異世界じゃない先生・前編
時間は『俺の感覚で』8年前に遡る。
俺は、学校を追放された。
俺は先生である。名前は、ある。かぬちえいと、という立派な名がある。
漢字で書くと、『金 八』。
金が「かぬち」八で「えいと」だ。
…。
皆まで言わないでほしい。
父親は、あの熱血教師の熱狂的なファンだった。
うちの名字が金なのをいいことに、子供の名前を八にするほどのファンだった。
まあ、八と書いて「はち」ではなく「えいと」にしたところが微妙に感謝といら立ちが混ざり合うのだが。
とはいえ、子は親に似る。
熱血教師ものは俺も大好きで、結局教師を志すようになり、結局教師となった。
金〇先生の出来上がりである。
ドラマのような熱血教師にと張り切っていたのだが、現実は甘くない。出る杭は打たれる。
ドラマのような熱血教師なんて、学校側からしてみたらめんどくさい存在この上なしだ。
問題教師として学校から追放された。
いじめを見つけ、問題解決にはりきったら、隠蔽工作に巻き込まれ、追放された。
教育委員会で再教育を受けるらしい。
ウケる。てめえらのほうが再教育されるべきだろなんて息巻いてみたけれども、やはり漫画とか小説のような世界ではない。権力強し。
俺は、この学校を後にする。片付けもすんだ。
自分でいうのもなんだが、そこそこ人気の先生ではあった。
が、いじめっ子に目をつけられ、いじめっ大人に目を付けられていたため、表立って別れを惜しむ生徒はほとんどいなかった。
みんなこっそりとお別れの手紙をくれた。それで十分だ。そんな中一枚の手紙が俺を呼んでいた。それは、いじめられていた生徒、俺が助けた生徒の手紙だ。
『放課後、屋上に来てほしい。』
こういう状況でなければ、ドッキドキの手紙ではあるが。こういう状況だ。そんなわけはない。けれど、あの子がこれから頑張れるよう、立ち向かっていけるよう、俺はこの学校の先生としての最期の務めを果たさなければならない。
屋上につながるドアをあける。
ちなみに、この屋上は俺があの子に教えた避難場所だ。よくここで他愛もない話をしてた。
でも、俺にとっては楽しい思い出だ。
そんな楽しい思い出の詰まった場所で、あの子は、飛び降りようとしてた。
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