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続・夢の中だけ勇者さま?  作者: 菅原よしひろう
夢から夢へ
29/34

僕は夢を見た(85) 黒き鎧の花一輪

私の拙い文章、物語を読んでくださる皆さまに心からの感謝を。

ありがとうございます。

僕は夢を見た


「天」がその場に倒れた黒い鎧の女を間近で観察をする。

下から上に視線を動かし、その後じっくりと顔、胸、腰を見る。


天:「意識を失ってもなお、現界できるとは…なんちゅう女や。」

目:「この者にそうまでさせるとは、よほどあの男に想い入れがあるのでしょうな。」

鼻:「「愛の力」か?」


くすりと「鼻」が鼻で笑った。


天:「ご尊顔を拝ませてもらおうか。兜を取ってみろ。」


そして、傍らで同じように女を観察していた「口」に顎をクイッと指図した。

「口」が黒い鎧の女の上体を少し上げ、兜を外した。

兜を外した際に、結っていた髪が解け、長く美しい黒髪がサラサラと流れた。

次に顔当てを外す。


一同:「おぉぉ」


「天」達から感嘆の声が上がった。

それほどまでに彼女は美しかった。

細面の端正な顔。

うっすらと桃色がかっている唇。


天:「ほんに美しい。」

天:「だが「口」には及ぶまいが。」

口:「世辞でも嬉しゅうございます。」


一同が容姿を眺めていると、少し体が動いた。


黒い鎧の女:「う、う~ん…」


一同ビクッ!っとし、思わず2m程後ずさり。

武器を手に身構える。

しかし、黒い鎧の女は以降、ピクリとも動かず意識を失っているようだった。


目:「ビックリした…」

天:「お前ら肝が小さいな。たかが小娘一人に何を怯えとる。」

口:「人の事は言えませぬぞ、長。」


「鼻」がうんうんと頷く。


天:「そろそろ起こしてみるか?」

目:「では、私めが。」


黒い鎧の女の上体を起こし、背中をグッと押す。


黒い鎧の女:「うっ…」


一声発した後に頭を左右に振り、右手を額に当て、ボーっとした意識のまま

しばらく微睡んでいた。

意識がはっきりしてきたのか、手を放し、左右を見渡す。

何やら黒装束の者が5人…


黒い鎧の女:「5人…5人……ご!?」


ハッと我に返り座位から片手立ちをしつつ後ろに回転。

腰に手を持って行き、抜刀の姿勢に入ったが…


黒い鎧の女:「刀が…無い!?」


愕然とする女。


天:「探しているのはコレか?」


それを見た黒い鎧の女が悔しさか口をキッと結んだ。


黒い鎧の女:「き、貴様…」


一陣の風が流れた。

女の髪の毛がサラサラとなびく。


黒い鎧の女:「………ん?」


頬に当たる髪に何かに気付く女。


黒い鎧の女:「な!?なーーー!?」


みるみると顔を真っ赤にする女。

両手で顔を覆う。

そして、内股でその場にへたり込む。


黒い鎧の女:「このような辱めを受けるとは!」

黒い鎧の女:「私の知らない間に何をした!?」

天:「何もしとらんぞ?」

黒い鎧の女:「嘘だ!!!なら何故私の兜が無い!」

天:「我らに戦いを挑んできた者の顔をちょっと見たくてな。」

天:「えらいべっぴんさんで驚いていたところじゃ。」


天の「べっぴん」の一言に更に顔を赤らめる。


黒い鎧の女:「べっぴんなものか!!」

口:「いえいえ。端正でお美しゅうございましたよ。」

口:「女の私が太鼓判を押しましょう。」

黒い鎧の女:「う、う、う、美しい……」


体が後ろに傾きつつ気を失いそうになっている女を「口」が支えた。


口:「これこれ、勇者がこれではいかんのではないかえ?」


ハッと我に返る女。


黒い鎧の女:「私の負けだ。好きにすればいい。」

天:「負けだのなんだのと…人の話を聞かぬヤツじゃ。」


