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続・夢の中だけ勇者さま?  作者: 菅原よしひろう
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僕は夢を見た(62) 神様からの贈り物

エリーに借りた屋敷の寝室で目が覚める僕。

枕元には金屋子様から頂いた裸の刀身が。

寝ぼけてたせいか、直接刃先を触りかけてしまいドキッとした。

危ない危ない危うく指が失くなるところだった。

早くこの刀を僕に相応しい形に仕上げなければ。

どんな色の鞘にしようか等と考えていると、階下からドアノッカーを打ち鳴らす音がした。

誰が訪ねてきたのだろうとドアを開けてみると、そこに立っていたのはエルマだった。


エルマ:「おはよう。」

よしひろう:「おはよう。」

エルマ:「朝食まだでしょ?持ってきてあげたわ。」

よしひろう:「ありがとう!」


とエルマを屋敷内へ通す。

屋敷を見渡してエルマが呟いた。


エルマ:「懐かしいわ。」

よしひろう:「よく来ていたのか?」

エルマ:「ええ。エリーが居た時はほぼ毎日よ。」


応接間にエルマを通し、僕もそこで朝食を頂く。


エルマ:「ほら、ここの傷」

よしひろう:「ん?」


壁に付いた傷を僕に指差しながら


エルマ:「私が初めて習った魔法をエリーに見せた時に付けた傷なの(苦笑)」

エルマ:「その後、凄く怒られたわ。」

エルマ:「本当に懐かしい。」

よしひろう:「なんでスーパーノヴァって異名が付いたんだ?」

エルマ:「ああ、それはね」


と僕に説明を始めるエルマ。

学校の授業で人形にファイヤーボールを放つ実学習をしていた時のこと。

場所は講堂。

先生の「思いっきりやれ」との言葉に触発され、全力でファイヤーボールを放ったら、人形が消し飛ぶ程の火柱が上がり、先生が慌ててプロテクションの魔法を張ったが時既に遅く床と天井に大穴を開けてしまった事件のせいだと言う。

