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第一試験が終わった夜、エニシダは七人衆を屯所に招集する。
「試験内容を変更する」
事前に何も聞かされていなかった他のメンバーは驚く。
「で、変更って内容は?」
大柄の男が発言する。
「アルプラントの森を抜けた先にあるウォールフォレストの到着。グループ制であることは変わりない」
「ちょっと待て! ウォールフォレストに続く森には多くのスターマンがいる」
「承知の上だ」
ウォールフォレストに向かう道中の森には多数のスターマンが確認されており、とても危険な場所である。噂によると、一度森の中に入れば戻ってくることは難しいといわれている。消息不明者も出ている。
「安全ルートもある。しかし、一グループには危険なルートを突破してもらう」
「お前は志願者たちを殺す気か!」
「七人衆は姫を守る精鋭の集まり――ここで死ぬのなら姫を守ることはできない」
大柄の男以外のメンバーはエニシダの試験内容に口出ししなかった。
第二試験を受けるイバラは集合場所に到着した。自分を含む十五人がすでに集まっていた。背後に気配を感じるイバラ。
「お前で最後だよ。遅い」
「急に後ろに来ないでもらえるかな?」
七人衆の三人も集合場所へ到着する。エニシダが第二試験の説明を始める。
「第二試験は三人一組のグループで行う。メンバー編成はこちらで行っている」
イバラたちに渡された用紙にグループを組むことになるメンバーが書かれてあった。イバラは潔癖症のキザンとヨウという人物がグループのメンバーだった。
「君たちにはゴールである『ウォールフォレスト』に向かってもらう。早く辿り着いた三グループの九名が最終試験へ進める。時間制限はない」
ウォールフォレストに続く森の噂を知る者たちはざわつき始める。
「それと各グループ一名ずつ出発地点が違う。グループのメンバーが全員ゴールして合格となる。一人が早く着いても、他のメンバーが遅ければ不合格になる場合がある」
第二試験の説明が終わり、イバラはキザンとヨウという人物を探す。第一試験でキザンの顔を知っていたイバラはすぐに見つけたが、ヨウという人物が誰なのかわからなかった。
「イバラってのはお前だろ?」
ヨウを探していたところ、彼から声をかけてきた。男性でイバラよりも身長が高く、おっさんだった。指先が出ている手袋に汚れが目立っている服を着ている。髪の毛がボサボサで全体的に不衛生。
「あなたがヨウさんですか」
「ああ。そうだ」
潔癖症のキザンはヨウの姿を見ると悲鳴を上げた。
「んだよ、こいつは」
「キザンは潔癖症なんです。ちなみにヨウさん、口臭が……」
「初対面の人に向かってなんてこと言ってんだ」
ヨウは自身の臭いに全く気付いていない様子だった。
「あああ! この臭い、おっさんが犯人だったのか」
「指をさすな!」
キザンはすぐに持ち歩いている消臭スプレーで自分の体に吹きかける。第一試験の会場で漂っていた臭いの正体はヨウだった。
「でも、ヨウさん。第一試験の時いました?」
「いたよ。だから今、ここにいんだろ」
「いたら、すぐに気づきますけど」
消臭スプレーをヨウにもするキザン。
「イバラ君! 実はカラスノ君と一緒のグループになったんだ」
カマツカが声をかけてくる。彼はカラスノと一緒のグループになった。
「なんでこいつとグループを組まないといけないんだ」
「影のホープとグループなんて心強い。君は隠れて動くことができるからね」
第一試験でやられたことを忘れていないカラスノは不機嫌だった。
七人衆が各メンバーを出発地点に案内する。イバラは一旦、キザンとヨウと分かれた。二人が無事到着することを祈る。
イバラの出発地点には第一試験で出会ったカマツカがいた。
「イバラ君! まさか君と同じ出発地点だとは」
「よろしく。カマツカ」
「どっちが先に到着するか競争しようか」
七人衆の合図で出発する志願者たち。ウォールフォレストに続く森の中へ入ってゆく。