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続・夢の中だけ勇者さま?  作者: 菅原よしひろう
新たなる冒険の旅へ
34/34

僕は夢を見た(90) エルマの頼み事

三年近くのブランクでした。

長い長い休暇を経て、戻ってまいりました(苦笑)

お待たせして申し訳ありません。

僕は夢を見た。


家の戸をガンガンと叩く音がした。

ボーっとした意識のまま寝返りを打つ。


よしひろう:「なんだろう?」


目を開けると白い布地が目の前に在った。


レギオナ:「お目覚めですか?」

よしひろう:「うーん…」


大きなあくびをしながら背を伸ばす僕。


よしひろう:「おはよう。」


レギオナは穏やかな口調で返事をする。


レギオナ:「おはようございます。」


僕はあの五月蠅い戸を叩く音についてレギオナに問うてみた。


よしひろう:「あの音、何?」


レギオナはフフッと笑いながら答えた。


レギオナ:「エルマ様かと。」


また僕が何かやらかしたか?

いやいやいや。

そんな記憶はないぞ?

考えているうちに段々と目が覚め意識がハッキリとしてくる。

記憶の連結がなされ、昨日何が有ったのか、僕が何をしたのかを思い出して来た。


よしひろう:「あ!?あぁ!?まさかっ!?」


僕は完全に思い出した。

現世(うつしよ)の巫女の指示でP1と呼ばれる機動兵器を貰った(奪取?)こと。

それに乗って宇宙空間で戦闘したこと。

そしてエリーの屋敷の裏庭に機体を駐機させたこと。


よしひろう:「ヤバッ!!」


ガバッと起き上がる僕。

この戸を叩く音はきっとエルマだろう。

その理由は裏庭のアレ。

どうしよう。


よしひろう:「うーん…どんな言い訳をいたらいいんだ!?」


頭を抱える僕。

とりあえず玄関に出てエルマのあの五月蠅く戸を叩くのを止めさせよう。

着替えもせず半裸の状態で玄関へと急ぐ僕。

階段を降り、小走りで玄関へとたどり着く。


よしひろう:「へいへい、ちょっと待ってー」


ガチャリ。

鍵を解錠し玄関を開ける僕。

玄関を開けようと力を入れると、玄関を引いて開ける力が働く方が早かった。

ガバッと開けられた玄関の先に見えたのは…

フルプレートアーマーの兵士たちに護衛されたエリーの姿だった。


エリー:「キャッ」


小さな悲鳴を上げて小さな手で目を覆うエリー。

僕は咄嗟に丸見えの乳首と短パンの股間を隠した。


よしひろう:「ご、ごめ…」


謝っている途中でも気にせずに兵士達は屋敷の中にズカズカと入ってきた。

総勢十名くらいだろうか?