天は女の前に座り、「ほれ」と、兜を返した。

女は兜を受け取るが、被らずに脇に置く。


天:「お主に聞くが、現世(うつしよ)の巫女に選ばれた勇者ではないのか?」

黒い鎧の女:「はい。その通りです。」

天:「やっと会話ができたか。難儀なヤツよのう。」

天:「我らは現世(うつしよ)の巫女とは、まぁ、近しい存在、とも言えぬが、なんだ、知らぬ仲ではない。」

黒い鎧の女:「………」

天「我らは姫から…現世(うつしよ)の巫女の姉から頼まれて、ある男の現世での様子を見に来たのだ。」

黒い鎧の女:「………」

天:「その男の名は「よしひろう」。あの病室で寝ている者だ。」

黒い鎧の女:「!!!!」


ハッと納得が入った顔をする女。


天:「あの者は今、常世(とこよ)に居る。」

天:「言わば死の淵におるのも同意じゃ。」

天:「このままでは時期に死が訪れる。」

天:「で、見に来たらこの騒ぎ。まったく…」


深い深い反省の態度をとる女。恐縮しまくっているようだ。


黒い鎧の女:「てっきりあの者の仲間かと思っていました。」


と、よしひろうのベッドの脇に立つ怨霊を指さした。


天:「助けたいか?」

黒い鎧の女:「はいっ!」


即答だった。

天に間近まで近寄り、上目使いで懇願する女。


天:「(ち、近い…顔、近っ!惚れてしまうぞ!!)」

口:「長、それはなりませぬぞ。」

鼻:「我らに与えられし命は様子を見て来る事のみ。」

耳:「現世(うつしよ)には手を出してはならぬのが掟にて。」

目:「そうは言ってもこの状況。助けてやりたいのは山々。」

黒い鎧の女:「あの方の命を救えるのなら、我が身を差し出します!」

天:「(我が身とな…)」


ゴクリと唾を飲む天。


口:「エロ爺…(呆れ顔)」

天:「違う!断じて違うぞ!!」

目:「いかが致しますかな?」

天:「ワシに考えがある。」


そう言うと、「耳」が持つ黒い鎧の女の刀を見つめた。


天:「要は結界を破れれば良いのだ。」

天:「我らが手を出す必要はない。」

天:「ただ、ちょこっと刀に力を与えるだけじゃ。」

天:「刀に力を与えた後は知らん。我らには関係無い事。」

目:「苦しい言い訳ですな。」

鼻:「ギリでセーフか…」

耳:「いや、アウトでしょ(笑)」

口:「それを決めるのは姫ですからねぇ。どんな裁定が下されるのか…」

天:「お前ら、この女子(おなご)の願いを叶えてやりたくはないのか?」

口:「このスケベが…(ボソリ)」

天:「違う!ちゅうとろーが!」


ガヤガヤと談合する5人。それを見守る不安げな顔の女。

小一時間は掛かったであろうか。

ようやく談義が終わったようだ。

「天」が黒い鎧の女に向かって歩いて来た。


天:「はぁ、ようやく決まったぞ。」


深いため息交じりに話し始める「天」。


天:「お主の刀に術を掛けてやる。」

天:「あまり高位なのは掛けてやれぬが、あの結界を破るには十分だろう。」

天:「ちょっと待っておれ。」


黒い鎧の女の表情がパッと明るくなる。


黒い鎧の女:「ありがとうございます!」

鼻:「鼻の下が伸びていますぞ、長。」

天:「うるさいわい!」

口:「エロ爺は放っておいて、さっさと始めましょう。」

天:「誰がエロGじゃ!」


刀を前にそれぞれが念じ始めた。

術式を刀に掛ける。


目:「見えし物がこの世の全て。見えぬ物は滅びゆくのみ。」

耳:「聞こえし音に耳を澄ませ。聞こえぬ音に力すら無く。」

鼻:「香りと臭いと聖と邪と。それを決めるは己が定め。」

口:「発する言の葉に力有り。清なる言葉に祝福を。」


それぞれが短いながらも術を刀に掛けていく。


天:「次はワシの番だな。まぁ、見ておれ。」

黒い鎧の女:「はい。」


他の4人が刀から少し離れ、「天」が刀の傍らに立つ。

