教師は不遇、にアンダーライン引いといて
目の前には、ぼんやりと紫に光る沢山の石。
それと、白いローブ?を着た魔法使いみたいな人達。そして、その奥に、甲冑に身を包んだ騎士達と、それよりさらに奥にいる王様らしき人と貴族っぽい人たち。
どうやら、異世界にたどり着いたらしい。
っていうか、やはり二朗の言った通り、かなり召喚に時間がかかっていたようで、みんな下を向き諦め、しょんぼりムードだったようだ。はっと顔をあげ、こちらを見つめている。
「こ、ここは……?」
と、異世界召喚された人っぽく言ってみる。
すると、大歓声。
みんなで抱き合って喜んでいる。目の前にいた金髪ゆるふわウェーブの小柄な小動物を思わせる女の子は「よがっだ~もう出てごばいのがとおぼった~」とかなんとか言いながら大号泣している。正直泣きすぎててほとんど分からない。が、こちらこそよかった。歓迎はされているようだ。
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「はあ? 教師ぃ?」
歓迎されてなかったようだ。
とてつもなく、不機嫌そうな声を発したのは、王様の傍に控えている王子だった。
現在、場所は変わって玉座の間である。さっき召喚された場所が召喚堂という召喚専用の建物だそうで、そこから玉座の間へと連れてこられ、王様との面談タイムと相成った。
王様は少し痩せこけていて気苦労してそうなタイプだった。グレーがかった髪と眼、皺は深く刻まれ、鼻の下の髭が少しばかりの威厳を覗かせている。
勿論、王様との一対一の話し合いとかではなく、護衛の騎士たちが王様を囲み守っている。中でも王様の左前に立っている騎士は別格の雰囲気を放っていた。世紀末覇者にもなれそうな筋肉に、燃え盛るような赤い髪の毛、見えるとこは傷跡だらけ、金色の目を爛々と輝かせたTHE・ファンタジーの登場人物だ。多分あれだ。近衛隊長とかだ。その逆側に目つきの悪い、近衛隊長(仮)よりも背が高いがやせ型、そして、眼鏡のようなものをかけている宰相らしき人物。さっきからしきりに口元をさすり、ちょっと黒に濁った青い目でこっちを値踏みするように見ている。
そして、その隣に先ほど不機嫌な声を発した王子。王様と同じグレー系の髪と眼。中々悪趣味な真っ赤な服に金の刺繡をこれでもかとあしらい、「それ邪魔じゃない?」というくらい飾りのついたレイピアを腰に差している。
そして、近衛隊長(仮)の側にも誰かいるようなのだが近衛隊長(仮)の陰でよくわからない。少し長めの黒髪の、騎士だろうか剣を腰に差している。と、更にその奥に誰かいるようなのだが、そちらは完全に見えない。その黒髪騎士らしき人が時折振り返るので誰かいるのであろうという予測だ。王族の誰かだろうか。
そして、俺の両サイドには貴族らしき人物。大臣とかかな。それぞれ、翼を広げた鷹とか、輪になった蛇とか剣と盾とか家紋のようなものを服につけているので、やはり家柄のいい人たちなんだろう。その中に女性もいる。一人だけど。たった一人その集団よりも奥からこちらを見つめている。彼女も貴族なのだろうか? そんな彼らよりも玉座の間の入り口に近いところに先ほどのローブを着た人たち、さっきの言葉にならない金髪ウェーブもそこにいる。目を冷やしてるみたいだ。めっちゃ泣いてたもんなあ。
さて、話を戻そう。
最初はみんなニコニコ顔だった。
けれど、お城の皆様の顔色が目に見えて悪くなっていく。あと、態度も。
その変化の最初のきっかけがこれ。元の世界ではどのようなことをしていたのか聞かれ「教師です」と答えたら、これだ。
(この世界では教師なんてやるやつはほとんどいないからな)
教師やるやつがいないってなんでだよ?
(この世界の学校ってのはな、通称『冒険者学校』って言われてて、まあ、まだまだ魔物との戦いも多いからメインで育成してるのは冒険者なんだよ。で、教師ってのは他の職業に比べて、ステータス補正が低い。平たく言うと、弱いんだ。だから、冒険者を育てるには不十分つってステータスの高い【戦士】とか【魔法使い】の元冒険者とかを教える側として雇っているわけだ)
なるほど、不遇職ってやつか。
「おい! 聞いておるのか!」
と、気づけば目の前に、王子がいる。
顔近っ!
驚いてちょっと下がると。宰相が王子を抑えようとするが払いのけられたようだ。少し赤くなった手を押さえている。
王子と言っても、歳は結構いってて40超えてるっぽい。王様が60~70歳くらいだろうから、まあ、当たり前っちゃあ当たり前なんだけど。ちなみに、この王子、名前はオロカナ=オーゾクと言うらしい。オロカナ王子が続ける。
「多くの資財を使って行った異世界召喚で現れたのが教師! どんなに鍛えても固有スキルがほとんど手に入らない! 補正ステータスも低い! ああ、なんということだ!」
芝居がかった調子で喚き散らすオロカナ王子。あ、分かった。この人めんどくさい人だな。
みんなそっぽ向いている。ならば、同じく。ニコニコしてスルー。
「どうなされるのです! 父上!」
オロカナ王子が王様に詰め寄る。ちなみに、王様の名前はビョドナ=オーゾク。とても温和な感じで誰に対しても分け隔てなく接してくれそうな雰囲気がある。
ビョドナ王は、オロカナ王子劇場に溜息をつきながら
「まあ、待て。教師というだけで決めつけるな。今、鑑定師を呼び出して居る。ステータスを鑑定魔法で測ってからでもいいだろう」
ステータスというのは元居た世界のゲーム、特にRPGとかでお馴染みの能力値のことでほぼあってるらしい。自分がどのくらい力があるとか賢いとか数字で表すことができるらしい。ゲームでは疑問に思わなかったが能力を数値化ってどういうシステムだよ。
そうして、現れた鑑定師に鑑定魔法をかけてもらった。
その結果がこちら。
名前:カヌチ=エイト
種族:異世界者
職業:教師
レベル:1
生命力:12(+2)
筋力:9(+2)
敏捷性:15(+1)
器用さ:13(+3)
知力:16(+5)
運:20(+3)
固有スキル:鑑定、支援強化、教育
※ジョブ【教師】による+補正あり
「な、な、なんだこの数字はぁあああああ!」
オロカナ王子が声をあげた。え? どういうこと?
「一般人よりも低いではないか! 一般人でも倍はステータスがあるぞ!」
嘘……俺のステータス、低すぎ……?
お読みくださりありがとうございます。
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この作品の為に、長編や短編で修業兼世界観作りしているので更新間隔は序章終了後は、かなり空くと思われますが、それでもよければブックマークよろしくお願いします。
改めて、お読みくださりありがとうございます。