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Fortune-teller  作者: marimo
4.弟子志願
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弟子志願2

「今時、珍しいね」と言われてしまった。さすがに見るに見かねて、最初に掃除を始めた。エプロンを借りて、掃除したけど、汚れちゃうなと思った。汚れてもかまわないような格好だけど、それでも、汚れすぎだなと思った。

「掃除してくださいよ。だから、お客さんが来ないんです。明日はジャージを持ってきますね。これじゃあ、絶対に固定客ができない」

「いるよ、それなりに。でも、本当に珍しいね。家事はできる子は、久しぶりに見た」

「母が苦手で父に仕込まれました。スケッチ旅行に出るときに、留守を頼まれますから。父は小金を貯めてスケッチ旅行に行くのが趣味なんです。カフェを切り盛りしてましたが、本当は画家だったから」

「へえ、そういう家の子なんだね。じゃあ、納得」話をすると偏屈ではなかった。占い師としては未知数だけど、ごく普通の人だった。

「先生、掃除はしてくれないとお客様が嫌がりますよ」

「めったに来ないんだよね」

「大丈夫なんですか、それで?」

「なんとかやっていけるよ、それでも」

「うらやましいなあ。うちでは今は苦しくて。カフェの収入が減っちゃって。占いのほうが増えつつありますけどね。お弟子さんができたから。いつか、独立しちゃうだろうけど、人気が出てきているから」

「そう」


「先生、お客さん、一人ぐらい来るように宣伝したら。せめて看板を分かりやすく」

「そのうちやるよ」そのうちは来ないパターンだなと思いながら、

「今度、作ってきますね」

「いいよ、あれで。愛着あるし」

「じゃあ、もう一つ作ってきますね。知り合いに頼んでみます」

「悪いよ」

「占いと交換です。前もそうしてもらったから」

「しかしなあ、あれでいいと思うけど」

「先生、占い師なんだから、その辺も気を使いましょうね」と言ったけど、結局、聞き流していた。お客さんが一人も来ずに終わり、早めに帰ることにした。帰りにプロキオンに寄ってみた。意外とすぐ近くだったので、ひょっとして、さっき言ってた『あっち』って、ここのことかもね。と思った。プロキオンの受付に行って、見学をさせてもらえるように頼んだ。

「また、ですか?」と驚いていた。

「あ、あの子よ」と声がして、

「あなた、尚毅のなによ」と後ろから言われて、

「あの、あなたたち」と聞いた。女子高生3人がにらんでいて、

「プロキオン会員の者よ」と言って、何かカードを見せてきた。細かい字で分からなかったけど、プロキオンのお得意様カードのようで、

「へえ、そういうのがなんてあるんだ」驚いた。

「これに入ると優先して占ってもらえるの。そうじゃないと中々予約が取れないんだから」

「そう」としか言えなくて、

「だから、それに入ってないのに、馴れ馴れしくしないでよ」

「ああ、違う。あの人、ただ、教えてくれただけの人だし。私なんて馬鹿にされてるし」と言って逃げた。

「そうでしょうねえ。大してかわいくないものね」聞こえるように言ったので、言い返してやりたかったけど、やめておいた。関わりたくもない。ああいう子に前に絡まれたことがある。神宮寺が好きだったらしくて、それで言いがかりをつけてきた。けんかになりそうなところを怜奈ちゃんが通りかかって止めてくれた。「まともに相手にしたら駄目だ」と後で怒られた。「相手は何を言っても納得しないから適当にあしらえ」って言われてしまい、

「えー、くやしい」と怒ったら、

「無理だって。神宮寺に振られて、真珠に言いがかりをつけている段階でおかしいでしょ。神宮寺に何度も告白すれば済むことなのに、真珠に八つ当たりしてるんだし」

「八つ当たり?」と驚いたけど、後で周りに聞いたら、

「ああいうのって、困るよね」と言い合っていた。何人か似たようなことをされたらしい。相手が好きだと言う気持ちより自分優先の子がああいうことを言ってくるらしい。自分の思い通りにならないことを誰かのせいにするらしく、

「だから、まともに相手にしたって無理だよ」と言い合っていた。今はそういうこともなんとなく分かるようになってきた。

 ロビーの周りの見学していた。待っている間に、グッズを売っているところで友達と二人で選んでいる高校生がいたり、何か紙を渡されたらしく、それを見せ合っていたりして楽しそうだった。占い師に今年中に彼氏ができると言われたと友達と喜んでいる人もいて、楽しそうでもあった。母のところで占ってもらった後のことは、私は知らなかったので、ああいう感じなのかなと思った。終わった後は疲れるために、母はすぐに切り替える。お客さんの話もほとんどしない。もめごとがあったときだけ、秋さんと相談するぐらいだった。時々、ロビーに占い師らしい人が通りかかることがある。働いている時間が人によって違うらしく、占い師の紹介されているボードには時間や占い内容が書かれていて、そのボードの写真の人を一通り見ていた。「ルーカス」のおじさんの言っていたとおり、ほとんどが若い女性。綺麗な人も多く、服装も派手な人は少ない。テレビで見たことがあるような色使いの派手な衣装の人は一人もいないようだった。料金は高い人もいた。でも、後は横並びで、学生割引があったり、プロキオン会員も割引されるようで、

「うちと違う」と言ったら、

「それはそうだ。うちは独自システムだからな」と聞いたことのある声がした。東条さんがロビーまで出てきていた。

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