刀に向かい印を結ぶ「天」。


天:「破邪顕正!木っ端微塵となるが宿命!!」


刀の鞘から光が漏れ始める。


耳:「そ、それは強すぎではありませぬか!?」

口:「こ、これは久しぶりですな!いつ見ても素晴らしい。」

鼻:「並みの怪異であれば、この一撃で雲散霧消となりましょうぞ。」

目:「私には眩しすぎます…」

天:「この位でなくてはのう。ワハハ!」


黒い鎧の女は兜を手に取り、ゆっくりと被っていく。


黒い鎧の女:「(今度は皆さんの助けが有る!)」


そう心の中で念じるように呟くと、顎紐をキュッと締めた。

自然と気合が入って来る。

天は刀を黒い鎧の女に手渡す。


天:「さあ、これを持って破邪を成せ!」

黒い鎧の女:「はい!」


力強く頷くと、刀を受け取る黒い鎧の女。

「よしひろう」の居る4階まで、ゆっくりと宙を上がって行く。

鞘を握る左手に力が入る。


黒い鎧の女:「(次こそは…いける!!)」


刀を腰に差し、そして抜刀。

刀身から眩い光が迸る。

世界が金色に輝き、そして白となる。

突撃の構えを取り、狙いを相手に集中させる。

ここで失敗したら、後が無い事は分かっていた。


黒い鎧の女:「この一撃で決める!!」


お腹の少し下辺りに力を込める。


黒い鎧の女:「いざ!!参る!!!」


地を蹴り流星の如き素早さで結界目掛けて飛翔した。

空を切り対象へと一直線で突き進む。

右手に持つ刀を大きく前へと突き出す。


黒い鎧の女:「キエェェェェェ!!!」


切っ先が結界に当たり、火花を散らせる。

「ギギギギ」という音とともに結界の一部であったであろう何かが

オレンジ色の光となり弾け飛んでいく。

押しつ押されつの力のぶつかり合い。

その接点である切っ先が白く輝き始めた。


天:「ほれ、ほれ。後少し。もう少しじゃ!」


切っ先を中心に結界が剥がれ、人ひとりが入れるほどの穴が開いた。


天:「今ぞっ!!!」

黒い鎧の女:「せいっ!!!」


怨霊目掛けて刀を突きだした瞬間。

怨霊がニタリと笑みをうかべた。

今まで空中で胡坐をかいていた「目」が何が起きようとしているのかを

察知し、黒い鎧の女目掛けて飛翔した。


目:「させるか!!」


怨霊から細く長い黒い腕が無数に生え、黒き鎧の女を包み込もうとする。


黒き鎧の女:「な!?」


そこに「目」が体当たりをして鎧の女を突き飛ばす。

入れ替わりに「目」が怨霊の腕に包まれ、そして体内へと飲み込まれていった。

怨霊の持つ邪悪な罠に掛かりそうになった弱い自分に対する悔しさと、

自分を庇って怨霊へ飲み込まれた「目」の行動への疑問が呆然と立ち尽くす彼女の

口から一言の言葉として発せられた。


黒い鎧の女:「な…ぜ…?」


「目」を飲み込んだ邪悪な腕が再び動き出し、黒い鎧の女へと延びて来る。

よく見ると腕の手の平には無念に死んでいった者たちの苦悶の表情が浮き出ていた。

鎧の女は「怖い」と心底思った。

恐怖のあまり顔が引きつり、体は全く動けない。


黒い鎧の女:「嫌…、いやー!!」


長い無数の腕に包まれて、静かな暗闇の中。

黒い鎧の女の顔の鼻先に腐りかけた人の顔らしき物が表れた。

吐き気を催すような死臭と、見るに堪えない崩れた顔。

顔から延びだした灰色の舌が黒い鎧の女の頬をベチャッと舐める。


黒い鎧の女:「ーーーーーーーー!!」


劣等感、絶望感、虚無感、ありとあらゆる負の感情が流れ込んでくるのを感じた。

気が遠くなってくる。


黒い鎧の女:「(ああ…このまま飲まれて…消えてしまう…)」


刹那の刻…

眩い光が突然に自分の内側と外側を洗い流した。


天:「小娘!!生きておるか!!!?」


天は錫杖を渾身の力で振り下ろした。

黒い鎧の女を包むヘドロ状の物質が弾け飛んだ。

