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Fortune-teller  作者: marimo
5.偏屈な人
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偏屈な人1

「汚い」と言いながら玄関周りを掃除していた。草むしりに雑巾がけ。それなりに綺麗にしたいけど、元が古すぎてそこまで綺麗にはならない。これは難しいかもね、と思っていたら、

「あら、珍しい。お孫さんかしら」どこかの家庭の普通の主婦って感じの人がやってきて、慣れた手つきで玄関の戸をあけて中に入っていった。先生はお茶を入れてあげていて、

「ああ、いらっしゃい、そろそろ来るころだと思ってね」と言って、席に着いていた。先生のタロットは我流だった。解釈がかなり飛躍しているところもあり、でも、相手は笑いながら相談して占いを進めていた。ずっと見ていたら、

「お孫さんがいるなんて知らなかったわ」

「ずっと前に別れた女房の関係じゃないよ。この子は押しかけ弟子」と言われて、その人に頭を下げた。

「前にいたスギちゃんみたいにしないでよ」

「彼は研究するのが好きだったから、今もやってるよ、きっと」

「でも、お客さん、どれだけ怒らせたか。でもねえ、この先生に会いたくなるのよね。迷ったときに必ず来るの。そういう人ばかりよ。人生相談も兼ねてるからねえ」

「うちは時間無制限だから、それで来るんだよね」


 占い終わった後、お金を払って行った。じっくり相談にのったためか、お客さんはかなり満足していた。金額は思ったより少なくて、

「これで食べていけますか?」と驚いた。

「大丈夫だよ。それなりにやってける」と言っていた。電話が掛かってきて、でも、先生は、

「ああ、駄目、今日は日が悪い。今度ね」と断っていた。

「なんで?」思わず聞いたら、

「あの人は不満が溜まると来るタイプ。でも、占いなんて信じないから、こうやって断る。相性が悪いから」

「お客さんを断る余裕がどこにあるんですか?」

「占えない人もいるでしょ」と軽く言われてしまい、確かにそう思って断った女子が何人かいた。お見合いパーティーが成功するかどうかを聞かれた先生も逃げた。占わなくても「不成功」と背中に書いてあるような人だった。

「選り好みしてるから、偏屈だって言われちゃうんですよ」

「ああ、違うよ。そうじゃなくて、きっと、ここに住んでるからだね」

「確かに占いするところとしてはふさわしくないけど」

「ま、がんばろう」と言われて、すごいなと思った。


 帰るときに、見慣れた車が見えて、中を見たら東条さんが女連れだった。また、ああやってる。どれだけ女性がいるか知れたものじゃない。そのうち、刺されるだろうなと思いながら通り過ぎた。

「占い師でも色々いるよね」と口に出した。母が所属している占い団体はいくつかある。その集まりに連れて行ってもらったこともあって、かなり個性的な人もいれば、どこにでもいそうなおじさんタイプもいる。たまに不思議な衣装の人もいるけど、色々だった。東条さんやその父親の圭吾さんのような高級な身なりで揃えているような人はほとんどいない。だから、あの人たちはやっかまれるかもしれないなと思った。「お給料はそれなりにいいらしい」と言う話と、「そうでもない」と言う人と色々いた。東条さんも相当バイト代をもらっているんだろうな。うちも色々変えたほうがいいんだろうかと思いながら歩いていた。

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