鎧の擦れるガチャガチャという音が屋敷中に響き渡る。

よく見ると…白地に青い色彩の飾り塗りが成された鎧…

王族直属のロイヤルガードだ。

状況を把握するために周りを見渡す僕。

その中にセナの姿も在った。

後はエリー付きのメイドさんと…エリーの後ろにいるのは…

顔を真っ赤にして怒っているエルマだった。

僕の顔から冷や汗がにじみ出る。


後ろから声がした。

先ほど家中に入っていったロイヤルガードだ。


ロイヤルガード:「クリア!安全です。」


顔を真っ赤にしたエリーが顔を覆う手の薬指と中指の間から僕を見ながら言った。


エリー:「ヒロ、服を…」

よしひろう:「はい!すぐに!!」


僕は慌てて寝室へと走る。

ロイヤルガードは屋敷に誰も入れないよう警備を固める。


ロイヤルガード:「ここは我々にお任せを。」


エリーはちょっと困った顔をしながらロイヤルガード達に礼をいった。


エリー:「ありがとう。それではお願いしますね。」


エリー付きのメイドがエリーを促す。


メイド:「姫様、そろそろ中へ。ここでは目立ちますので。」

エリー:「はい。さ、エルマもセナも中へ。」


恭しく一礼し、エリーに続いて屋敷へと入る二人。

その頃、僕は慌てて身支度をしていた。

レンジャーの服に似た黒い忍び装束と外套を纏い、刀をレギオナから受け取った。


レギオナ:「では、私は猫の姿で主殿の傍に在りましょう。」


そういうと猫に姿を変えるレギオナ。


よしひろう:「じゃ、エリーの所に行こうか。」

レギオナ:「はい。」


階段を下りる僕とレギオナ。

階段を下りたところにエリー付きのメイドが立っていて、広間に行くよう促された。

広間に着くとそこでは既にエリー、エルマ、セナの三人がお茶を飲みながら何やら話を

している。


よしひろう:「お待たせしました。」


見ると円型テーブルの一席が開いており、そこに座れとばかりにエリーが椅子を指さす

開いた席に座ると、待ってたとばかりにエリーが問いを投げかけてきた。


エリー:「ヒロ!!あれは何じゃ!!?」

よしひろう:「あれ?って?…」


振り返る僕。

エリーの指さす先にはカーテン越しに影となって見える巨大な人型が。

ぎくっとする僕。

何と答えたら分かってもらえるのだろうかと頭を抱えて考え込む。


よしひろう:「うーん、何て説明すればいいのやら…」


突然明後日の方角から声がする。


「ゴーレムよ!!」


え?と驚いて皆がそちらの方へ目をやると、半裸の女性が立っていた。

薄く透けて見える肌着。大き目の胸、透けて見えるバストトップ。

凍り付くエリーとエルマ、セナ。


エリー:「不潔です!!不純です!!(>_<)」


慌てて女性とエリーとの間に立ち、身構えるメイド。


メイド:「どちら様ですか!?」


半裸の女性は手を腰に当て、堂々と名乗った。


蔡:「蔡よ。蔡美玲!あのゴーレムの開発者!!」


エリー:「ヒロ?あれはヒロのお知り合いか?」

よしひろう;「はい…」


今度は僕が頭を抱える。

その瞬間、メイドが俊足で蔡の元へ行き首筋に刃を立てる。


メイド:「このような姿で皇女(ひめさま)と接見するなど無礼ではありませぬか?」

蔡:「ひぃ!」



急な命の危険に迫られ、顔が引きつり涙目になる蔡美玲。


蔡:「待って!ご、ごめんなさい!!」

エリー:「まあ、待て。」


静止するエリー。

そして殺気を帯びた目で問いかける。


エリー:「そなたはヒロの何なのじゃ?」


そして僕の方に向かって一言。


エリー:「で、二人して私の屋敷で何をしとったのかの?」


その場の空気が凍り付く。


閑話休題


エリー:「コホン。ふむ…何も無いのであれば構いません。許しましょう。」


そう言いながら僕の方をチラ見するエリー。

制服へと着替えた蔡がテーブルの席に着く。


エリー:「そうなんですか。あのゴーレムを作った方とは。」


エリーは僕と蔡はゴーレム絡みで知り合ったばかりと聞いて機嫌が直っていた。


蔡:「はい。」

エリー「で、ゴーレムの持ち主は今はヒロという事ですね?」

蔡:「はい。私はオブザーバーとしてご一緒させていただきました。」

エリー:「という事はヒロの部下という事じゃな?」

蔡:「はい。」


エリーは暫く悩んでいたが、納得した感じで蔡へと話しかけた。


エリー:「あのゴーレムは今でも動くのか?」

蔡:「はい、もちろんです。」


エリーはまた暫く悩むように考え事をしていた。


エリー:「この屋敷は私のでな…」

蔡:「はい…」

エリー:「ヒロはこの国を救った大英雄なのじゃ。」

蔡:「はぁ……」


セナとエルマが会話に入って来た。

窓の外を指差しながら僕と蔡を交互に見ながら話しかけてきた。


エルマ:「あれ!ほらあれよ!屋敷の外を見てみなさい。人だかりができているでしょ

う?」

エルマ:「何が原因か分かるよね?頭の悪いヒロでも!」


僕と蔡はカーテンの隙間から外を覗いてみた。

ビックリする程の人だかりができていて、うかつに外にも出れない状態となっていた。


よしひろう:「こ、これは…(ゴクリ)」

セナ:「隣国からのスパイも見ただろうし、このような事はすぐに尾ひれはひれがつい

て広がっていく」


突然カーテンの裏からレンジャーが現れた。


レンジャー:「あれがよしひろう殿個人の所有物だという事になれば、必ず奪おうとす

る輩が現れる。よしひろう殿を殺してでも、な。」

レンジャー:「そうなればよしひろう殿にとっても不本意だろうし、蔡殿も同じく狙わ

れる事となる。」


エリーはうんうんと頷いていた。そして提案してきた。


エリー:「あくまで表向きですが、あのゴーレムを我が国の所有物という事にしません

か?」

エリー:「そうすれば、このままここに置いておく事も可能ですし、誰も狙われなくな