拘束を解かれ、鎧の女が後ろ向きに倒れ込む。

咄嗟にその体を抱えてその場から離れる「口」。

ぐったりとした鎧の女に声をかける。


口:「大丈夫?大丈夫?」


怨霊から延びた手が今度は「天」へと襲い掛かる。


天:「ふぅん!!」


錫杖一閃で千切れ飛ぶ腐った腕。

天は鎧の女の居る安全な間合いまで下がり、鎧の女の様子を伺った。


天:「どうだ?その者、大事無いか?」

口:「はい。少し休めば。」

天:「それにしても、気を失ってもなお現界できるとは…」

天:「相当に修練を積んだと見える。」


黒い鎧の女を心配そうに見る一同。

そして、怨霊の方に目を向ける。


天:「あやつ(目)、如何にしたものか…」

鼻:「迂闊にも捕らわれよって。」

口:「この者を庇っての事。仕方がありませぬ。」

耳:「……「目」の声が聞こえまする。」

天、鼻、口:「何と!?」


耳には「目」の発する声が波紋のように見えていた。

どれどれと各々が「耳」に触れ、情報を共有した。


天:「ほう!まだ生きておったか!」


と、にんまりと笑う「天」


鼻:「何か文句を言ってますな(苦笑)」

口:「え~っと、何々?早く助けろ??」


一同が大笑いした。

その声で目が覚める黒い鎧の女。


天:「おぉ、目が覚めたか。」


黒い鎧の女は虚ろな目で周囲を眺める。

そして両手を前に出し、掌を見つめた。


黒い鎧の女:「あぁ…ごめんなさい…私のせいで…私が至らないばかりに…」


目尻に涙が滲む。


天:「気にするな!大丈夫。あやつは生きておる!!」


黒い鎧の女の顔が少し明るくなった。


天:「だが、どうしたものよのう…」


項垂れて考え込む一同。

その時、一羽のツバメが上空に飛来した。

一同の周りをピヨーと鳴きながら旋回する。


天:「あれは姫様からの使いか!」


右手を上げ人差し指を横に向けるとそこにツバメが舞い降りた。

ツバメは輝き始め、折り紙の姿へと変化する。

その折り紙を丁寧に開いていく「天」


広げると、そこには達筆な字で文が書かれていた。

ただ一言、「容赦無用」と。

それを見て「天」は嬉しそうに胸の前で両拳を何度も突き合わせる。


天:「よぉ~し、姫さまからの許しを得たことじゃし!派手にいくかのう?」

鼻:「現世(うつしよ)への介入を!?姫様が許すと!!?」

耳:「姫様の方でも何か動きが有ったという事か?」

口:「にしても、こんな事、百年ぶりくらい?」

耳:「しかしながら、現世(うつしよ)の家屋を壊すのはさすがにマズいでしょうに?」

天:「その辺りは心得ておるわい!!」

天:「任せておけ。あやつだけを引き剥がしてくれる!」


そういうと「天」は皆より一歩前へと足を運び、俯き加減で静かに深呼吸を2,3度した。

周囲に光の粒子が現れ、キラキラと黄金色を発する。

そして、その光が「天」の足元から上へと体を覆っていく。

光が全身を覆った瞬間、強烈に輝き「天」を直視できない。

輝きが収まり、再び「天」を見ると、そこには黒装束ではなく、

白装束…修験者のような恰好に赤い鼻の長いお面を付けた男が立っていた。


黒い鎧の女:「て、天狗?」


振り返らず顔を縦に振る「天」


天:「いかにも。」

天:「ちょっとばかり力を使うが、大丈夫。」

天:「あの若者、よしひろうと言ったかの?怪我はさせぬよって慌てるでないぞ?」

黒い鎧の女:「はい。」


掌を口元に置くと、穏やかにフフゥ~っと息を吹きかける。

緑色をした光の粒子が掌の上で丸く渦巻き始めた。


天:「まだ足りぬかのう?もう一回。」


もう一度フフゥ~と掌に息を吹きかける。

プラズマを発し、今にも爆発しそうな勢いでグルグルと回る光の玉。


天:「では…参る!」


次の瞬間、怨霊の懐に飛び込み、右手の光の玉を胸の辺りに叩き込む。


