私と彼女のプロローグ
私、倉本あん子は乙女ゲームをこよなく愛するオタクである。
友達は決して多くはなく、クラスの中では断トツに地味な方で息抜きに
よく屋上に続く階段の踊り場の一角で一人、乙女ゲームを日課にしていた
学校はゲーム機、持ち込み禁止だし
私みたいな不細工で地味な子が乙女ゲームをクラスで堂々とする勇気もない
もし、見つかりでもしたら いじめに合うか村八分に合うのが関の山
もちろんゲーム機も没収
それだけは避けたい
学校というのはカースト命で弱肉強食な世界なのだ
私の様なカースト底辺には息がつまる
だから 大好きな乙女ゲームを一人、気兼ねなくできる
この場所は私の憩いの場なのだ
「はぁ、、、今日もアル王子かっこいい、、、」
今、絶賛熱中している乙女ゲーム
【瑠璃色の穹の下で君を想う】
このゲーム、乙女ゲームと侮ることなかれ!
魅力的なキャラクターは当たり前として、中世ヨーロッパ風な背景を舞台に
きな臭い王権争い、敵国との紛争、ルート選択によっては重要人物の死をも
厭わない作り込まれたシビアなシナリオが受けに受けハッピーエンドだが
弱鬱ゲーとして新ジャンルのフラグを立てまっくているのだ
戦争系乙女ゲーム最高!
軍服最高!!
そんな私は遂に最難関といわれているメイン攻略対象のひとり
【アルクエイド・アーサー・ルート王子】
瑠璃色の~(以下略)のメインキャラで
舞台になるルート王国の第一王子である
そして伝説級に攻略が難しくある意味ラスボスとされている
その王子とのウェディングエンドに到達したのである!!
長かった、、、本当に長かった、、、
このスチルを回収する為に私はどれだけ夜更かしを重ねたか、、、
ヒロインdeathバッドエンドを何回繰り返したか、、、
目の下のクマが酷くなって不細工に拍車がかかってしまったが良いのだ
だって画面越しとはいえ、この世に存在しないとはいえ
彼は今ヒロイン越しに私を見てくれて愛を囁いてくれているのが堪らない
不毛かもしれない。
でも良いのだ!
これが私のときめきなのだ!
女性ホルモン活性化!
ビバ!!乙女ゲーム!!
二次元イケメンの微笑みの爆弾!
「はぁ~ アル様かっこいい、、、
たまりませんなぁぁぁぁぁぁあああぁぁ!!!」
発狂。
「うるせええええぇぇぇぇぇえええええっぇぇえ!!!!!」
ビックゥウ!
え?嘘、、、誰かいたの、、、?
「昼寝の邪魔しやがって、、、誰だ、てめぇ ふざけてんのかぁ?」
げえぇぇえええ!!! 最悪だ、、、
逆光からでも分かる 明るい髪
片手には金属バット(何で持ってるの?)
学校1の不良 黒崎さんだぁああああああぁぁ!!
女の子なのに喧嘩が鬼強くて教師ですら相手にならないほどの暴れん坊
学校にはほとんど来てなかったのによりによって何故ーーーー?
何故ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!?
「お前かぁ、、、さっきから訳分からん呪文みたいなの叫んでたのは」
「じゅッ呪文!?」
「あぁ? スチルだとか、フラグだとか エンドとか尊いとかよー
スチルってのはアレか?発泡スチロールの事か?あぁ?」
何でキレてんの?
てか、ひえええぇえぇぇぇぇえ
はっ恥ずかしいーーーーーーバッチリ聞かれてるううううーーー
「すっすみません、、、すぐにいなくなるので、どうか命だけは、、、」
「はぁ?」
一刻も早く逃げ出したい
恥ずかしさと恐怖で足が震える
急いで階段を降りようとした時、私は足を滑らした。
ーーやば、、、落ちてる これ絶対階段から落ちてるよ
あぁ、、、折角スチル回収してたのに
私、セーブしたっけ?
「おい!!」
黒崎さん、、、
黒崎さんが私を助けようと手を伸ばしてくれてる、、、
黒崎さんは私を抱え込むようにして一緒に落ちていく、、、
そして私達はすごい濁音と共に激しい痛みに襲われて視界が暗転した
最後まで握りしめていたゲーム機に執念を感じながら
あぁ、、、生まれ変われるならヒロインになってアル様に会いたいなぁ、、、
そう願って私は、、、意識を手放した。
勿論、握りしめていたゲーム機から
『おっけーーー!!!』
という場違いな、ひょうきんな声には気付かずに、、、