教育は大事、にアンダーライン引いといて
王子敗北!
まあまあ、王子そう落ち込むことはありませんぜ。
こちとら、ファンタジーのモンスターと戦ったことはなくてもモンスターなペアレンツともバチバチにやりあってるし、あんたらのどろどろの宮廷闘争はやったことなくても校内の馬鹿な上司共との謀略戦、口達者な生徒たちを言い負かす話術ももちあわせとるんじゃい。
それに何より、今の俺には失うものがない。
家族がいない、というのもあるが、一度俺は教師として死んでいる。恐れるものがないのだ。
踏みとどまって後悔するくらいなら、突き破ってぶっ壊して死んでやる。
とはいえ、ただ言い負かしてすっきりするのはそれこそ愚か者、モンスター共のやることだ。
「畏まりました。オロカナ王子も私のようなステータスの低い、教師という不遇職の者が現れたことで気が動転してしまっていたが故の発言かと思います。私も異世界に急に呼び出され言葉が強くなってしまいました。お互い様ということでこの場を納めることができればと考えておりますが、ビョドナ王それはいささか安易な考えでしょうか?」
ここまで一気にまくし立てたこともあり、ぽかんとしていた王に急に向き直ると、咳ばらいをし、ビョドナ王は声を出す。
「いや……カヌチ殿の寛大な心に感謝する。そして、改めて、こちらの都合により、勝手に家族や友人などの居る世界から引き離してしまったことに謝罪申し上げる。我々も、少し感覚が麻痺してしまっていたようだ」
頭を下げたわけではない。しかし、しっかりと俺の目を見て、己の謝意を伝えようとしてくる。これで十分。この人は信用に値する。
「異世界召喚者と言えど人間であることは心にとどめておいていただければ幸いです。仮に、ビョドナ王が急に異世界に連れ去られてしまえば家臣や王族の皆さまは怒りに震え、悲しみに暮れ、絶望の日々を過ごし国は滅ぶことでしょう。逆に、オロカナ王子が異世界に連れ去られれば、ビョドナ王も同じような心情かと思われます」
「そうだな……愚息といえど、私にとっては大事な息子だ。まさに身体の一部を引き裂かれるような思いに駆られるであろう」
「ち、父上」
まあ、流石にやりすぎたしな。ちょっとはオロカナのポイントも稼いでおこう。
周りの騒然としていた空気も王への思いを表すことで、俺に同意、共感に繋がっているようだ。
「ビョドナ王。私は教師です。私がこのような厳しい発言、しかりつけるようなことを申したのは、教師故にだとお考えいただければ幸いです。異世界召喚は、先ほど申し上げたように私からすればすべてを奪われてこの地に攫われたようなものです。その自覚を持っていただきたい。ただ、皆様からすれば、この国を思うが故に多くの資財をかけて行った一種の賭けであり、願いのようなものかと思います。その思いの強さに応えなければという使命感も私の中には生まれつつあります。だからこそ、この国の為に、己の命を懸けて、教師として、指導させていただいたのです」
ビョドナ王は目を見開き、そして、閉じ、かみしめるように頷いた。オロカナ王子はまだ俺を信用しているわけではないが、それでも言っていることは理解できたようだ。
周りからも息を吞む声もちらほらと聞こえた。多少は伝わっただろう。俺の思う教師が。そして、この中から味方も出来そうだと安心した。一番の懸念は教育に理解を得られないことだ。
そう。教師とは本当に重要な仕事なのだ。
どんな偉い人物も、一人では成長しない。
教え導く存在が必要なのだ。それは、先人たちであり、親や家族であり、教師だ。
そいつが腐ってしまえば、教えられた人間が腐るのなんて当たり前だ。
俺からすれば元居た世界の学校は腐りきっていた。
教育に対する意識の低さ、もみ消しに奔走する学校、全てを学校に丸投げする親たち、どうすればいいか分からず他人を貶めることで自己を満たす生徒、他人から貶められることで傷つき続ける生徒……。
君たちは腐ったミカンじゃないと言われても、ミカンの木そのものや入れられた段ボール箱が腐っていて、どうして自分が腐ってないと思えるだろうか。
教師は、人を作る。人は集まり社会を作る。国を作る。
だからこそ、俺はこの国に呼ばれたのかもしれない。
俺は教師をやってやる。国の都合も、偉い奴らの思惑も、世界のルールも関係ない。
人の為に、子供たちの為に、俺なりの教育でこの世界をぶっ壊す。
その決意を強く示した姿に、宰相は目の前の男がこの国にとって味方となるのか敵となるのかを見定めねばとじっと見つめ、赤髪の騎士はニヤリと笑い腕を組み、貴族の中に混じった紅一点の女は口元を扇で隠し、黒髪の騎士の後ろにいた小さな存在は息を呑んだ。
これは当時のことをある貴族から聞いた時の話で、俺はちっとも気づいていなかった。
『この国は変わっていく。それが良いのか悪いのかは分からないが、必ず。そう思ったんだ! なんせこの国の重要人物たちが揃いも揃って大きく心を揺さぶられた様子だったのだからね!』
そう『彼』は、後に俺と二人きりの、ある大事件の夜に言ったのだった。
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この作品の為に、長編や短編で修業兼世界観作りしているので更新間隔は序章終了後は、かなり空くと思われますが、それでもよければブックマークよろしくお願いします。
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