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混沌に染まる  作者: 式 神楽
第二章 本の虫
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第二十四話 静けさ

第二十四話です。頑張りました、現在朝の四時半を目に映しています早朝と呼べる時間帯。ぶっ通しで書き上げました。これを明日の分にすればいいのにと激しく思ってはいますが、どうしても皆さまに呼んで欲しい!!と、九時投稿にさせていただきました。

と、どうでもいい話はさておき、楽しんでもらえると嬉しいです。それでは。

 カツカツと大きな音を鳴らしながら廊下を行く三人。足取りは重く、しかし早い。

 「サクラ様、ご気分は?」

 「あ、もうすっかり良くなりました!すみません、一人だけ。」

 いえ、と首を振ったレティシアとベルフィーナ。長い道の途中足を止め、桜に向き直ったレティシアが固く手を握る。辺りを見渡し、顔を近づけた彼女は声を抑えて話を切り出した。


 「よく聞いてください。これからすぐにリョウマの所へと向かいます。見聞録の入手を急ぎたいですが、」

 「それは、大丈夫です!龍馬は必ず成し遂げます。…二人には黙っていましたが、一度だけ力が使えたんです。私も必ず役に、」

 桜はアルフレッドの瀕死の重傷を完治させた光のことを話す。勿論記憶には無いため龍馬から聞いた話ではあるが、自分も戦えると。


 「そう、でしたか。話して頂きありがとうございます。ですがあまり気負わないでください。見聞録は後回しに、リョウマへ力を借りに行くとしましょう。」

 優しく、まるで妹をなだめるように桜の頭を撫でた。彼女は最初、龍馬のことを聖女について来たただの付属品と思っていた。しかし、自分が認めていた騎士ロドムを打ち破り、無事任務を完了した彼をすでに認め始めていたのだ。


 「いいですか、皇帝ゼアリス・グリード・ガヴェイン。彼女はとても強欲な人間です。確実に、一体目の混沌の隠匿は彼女の独断によるもの。そしておそらく今回も、彼女は混沌を手中に収め何かを成そうとしています。それが何か、私には分かりませんがとても恐ろしいことを…」

 人の手に余る闇の存在を使って何をしようというのか、考えるだけでも身が震える。

 「味方じゃあ無い、ということですか?」

 間違いであって欲しいという桜の問いに黙って頷くレティシア。

 三人が掲げるのは混沌の排除、もしくは鎮静。対して皇帝の掲げるのは絶対の服従。場合によっては衝突もあり得るのだ。


 「…サクラ様、これからとても大変な戦いが始まるでしょう。西で国を滅ぼした混沌との闘いは熾烈を極め、大勢が奪われたと聞きます。この三人、サクラ様にとって私たちは会って間もなく頼りにはならないかもしれません。しかし、私とベルは貴女を守ります。貴方の命、我が身に変えても。」

 横のベルフィーナも強く頷いた。彼女らが向ける瞳に偽りも、弱さも微塵として存在しない。

 息を飲み、しばしの沈黙。覚悟を決めた桜も頷きを返す。


 再び走り出した三人。狙うは最も危険な夜だった。闇が全てを覆えば、混沌は自ら現れる。見つけるのに最も効率のいい方法だ。

 皇帝に提案したのは意外や意外、桜だった。皇帝でさえ可決を渋るほどの戦略は、単純。真夜中、混沌が活発化するその時に狙いを絞ること。二つ返事でレティシアも同意したため、早くも今夜決行となったのだ。


