僕は夢を見た(81) 黒狗衆。
随分と放置していてごめんなさい。
復職して心と体の余裕ができるまでお休みさせていただいておりました。
少しずつですが、物語を紡いでいけたら幸いです。
僕は夢を見た。
最果ての巫女:「急に呼び出してすまぬ。」
天は頭を更に低くして返事をする。
天:「何を仰いますか、姫。」
天:「我らは姫に全てを捧げる者なれば。」
最果ての巫女の表情が少し和やかになった。
最果ての巫女:「ありがとう。ありがとう。」
天が顔を上げ最果ての巫女に視線を移す。
天:「して、此度の用向きは何でありましょうか?」
最果ての巫女は真剣な面持ちで天に話を始める。
最果ての巫女:「現世で何やら面倒事が起きておるようでの…」
天:「ほぉ。面倒事にござるか。」
最果ての巫女:「うむ。そなたにはそれを確かめて来て欲しいのじゃ。」
最果ての巫女:「そなたが直に見聞きし、それを我に伝えるのじゃ。」
天が少し動揺していた。
天:「し、しかし、我らが現世に介入するのは禁忌なのでは?…」
最果ての巫女:「かまわぬ。我が許す。」
最果ての巫女:「ついでじゃが、機会があれば我が妹とも話をしてもらいたい。」
最果ての巫女:「何が起きているのか備に見て参れ。」
天:「ははぁ!では、さっそく!!」
最果ての巫女:「ちょっと待て!待たぬか!!話はまだ途中ぞ!!!」
立ち去ろうとする天を慌てて呼び止める最果ての巫女。
再び巫女の前に座る天。
最果ての巫女:「(う~む。こいつ一人じゃと暴走しかねんな…)」
天:「?」
最果ての巫女:「此度の偵察には「目」、「耳」、「鼻」、「口」の四人を連れて行け。」
天:「ほぉ!?それはまた錚々たる面子にござるな!」
最果ての巫女:「この者達をここに呼べるか?」
天が腕を組んでガハハと笑う。
天:「先ほどのお言葉にて既に外にて待機しておりますぞ。」
天:「入れ。」
目耳鼻口:「はっ!」
部屋に入るそれぞれの顔の覆いには、名を冠する文字が一文字刺繍がされている
。
目:「我らを呼ばれるとは…尋常ならざる事が起こっていると?」
鼻:「籠って久しいが故、踊る気分ですな。」
口:「まっこと、まっこと。」
耳だけが一人、姫の顔を見、頷いていた。
最果ての巫女:「(聞こえるか?耳よ。)」
最果ての巫女:「天、一人じゃと暴走しかねんから、お前達四人でフォローしてくれ。」
最果ての巫女:「頼んだぞ。」
最果ての巫女の言葉に頭を深々と下げる5人。
最果ての巫女:「そしてもう一つ。」
というと巫女が立ち上がり、5人について来いという仕草をした。
顔を見合わせ、何事かと訝しがる5人。
巫女に従い、廊下を歩く。
そしてある部屋へと通された。
布団が敷いてあり、そこには青年が一人眠りについていた。
布団の傍らには青年を見守るようにお毬が付いている。
天:「この者は?」
最果ての巫女:「お前達、気づかぬか?」
鼻:「この香りは…現世の姫様!?」
静かに頷く最果ての巫女。
他の四人から「おぉ!」と、どよめきの声が上がる。
目:「まさか、かような場所でお会いできるとは…」
最果ての巫女:「そうなのじゃ。」
最果ての巫女:「この者が何故ここに来たのか。我が一番知りたいのがそこじゃ。」
最果ての巫女:「選ばれし者ならば、そこには世界が広がっている。」
最果ての巫女:「この者の世界に行き、何が起きているのかも見て参れ。」
最果ての巫女が5人に向けて指示を出した。
一つ、現世での人との接触を禁ずる。
一つ、現世での武力介入を禁ずる。
一つ、青年には気づかれてはならぬ。
最果ての巫女:「この者を必ず元の世界に戻すのじゃ。」
片膝を着いて神妙な面持ちで巫女の前に控える5人。
最果ての巫女:「行け!」
黒狗衆5人:「はっ!」
視線をよしひろうにむける最果ての巫女。
再び黒狗衆の方へ目をやると、そこには誰も居なかった。
最果ての巫女:「頼んだぞ…」
暗闇の祠から人らしき影が数人這い出てきた。
目:「久しぶりの現世ですな。」
鼻:「木々や草花の香り…懐かしや。」
耳:「現世は雑音が多くてかなわぬわ。」
口:「私の出番はありましょうか?(笑)」
天:「この世で暴れまわったのがつい昨日のようじゃわい!懐かしいのう。」




