剣にこれからのことを考えたくて、その指針にしたい人だっている。そういうことだよ」

「そうですか。そう言われると周りの人は真剣に占ってもらいたいって子はそこまでいなかったかも。中には進路相談とか、親が離婚しそうだからどうしたらいいとか、とても相談に乗れないことを言われたこともありますけど」

「そう、それだと困るね」

「未熟だったんですね。と言うか、そこまで考えてなかった。母のところに来る人の相談も近くで聞き耳を立てるわけにいかないので、内容などはそれなりしか分からないし」

「そう」

「先生は迷ったことはありますか?」

「うーん、それはこの年だとあるねえ。前はちゃんと働いていた時期もあったし、それに色々嫌がらせされることもあってねえ」

「大変ですね」

「お金が絡むとね」と言われて、

「え?」と驚いた。とても、お金のことで悩むような人には見えなかった。

「人は変わるよ。こちらは変わったつもりはなくても、人の見る目だけが変わってしまうんだろうな。真珠ちゃんも人生が変わるようなことがあっても、自分をしっかり持てるようにするんだよ」

「そこまで、何もないですよ」と言って笑った。ただ、人生が変わるって程じゃなかったけれど、喪失感はあった。父のことを考えていた。


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