 雨はもう降っているのかいないのか、微かな粒が足元を濡らすだけ。暮れだした曇天が闇を運んでくる。

 人の往来も無く、夜を迎える準備が整った帝都は静かに眠ろうとしていた。


 三人の靴音だけが響く、すれ違った馬車を操る御者の挨拶に軽く返事をし、小走りに書殿へ急いだ。

 「完全な夜に入るまで、あと一時間もありません。」

 門に着き、呼吸を整えた三人は中を呼ぼうとした。そんな時、遠くから人の気配が二つ。目的はどうやらこの場所、近づいてくる二人は見知った顔をしていた。


 「桜。」

 名前を呼んだのは龍馬だった。どこかへ出ていたのだろ隣には、いけ好かないミドの書殿管理人。

 五人は顔を見合わせた。相変わらず管理人の目はこちらを見ていない。


 「夜になる、中へ。」

 そう言い捨てた管理人に龍馬がついていき門を開けた。後を三人が追う。

 迎えたレド、本名をレオナルドという老紳士が食堂に一同を案内した。目の前にティーカップが置かれたのを合図に、レティシアが話し始める。勿論、龍馬に向けてだ。


 「今からか?」

 「今からです。」

 彼女から語られたのは驚くべきことだった。しかし同時に納得のところがある。飲み干したカップを置き、マクベルの顔を見る。


 「マクベル。」

 「ああ。」

 聞くまでもなく、当然と立ち上がった彼は頷いた。そして初めて、レティシアと桜とベルフィーナに目を向け、微かな笑みを浮かべたのだ。


 「誤解していたよ、君達を。済まなかったと謝罪しよう。」

 頭を下げたマクベル、これからの戦に蟠りは不要と判断した行動だった。そして、夜に外を探すという勇気ある言葉への敬意の表れでもあった。


 「このマクベル・グリード・ガヴェインが全ての知識を持って協力するとしよう。」

 本で鼻と口を隠し、目だけを覗かせた彼が宣言する。

 その言葉に、三つのティーカップが割れる音が響いた。




 「まさか、お前がなあ。」

 衝撃の事実に食堂へ響いた驚きの叫び、三人だけが聞き覚えのあった彼の家名は皇帝と同じものだった。

 「別に言いふらすほどのものでは無いからな。僕は姉があまり好きではないんでね。」

 二人で話す、と書殿本館に移動してきた龍馬とマクベル。彼が皇帝の弟とは、想像にすらしなかった。やはり興味がないのだろう、何のことはないと持っていた本を棚に戻す。


 「お帰り。」

 螺旋階段の手すりに肘をつき、見下ろした黒の君。何度聞いても聞きざわりの良くない話し方だ。

 「これから二体目の混沌を探しに出る。」

 「これから。ははは。夜にとは…危険愛好的な考え、私は嫌いじゃあ無いよ。しかし気を付けるといい、生まれたばかりだからか、激しく飢えている。

 同じ混沌同士何かを感じると言っていた、今もそれが分かるのだろう。


 「あっちはお前の事、知っているのか?」

 純粋な疑問。此方が分かるのなら当然、と龍馬が黒の君を見る。

 「それは無いよ。私は気配を探るのも隠すのも得意だが、向こうはどちらも苦手不得意。それに生まれて日もあまり経っていない、まだ赤ん坊の弱虫さ。」

 「個体差があるのか、?」

 今度はマクベルが問う。一体一体の違いなど分かるはずも、分かりたくもない。所詮は人食いの化け物と。すると、黒の君は目を大きく開いて首を傾げた。そして、口を開いてこう言った。


 「当然だろう?人間一人一人に違いがあるように、私達にも僅かな個体差が存在するのだ。」

 「僕たちと同じ、どこが…っ!」

 「同じだろう、何故なら生きている。」


 言葉が出なかった。笑うように褒められた目に、身体が痺れて動かない。頭がかき混ぜられるような感覚だ。思い出す、あの小さな家で見た悲劇の跡を。

 あれが自分と同じだと。今ものうのう生きて命を奪っている存在が、自分達と。


 「…行こう、リョウマ。」

 強く噛み締めた唇からは血が流れていた。肩を叩いた彼は本の部屋を後にする。その背中には悔しさが見えた。

 

 「何故かき回す。何が目的なんだあんた。」

 腰掛けて本を読みだした黒の君、まるで何も無かったような態度を見せる。

 「私の目的はただ、彼に死を告げる事だ。そして、残り僅かな時を楽しく過ごして欲しいのだよ。」

 ははは、と起伏の乏しい笑い声。それが本心からの言葉なのか、全く持って分からない。


 「君は強い、リョウマ。しかし我が友はとてもか弱い人間だ。…無事に帰ると約束してくれ。」

 マクベルを挑発した時とは違い、今のはとても純粋な、マクベルを思う言葉だった。その時初めて感情を見た気がした。未だに何を考えているのかは分からない、しかし確かなのは二人が友であるということ。

 

 龍馬は理解した。先ほどの発言、ただマクベルを惑わす言葉ではないことを。黒の君は少しでも知って欲しかったのだ、混沌のことを。理解して欲しかったのだ、自分の事を。

 「約束しよう。」

 ゆっくりと頷き、振り返った龍馬。しかし、何故か呼び止めた黒の君が近寄ってくる。


 「いや、良いことを考えた!」

 またも目を細めて笑う黒の君、表情は黒くて見えないが嫌な企みがあることは分かった。耳元で囁いた提案に不安を募らせながら、龍馬は深くため息を吐いた。

いやはや、混沌とはなんとも…ですね。今回は嵐の前を演出するため、少し物足りなかったかもしれませんがとても大切なお話です。呼んで頂きありがとうございます。

私は今から寝ます、皆様が呼んでくださるのを願い安眠を。そして、皆様にご報告が。本当に大したことではありませんが私にとってはとても嬉しいことでした。一時間にPVが100件を超したのです!やったあ!嬉しすぎて眠気が覚めてしまいました。しかし明日は七時起き、少しでも身体を休めようと思います。

本当に応援ありがとうございます。これからも楽しませることが出来るように頑張ります!!

おやすみなさい。

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