目線を合わせて話す、にアンダーライン引いといて
その後、詳しい話は明日にということで俺は豪華な来客用の部屋に案内された。
これからどうなるかは今の俺には分からない。
実際にやってみるしかないわけで、考えても仕方がない。考えすぎても仕方がない。元の世界よりも固めのベッドに寝転ぶことにする。
とりあえず、この一般人半分以下のステータスと、不遇職教師、あとは、元の世界の知識、これらでなんとかうまくやっていくしかない。二朗には魔王を倒せとか言われてないし。…俺は教師だ。人を育てるだけだ。……あの子に、出来なかったことを、ちゃんとこっちでは、できるように……。
こんこん。
と、微睡みかけたところで不意にノックの音が聞こえる。
「はい?」
「カヌチ殿。謁見後に申し訳ございません。私、護衛騎士のヒメナと申します。どうしても貴方にお会いしたいという方がいらっしゃいまして、少しばかりお時間を頂けないでしょうか」
どういうことだ?この世界には当然知り合いはいない。なのに、俺と会いたい?
考えられるのは、先ほどの謁見で味方になりたい、もしくは、牽制したい存在。あるいは……いろんな面を考慮したうえで、結局暗殺に落ち着いたか……。
暗殺であったとすれば、それはそれで好都合だ。ここから抜け出せばいい。それくらいなら二朗から貰った特殊能力できっとなんとかなるだろう。
情報はいくらでも欲しい。
「かしこまりました。今、扉をあけましょう」
自分の特能をいつでも解放できるよう身構えたうえで、扉を開ける。
そこには赤髪の近衛隊長(仮)の後ろにいた黒髪の騎士が。あの時は分からなかったが女性だったらしい。すらりとした長身で切れ長の目、その上でどこか色香を感じさせる艶がある。ただ、彼女自身もやはりまだ俺を測りかねているのか警戒の様子がみてとれる。
「ええと、ヒメナ様でしたよね? 私に、お会いしたい方というのは……」
と、そこまで言うとヒメナは視線を自分の腰付近に落とす。
剣を差している反対側のそこには小さな震える手があった。
ヒメナさんの服をぎゅっと掴んで離すまい。そう見えるくらいしっかりとつかまれている。
で、手は見えるのだが、一向にその手の主が見えない。ヒメナさんの後ろに隠れているようだ。ヒメナさんも困っているようだ。
「え、ええと。ヒメナ様の後ろにいる方が私にお会いしたい方、ですかね」
「え、ええ。けれど、少しばかり人見知りで……」
ヒメナさんも自分の手をどうすべきか迷っている。つまりは、それくらい立場の高い方で、うかつに掴んで前に出したりできないということか。
「わかりました。そのままで構いません。伺いましょう」
俺はひざをまげ、恐らく顔があるであろう高さに自分の顔を合わせ尋ねた。
「お越しいただきありがとうございます。異世界召喚者のカヌチ=エイトと申します。以後お見知りおきを。お名前は言いにくかったら大丈夫ですので、お話したいことだけでもお聞かせ頂けますか。」
出来るだけ柔らかな声色で語り掛けると、震える手はゆっくりと落ち着き、その奥で息をしっかりと吸い込み、鼻息荒くした音が聞こえる。
ぐっと手がヒメナさんの身体を押したようで、ヒメナさんが少し驚きながら体を右に動かす。そこには……ブロンドの美しい髪、整った顔立ち、ビョドナ王を思わせる優し気な口元、俺の予想通り、まっすぐ立った俺の胸元に届かないかくらいの小さめの身長だと思うのだが美しい立ち姿でその小ささを感じさせない、正に絵にかいたような姫がそこにいた。うっすら輝いているようにさえ見える。え? すごくない? 光ってない?
「……第三王女のヒトミスィリと申します。」
なるほど、さては彼女、人見知りなのだな。横にいたヒメナさんが自己紹介したことに切れ長の目を見開いて驚いているくらいだもの。
「第三王女にご足労頂くとは……本来なら私がお伺いすべきでしょうに、申し訳ございません。それで、ここまで来られたご用向きは」
第三王女が俺を呼ぶでもなくここに来たということは、それだけ伝えたいことなのだろう。勘でしかないが、彼女は俺にとって害をなすような存在ではないようだ。
(なんで分かるんだよ)
だから、勘だって。教師の勘。
第三王女は、口を開きかけでは閉じを繰り返している。
俺はその行為を繰り返すたびに頷いて見せる。
彼女が勇気を持って話しかけていることに賞賛するために。
そして、漸く心が決まったらしく、声が絞り出される。
「あの」
「はい」
「私も……叱ってください!」
「はい?」
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この作品の為に、長編や短編で修業兼世界観作りしているので更新間隔は序章終了後は、かなり空くと思われますが、それでもよければブックマークよろしくお願いします。
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