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ホープ。それは特殊能力者のことを意味する。
各地に咲いている特殊な花はホープの花と呼ばれ、正式名称はわかっていない。その花を食べると特殊能力を得ることができる。
学者スターライトの書物によると、それは人間のみならずスターマンにも該当するとある。
枯草化していったスターマンだったが、一体だけ残っていた。爆葉樹の爆破から逃れたスターマン。
「見たんです。あの場所にホープの花が咲いていた」
「ホープの花が咲いていた……? 私は見ていないぞ」
「学者スターライトによると、ホープの能力者が死んだ場合、どこかにその能力を宿した球根が誕生する。人間にはわからないけど、スターマンはその球根の在り処がわかるとも」
今、防壁の中にいるスターマンはおそらくホープの花を食べた。見た目も変わっている。頭は爆弾の様に丸く、体は茶色。猫背のような態勢でじっと立ち止まっている。
最悪の状況が起きた。ホープの力を得たスターマンは非能力者の人間の力では到底及ばない。防壁内にいるスターマンの存在に気づいた二武隊士が倒しにいく。
「お前たち! 逃げろ」
二武隊士は上空にいたローズに顔を向けた。その瞬間、スターマンが放った爆弾によって死亡する。
地上に降りたイバラとローズ。
「学者スターライトが残したスターマン全集によると、あのスターマンは『ボムテッポウ』です」
「ボムテッポウ?」
「はい。残念ながら、ローズさんでは倒せません」
ボムテッポウの体に触れると爆弾が発射される。拳で戦うローズとの相性が悪い。
「おそらく僕の炎でも難しいかと。爆弾が炎に反応して大きな被害が生む可能性があります」
「なら、どうすれば奴を倒せる?」
「爆弾処理のホープを持つ能力者なら倒せます。けど、僕はそのホープを持った人を知りません」
ボムテッポウは体から爆弾を生み出し、イバラとローズにめがけて投げてくる。アネモネが爆弾を風で吹き飛ばした。その爆弾はボムテッポウに直撃するが無傷だった。
「奴を倒すには奴の体内にある爆弾を処理するホープの所持者が必要ってことか」
「そういうことです」
ボムテッポウは体から直接爆弾を乱射していく。イバラの炎で爆弾の攻撃を回避する。
「ボムテッポウの体にはおそらく無数の爆弾が仕込まれています。体の中で生成されているんだと思います。仮定ですが」
上空にいたアネモネがイバラの隣にやってくる。
「なら、イバラの炎と俺の風で上空で倒すのはどうだ?」
「やってみますか?」
アネモネは胸の前で両手を合わせ、風を起こしてボムテッポウを上空に浮かせる。上空に浮かんだボムテッポウに炎を放出するイバラ。同時に上空で大きな爆破が起きるが、ボムテッポウは地上に戻ってくる。無傷だ。
アネモネは再び上空へと浮かぶ。
「炎の少年、どうする? 私の拳で奴など一発で倒せるのだがな」
「だから、触れることができないんですよ」
「わかっている」
イバラは手を顎に当てて考える。たどり着いた答えは捕獲だった。
「捕獲? 触れることができないんだろ?」
「大丈夫です。触れずに捕獲できる方法があります」
「あいつのことか」
そこに遅れて到着したシクラメン。
「作戦は無事成功したみたいだね」
「これのどこか成功だ」
ローズはボムテッポウを指さした。シクラメンは相変わらずの能天気さを見せる。
「僕の炎でも難しそうなので、シクラメンさんの能力で捕まえてください」
「仕方ないね」
シクラメンは地面に両手をつけた。目を瞑って集中する。ボムテッポウが襲いかかってくる。ローズとアネモネが構える中、ボムテッポウの動きが止まる。突如現れた鎖によって縛られている。
「危なかったね」
額の汗を手で拭うシクラメン。
捕獲したボムテッポウは地下牢で管理することになった。
「このまま四武の隊士になったら、どうですか?」
「俺は誰にも従わない。誰も……」
「従えない! ですよね」
任務を終えたアネモネは村へと帰る。その道中、一人の七人衆と出会う。一つ結びの髪に腰に刀を差している。
「お前たちに協力したわけではない。自分の意思でやったことだ」
「どちらにしろ、これで救われた命があることに変わりはない」
彼は話を続ける。
「現在、七人衆の席が一つ空いている。彼女の為にもお前が座るべきではないか?」
「俺は誰にも従わない。誰も従えない」
風のホープでその場から一瞬にして去っていたアネモネ。