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スターライト  作者: 土方新
選抜試験編
7/21

2

「では、始め!」


 エニシダの合図とともにサバイバルが始まった。

 会場の広さは狭くない。ただ志願者が多く、渋滞が起きている。前後左右に気を配らなければならない。

 背後に気配を感じたイバラはすぐに振り返って後ろに下がる。


「さすがは実力者……噂は聞いてる。炎のホープ」


 全身黒色の服装の彼はイバラを集中的に狙う。目元には隈ができている。彼は姿を消してはまた現れ、イバラは彼の動きに翻弄される。


「彼はまさかホープの所持者……瞬間移動のホープか」


 イバラを狙う彼は背後から必ず狙ってくる。卑怯なやり方だなと思いながらも彼の分析を続ける。


「そこだ!」


 背後から聞こえたイバラは反応に遅れてハンマーのようなもので叩き飛ばされた。全身黒の少年とはまた違った声。


「油断してしまった……これは一対一じゃない」

「僕は第一武隊のカマツカ。君の活躍聞いたよ、イバラ君」


 カマツカはサバイバルの場で自己紹介を始める。イバラより少し身長が低く、髪の色が茶色で鼻に絆創膏が貼ってある。それよりもハンマーで叩かれた背中が痛むイバラ。隣には例の少年も倒れていた。


「なんで君も倒れているの?」

「うるせぇ……巻き込まれたんだよ」

「イバラ君の隣にいる君はおそらく影のホープ? イバラ君の影に潜って隠れてたけど」


 全身黒の少年は影を辿って、カマツカの背後に回った。彼の後ろにあるハンマーで仕返しを目論む。


「このハンマー重い」

「それ一トンだから」


 カマツカは軽々と一トンのハンマーを持ち上げた。驚いたのは一トンのハンマーで叩かれたイバラたちが軽症で済んでいることだった。選抜試験で失格にならないように手加減しているとカマツカは答え、その場を去った。


「てか、君は誰なの?」

「名乗る必要はないが、カラスノ。カマツカって奴のいう通り、影のホープ」


 瞬間移動のホープではなかった。カラスノは七人衆の一員たちがイバラを注目している為、イバラを倒せばポイントが上がるだろうと考えに至った。


「サバイバルって言っていたが、ただ志願者たちを倒すだけではいけないようだ。だが、七人衆はやはりお前を注目している。いつでも俺はお前を狙える。この能力で」


 カラスノは影に潜ってイバラの前から姿を消した。


 十分が経過したところ、大勢の志願者たちが絞られてきた。

 会場に来てからイバラはずっと気になっていたことがある。


  臭う。


 異様にこの会場が臭い。誰かの体臭もしくは口臭ではないだろうかと思いながら、特定まではしなかった。さっきまで消えていた臭いがまた復活している。

 背後に気配を感じるイバラ。カラスノが現れた。


「七人衆の一人、酒飲みのライ」


 カラスノは酒を飲んでいるライに目線を向けた。


「この臭いに関しては他の連中も気づいている」

「あの人の臭い? でも、酒って感じでもないけど」


 再び影に潜ったカラスノ。この臭いの弊害は他の人にも起きている。


「なんだよ。この臭い!」


 自分の服を嗅いでは必要以上にスプレーをかける少年。彼を狙う男の姿。


「危ない!」


 イバラは炎の玉を手から放出させ、狙われていた少年を助けた。少年を狙った男の服が燃えたがすぐに消えた。


「次は焦げた臭いが!!」

「大丈夫?」

「だから、俺は志願しないって言ったのに」


 独り言をぶつぶつとつぶやく少年。イバラの存在に気づいていない。よく見ると彼は充血していた。


「君、目大丈夫?」

「うわぁ!」


 急に声をかけられて驚く少年。イバラが名乗ると彼はキザンと名乗った。第三武隊に所属している隊士だった。


「君も臭うよな。俺、潔癖症なんだ」

「カラスノっていう人がいうにはあの人だって」


 イバラは七人衆のライを指さした。彼は自分が指されていることを知らずに酒に夢中になっている。


「止めてくれよ……でも、絶対お酒じゃない」

「そうなんだよ。でもさっきの人でもなさそうだし、考えられるとしたら酒を飲んでいるあの人なんだよね」

「絶対に特定してやる!」


 キザンは急にやる気になり、動き出した。


 七人衆の席では再び異臭の話題になっていた。


「ライ……いい加減にしてくれないか」


 大柄の男がまた注意をする。


「だから、俺じゃないっすって」


 ライは大きく息を吐いて、大きく息を吸った。会場に漂う異臭を消臭する。


「ゲロゲーロ。もしかして、あの中に異臭を放つホープがいるとか?」

「そんなホープ、何の役に立つ」

「さて。おれっちにはわからないけど」


 七人衆の面々が異臭に気を取られている中、リズムを刻んでいる男がこの場に来て初めて口を開く。


「多いな」


 大柄の男は「なにが?」と彼に聞く。


「足音……一人、多い」


 大柄の男は今、残っている人数を数える。


「今、十四人が残っているが?」

「おかしいな……十五人いるはず」


 他の七人衆も会場にいる人数を数えるが、十四人だった。

 第一試験の終了時間が迫っていた。そして、その時が来る。


「第一試験、終了!」


 エニシダの合図で第一試験が終了する。イバラは第二試験に突破する。

 残った志願者たちの記録を取る七人衆の一人。第二試験に突破したのは十五名。

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