その事件以降、スーパーノヴァやノヴァというあだ名を付けられたのだそうだ。


エルマ:「微調整が苦手なのよね。」


レギオナに勝てたのもエルマの魔法の威力にレギオナの集中力が奪われていたからだから、そういう面からみるととても凄い能力だとは思う。

背後から放たれる魔法の威力という面では、前衛としては怖くて堪らないが。


エルマ:「今日はこれからどうするの?」

よしひろう:「武器屋に行く用事があるんだよ。」

エルマ:「そう…もし、エリーの所に行く事があったら私も連れていってね(笑)」


そう言うとエルマは自宅に戻って行った。

僕も着替えて武器屋に向かう。

神様から貰った裸の刀身を大事に抱えて。

武器屋の主に裸の刀身を見せて単刀直入に聞いた。


よしひろう:「これを刀に仕上げたい。」

武器屋の主:「オーダーメイドにするか?出来合い品を付けるかで納期と値段がだいぶ違ってくるぞ?」

よしひろう:「出来合い品だとどんなのがある?」


武器屋の主が奥から色々持ってきた。

真っ赤な柄、金色の鍔、真っ白な鞘等々。


よしひろう:「鞘は黒がいい。肩から提げられるよう紐が付けれたらなお良い。」

よしひろう:「鍔も黒がいいかな。」

よしひろう:「柄は白地に黒の菱形の柄がいい。」


そうこうしているうちに、店の在庫でなんとか仕上がった。


武器屋の主:「刀にはそれぞれふさわしい鞘や柄があるもんだが…こいつはえらく安っぽく見えるぞ(苦笑)」

武器屋の主:「鞘と柄はやっぱりオーダーメイドした方がいいと思うがな?」

よしひろう:「オーダーすると納期はどのくらい?」

武器屋の主:「んー。俺の見立てだと一ヶ月ってとこだ。」

よしひろう:「じゃ、オーダーメイドするよ。でも仕上がるまではこれでいく。」


武器屋の主が分かったと言い、一旦刀を分解し、刀身の長さを正確に図る。

そして、安物のパーツを再び組付けた。

安物とはいえ全部で6万Gはしたのだが、これは仕方がない。

ちなみにオーダーメイドの金額はその10倍だ。

確かに神様からの頂き物に安物を使うというのは罰が当たりそうだもんな。

そうは言っても刀がなんとか使える状態になりご満悦な僕。

その場で刀を抜いてみる。


よしひろう:「綺麗だ…」


重さも長さも僕に合っててちょうど良い。

武器屋の主にオーダーメイドを依頼し店を後にする。

しばらく歩いていると、前方から「引ったくりだ!」という叫び声が上がった。

男が一人、鞄を持ってこちらに向かって走ってくる。

どうやら引ったくり犯のようだ。

無意識に刀を抜く僕。

すると抜いた刀の軌跡に沿って薄黄色のスクリーンのような物が浮かび上がった。

視線を動かすと丸い円形の照準が視線に合わすかのように動く。

前方から走ってくる引ったくり犯の足首に照準を合わせ、刀を突いた。

刀から黄色い矢のような形の光りが放たれ引ったくり犯の足首に当たる。

急な攻撃にその場で転倒する引ったくり犯。

そしてそいつは追いかけてきた役人や被害者に取り押さえられたのだった。

周囲の者から賛辞を受けるも一番驚いているのは僕自身であった。

放たれたのは間違いなくアローの魔法だ。


よしひろう:「こ、これが「僕の力を引き出す」という意味か…」


刀を鞘に収める手が震えていた。

この力を試したくて仕方がない。

急いで屋敷へと帰り庭先でレンガ5個を縦に並べて置いた。

10mほど離れた位置からアローを強く念じながら刀を抜く。

すると先程と同じく薄黄色のスクリーンが刀の軌跡に現れた。

レンガに照準を合わす。

驚いた事に、複数同時に照準を合わせる事ができる。

並べたレンガ全てに照準を合わせ、右肩辺りで突く態勢を取っていた刀を一気に前方向へ突き出す。

刀から5本の光の矢がレンガへと放たれた。

砕け散るレンガ。

これならファイヤーボールも放てるかもしれない。

刀を横一文字に構え、ファイアーボールを強く意識する。

すると刀が赤みを帯びてきた。

刀を縦にし、打ち込む場所を強く念じながら刀身を上から下へと払う。

念じた場所にファイアーボールが放たれた!

「ボゥ!」という音と共にファイアーボールが炸裂する。

エルマのファイアーボールみたいに火柱が上がらないのは実力の差なのだろう。

それでも、魔法が放てるという事実には歓喜せずにはいられない。


よしひろう:「金屋子様、ありがとう!!」


思わず空に向かって拝む僕。

もっと色々と試したい気持ちはあるのだが、ここは王都の街の中。

あまり派手なことをするとお叱りを受けかねないので今日の所はひとまずこの辺りで止めておくことにする。

しばらく感慨に耽っているとエルマが現れた。


エルマ:「夕食、うちに食べに来る?」

よしひろう:「行く!」

エルマ:「今日のヒロ、何だか嬉しそうね?」

よしひろう:「分かるか?(笑)」

エルマ:「何があったの?」

よしひろう:「少しだけ魔法が使えるようになった!」

エルマ:「ほんとに!?」

エルマ:「それじゃ、チーム組んでも私の存在意義無いみたいだわね。」


と少し寂しそうな顔をするエルマに「そんな事無いよ!威力低いし!それに俺、前衛じゃん!」と 言い訳を並べる僕。

僕に必要なのは魔法云々ではなくエルマという仲間なのだ。

エルマに伴われて夕食のテーブルの席に座る。


ライアン:「よしひろう殿、いらっしゃい。」

よしひろう:「こんばんは。お招き頂きありがとうございます。」

マーサ:「粗食ですが、どうぞお召し上がりください。」

タチアナ:「よしひろうさんって姉さんの彼氏?」

エルマ:「こらっ!」


タチアナの質問に顔を赤くして怒るエルマ。

顔を赤くするということは僕はエルマにとって、多少は気になる存在だということだろうか?


ライアン:「さあ、皆が揃ったところで頂くとするか。」


当主の言葉に従い皆が真正面を向く。


皆:「いただきます。」


グーテ家の夕食は本当に質素だった。

パンに豆のスープにサラダのみ。

だが、その質素さを感じさせない温かさ、温もりのある家庭の雰囲気を満喫できた。

僕にとって、この家庭の温もりは久方ぶりだった。


よしひろう:「ごちそうさま。」

ライアン:「エルマ、よしひろう殿にあの話はしたのか?」

エルマ:「あ、まだでした。今からお話します。」

エルマ:「ヒロにお願いがあるの。」

よしひろう:「お願い?」

エルマ:「一ヶ月後に卒業式があるの。」

エルマ:「慣例で一緒に地下迷宮に潜った仲間にも参加してもらう事になっているの。」

よしひろう:「へぇー。」

エルマ:「だからヒロにも出席して欲しいの。」

エルマ:「出席してくれる?」

よしひろう:「喜んで出席するさ。出席しない訳が無いじゃん!」


曇っていたエルマの顔が晴れたような笑顔に変わった。


エルマ:「ありがとう。」


丁度同じ頃…

とある屋敷の中。

蝋燭が一本だけ灯った部屋の中で二人の男が話し合っていた。

男A:「首尾はどうだ?」

男B:「はい。騒ぎに乗じて結界を破壊し、強奪する手筈を整えました。」

男A:「奴が裏切ることは無いか?」

男B:「裏切ったらどうなるのか、それを知らぬ奴でもございますまい。」

男A:「ならば我々も計画を進めて行こうぞ。」

男B:「ハッ!」

男A:「これで念願の不老不死を手に入れる事ができるわ!ワハハハ!!」


王都で何かが始まろうとしていた。

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