ると思うのです。」


エリーは僕に飛び切りの笑顔で問うてきた。


エリー:「どう?私からの提案。」


僕は感謝を込めて答えた。


よしひろう:「はい。お願いします。蔡さんもそれでいいよね?」

蔡:「君がいいというのなら私には異存はないよ。」


僕はこの白い機動兵器プロメテウス1に居場所ができた事が嬉しかった。

一通りの話がついたので、そのままお茶会の流れになった。


ロイヤルガードのリーダーと思しき人物がエリーの前で片膝を着く。


ロイヤルガード:「エリー様、我々はこれにて失礼しようかと思いますが、よろしいで

しょうか?」

エリー:「はい。構いません。こ度は手間をかけてすいません。ありがとうございまし

た。」

ロイヤルガード:「勿体ないお言葉。それでは失礼いたします。」


ロイヤルガードが立ち上がり、指示を出す。


ロイヤルガード:「撤収!」


ガチャガチャと音を立てながら屋敷を出ていくロイヤルガード達。


エリー:「さて。」

エリー:「蔡さんはどのようなお仕事をされてきたのですか?」


どう説明すればよいのか少し悩んだ末に答えた。


蔡:「私の仕事はゴーレムの開発、設計から製造までを担当するエンジニアです。姫様

。」


興味深々なエリ-はさらに問いかける。


エリー:「えんじにあ?とは何じゃ?」

よしひろう:「技術者って意味ですよ。この世界では匠って言った方が解りやすいんじ

ゃないかな?」


蔡が慌ててよしひろうを制止した。


蔡:「君、お相手は姫様でしょ!無礼な言動は慎みなさい!」


その言葉に顔が引きつる僕。


よしひろう:「あははは…は…」


エリーはクスクスと笑っていた。


エリー:「で、ゴーレム、あれはどうやって動かすのじゃ?」

蔡:「はい。動かすためのスイッチやボタン操縦桿を使いますが、現状では私かヒロに

しか動かせません。」


エリーは少し残念そうに俯いた。


エリー:「私にも動かせたらヒロの手助けができるのにな…残念じゃ。」

エリー:「エルマはどう思う?」


エルマは窓の外のプロメテウスを見ながら答えた。


エルマ:「逆にヒロにしか使えなくて安心しましたわ。盗賊なんかに奪われたら何され

るか分かったものじゃないですわ。」

セナ:「私も同感です。」

エリー:「それもそうじゃな。で、このままここに置いておくのかの?城まで運ぶか?

エリー:「何にせよこのまま野ざらしとはいくまいよ。」

蔡:「お許しをいただけるのなら、格納庫を作っていただけませんか?」

エリー:「ほお…格納庫とな?」


蔡は手書きで絵を描いて見せながら格納庫の説明をした。


エリー:「うむ。母様にお許しを乞うてみるのじゃ。」

蔡:「お願いいたします。」


深々と一礼する蔡。


エリーはエルマの方を見て言った。


エリー:「そうそう、エルマもヒロに頼み事が有ったのでは?」


エルマは「あ!」という顔をしてよしひろうに話を切り出した。


エルマ:「ヒロにお願いがあるの。」

よしひろう:「うん。何?」

エルマ:「もう一度私と一緒にダンジョンに下りてくれないかしら?」

よしひろう:「ん~…はぁ!!?」

エルマ:「エアリスでの戦いで私の魔封石が砕けちゃって。新しいのが欲しいの。」


僕は考え込んだ。

前回手に入れたエルマの魔封石はレギオナを倒して手に入れた物。

もう一度レギオナクラスの化け物とやりあって勝てる気がしなかった。


よしひろう:「マジか…誰かから貰えないの?売ってもらうとか出来んの?」

エルマ:「無理よ。買うったってウチにはお金無いし。買う?誰から?」


即座に否決される僕の案。


よしひろう:「だよねぇ…無理な話だとは思っていたけど…」


今までに起きた色々な事が頭の中を駆け巡る。地下迷宮攻略のための策を練る僕。


よしひろう:「で、ラークシャサの地下迷宮にはいつ行くつもりなんだ?」

エルマ:「え?ラークシャサには行かないわよ…」

よしひろう:「……え?違うところに行くの?」

エルマ:「あたりまえじゃない。」


エルマは人差し指をくるくる回しながら説明を始める。


エルマ:「ラークシャサじゃ最上位の冒険者に発行される金色の指輪を貰ったじゃない

。」

よしひろう:「うん。」

エルマ:「私たちが最上位クラスに相応しいと思って?」

よしひろう:「う…。言われてみれば確かに。」

エルマ:「あの時は運が良かっただけ。今度はしっかりと実力でいくわよ!」

よしひろ:「実力は有ったと思うんだけどな。」

エルマ:「相手の弱点とこっちのリターンの魔法が噛み合っただけじゃない。」

エルマ:「ちょっとでも運が悪ければ死んでたわよ、二人とも。」


返す言葉が無い。


よしひろう:「じゃあ、次はどこに行くんだ?」


エルマはニヤっとしながら答えた。


エルマ;「ナーガよ。」


エリー、セナ、メイド、よしひろう:「ナーガ!?」


エルマがジト目で僕の方を見てる。


エルマ:「ヒロ、あなたナーガのこと知ってるの?知らないでしょ?知らないくせに何

を驚いているの?」

よしひろう:「いや、つい皆に釣られて(汗)」


ナーガとはエアリスの北、王都エリスよりさらに北に在るという地下世界なのだそうだ

多くの冒険者、英雄志願者、トレジャーハンターが訪れているという超巨大地下世界。

ナーガには傍らにある地方自治都市カルナから降りるという。

旅の始まりの街カルナ。そしてその地下に広がるナーガ。


よしひろう:「…俺達で大丈夫なのか?」

エルマ:「ラクサーシャと同じじゃない?危険な事には変わりはないわ。」


僕はエルマの無鉄砲さにため息をつきながら、この新しい冒険にワクワクしていた。

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