天:「ふん!!」


いきなりの攻撃に驚愕と苦悶が入り混じった表情をする怨霊。

光の玉が爆発し、怨霊を取り巻く黒いヘドロ状の物体が飛散し、怨霊自体の腐った

体が露わになる。

天は怨霊に飲み込まれた「目」が居たであろう箇所に錫杖を突き立てた。


天:「「目」聞こえるか!!聞こえておるならこれを掴め!!!」

天:「「目」えぇぇぇ!掴めぇぇぇ!!」

天:「………………………」

天:「………………………」

天:「………………………!?」

天:「手応え有り!!」


グイと錫杖を引き抜くと、「目」が錫杖をしっかりと掴んでいた。

勢いのまま、錫杖を後方へとブンと振り抜く。

「目」はゴロゴロと転がりながら皆の元へと辿り着いた。

緑の光の玉は既に消滅し、怨霊の体が元へと戻っていく。

振り抜いた錫杖をグルグルと回転させながら、怨霊の足元に次の一撃を加える。


天:「人に仇名す邪なる者よ!この者は貴様には渡さぬ!!去れい!!!」


「天」が怨霊から出る無数の手に覆われた瞬間、その黒いヘドロ状のものが爆散し

怨霊共々姿を消した。

気を抜かず周囲を見やる。

敵が存在しない事を確かめてフゥーっと深く息を吐いた。

「天」は空を見上げながら皆には聞き取れぬ声で呟いた。


天:「(姫様、こちらが出来る事はここまでですぞ。)」


「天」には見えていた。物理的な敵は倒したが、因果の線がまだ断ち切れていない事が。

空が薄っすらと明るくなってきた。

もうすぐ夜明けだ。


鼻:「お主、臭いにも程がある!鼻が曲がるではないか!」

口:「にしても、よくもまあ無事で。」

耳:「私が救ったようなものですよ!一生有難がりなまし!!」

目:「(どいつもこいつも好き勝手言いやがって…)」

天:「「目」、よくやった!お前が咄嗟に庇ってなければ…」

天:「この者(黒い鎧の女)も飲み込まれておったかもしれぬ。」

黒い鎧の女:「はい。ありがとうございます。」


正座して深々と頭を下げる黒い鎧の女。


天:「ところでお主、名は何と言う?」

黒い鎧の女:「はい。私の名は静と申します。源静(みなもとしずか)です。」

天:「良い名じゃ。うんうん。」

目:「静殿、お疲れ様でした。」

静:「「目」様、ありがとうございました。私が至らぬばかりに…」

耳:「至らないのはこの場にいる皆も同じ事。お気になさらぬように。」


静の体が光始めた。そろそろ目覚めの時。


静:「あぁ…、せっかく皆様とお知り合いになれたのに…」

天:「また会える。」

静:「え?」


「天」の言葉に驚く静。


静:「本当に?」

天:「本当だ。」


口が静の兜を脱がせ、優しく髪を撫でる。


口:「まだ帰還命令は出てませんものね。」

鼻:「久々の娑婆の空気だからな。」

目:「このまま帰ったのでは何だか勿体ないし。」

静:「では、では…是非明日にでも!」


「耳」が右腕で静の肩を抱く。


耳:「明日と言わず、明後日も明々後日も。」

耳:「女同士仲良くいきましょう(笑)な?「口」?」

口:「えぇ、もちろん(笑)」

天:「なんなら、一生俺の傍に居るか?嫁として。」


ニカッと笑って親指で自分を指さす「天」


静:「あの…それは…それだけは…」


と答えつつ、よしひろうの方をチラッと見る静。


耳:「突然何を言い出すかと思えば。」

口:「振られましたな(笑)」

天:「ワシほど良い男は他にはおるまい?」


と納得出来ないと言わんばかりのしかめっ面をした。

皆が笑いながら頷く。

長い長い夜が終わりつつある。

そして静は微笑みながら光となって消えた…


今宵の夢の話はここまで。

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