僕は夢を見た(78) エアリスの大草原
エリーから借りている屋敷の自室のベッドの上で目覚める僕。
レギオナ:「お目覚めですか?主殿。」
よしひろう:「おはよう。」
ベッドの縁に座るレギオナ。
レギオナ:「おはようございます。」
上半身を起こし、両手で目を掻く僕。
よしひろう:「いよいよだな?」
レギオナ:「はい…いよいよです。」
レギオナ:「多くの血が流れ、阿鼻叫喚の地獄絵図。」
レギオナ:「狂喜と歓喜の二重奏。ウフフ」
レギオナの瞳が日の光のせいか、薄っすらと輝いて見える。
まるで来る大戦を喜んでいるかのようだ。
僕は問うてみた。
よしひろう:「勝てるか?」
レギオナ:「主殿がいるのですよ?負けるはずがございません。」
僕はレギオナの満点の答えに笑顔で頷いてみせる。
よしひろう:「じゃ、エルマの所に行こうか?」
レギオナ:「はい。」
よしひろう:「そう言えば、最近は猫には変身しないのか?」
レギオナ:「エルマ様に正体がバレちゃいましたので。」
レギオナ:「それでもたまには猫の姿でお邪魔させていただいてます。」
よしひろう:「そうか、エルマを守ってくれているんだな。ありがとう。」
レギオナの頭を撫でてやると、調子に乗って腕に体を擦り寄せてくる。
よしひろう:「朝から盛ってどうするよ(笑)」
レギオナ:「だって、私の主殿ですもの。」
レギオナの上目使い、頂きました。
玄関の扉を開くとエルマが目の前に立っていた。
僕とレギオナを一瞥すると嫌な物を見たような顔をするエルマ。
エルマ:「毎日、毎日、なんかイヤラシイわね、お二人さん。」
思わず反論してしまう僕。
よしひろう:「ちゃうねん。」
エルマ:「ちゃうねん?どこの言葉よ!」
「まったくもう」と言わんばかりに頭を抱えるエルマ。
エルマ:「今日が大事な日って事、忘れてないわよね?」
よしひろう:「もちろんです。ごめんなさい(棒)」
ため息をつきながら自宅へと歩みを進めるエルマ。
エルマの家の食卓では家族一同がテーブルに座って僕らが来るのを待っていた。
エルマが定位置に座り、僕とレギオナは空いた席に座る。
ライアン:「さあ、頂こう。」
エルマの父親の一言で食事が始まる。
よしひろう:「いつもはエルマと三人で食べてるのに、今日は家族勢揃いですか?」
呆れたようにエルマが答える。
エルマ:「もしかしたらこれが最後の朝食になるかもしれないって、思った事無い?」
なるほどなと僕は思った。
エルマの父が僕の顔をジッと見つめ、真剣な眼差しで願いを伝えてきた。
ライアン:「娘の事をよろしくお願いします。」
よしひろう:「お任せください!」
そう答えるのが精一杯だった。
もっと気が利く言葉を出せればよかったのに、情けないな…そう思うとだんだんと猫背になってくる。
エルマ:「ヒロ!あなたまで辛気臭くなってどうするのよ!」
エルマ:「もっとこう、胸を張りなさい!」
よしひろう:「はい!(ビシッ)」
そうこうしているうちに朝食が終わり、今はエルマの荷造りの手伝いをしている。
よしひろう:「テントとか不要じゃないか?ジアが用意してくれてると思うんだが。」
エルマ:「男女共用だったら困るじゃないの。」
エルマ:「それにレギオナだって女の子なのよ?」
よしひろう:「確かに…」
あれもこれもとリュックに詰め込み、以前、地下迷宮に行った時と同じような大きさの荷物になっていた。
よしひろう:「これ、担げるのか?」
エルマ:「平気よ!」
肩ベルトに腕を通し、リュックを持ち上げようとするがビクともしない。
エルマ:「あれ?(苦笑)」
よしひろう:「現地で調達できそうな物は省こうぜ。」
エルマ:「そ、そうね(汗)」
ポーション系は全て省き、次に予備の魔封石を退けて、着替えも最小限にと…
着替えに手を伸ばしたら、その手を思いっきり叩かれた。
よしひろう:「痛てて。何だよ?」
エルマ:「そこは自分でやるわ!あっち向いててちょうだい!」
よしひろう:「へいへいほー。」
しばらく壁とにらめっこをしていたら、やっとエルマ様から荷物を見る許可が出た。
荷物は先程の半分位の量にまで減っていた。
よしひろう:「どうだ?今度は担げるか?」
エルマが荷物を担いで見せる。
エルマ:「これなら行けるわ!」
僕、レギオナ:拍手~パチパチ
エルマ:「考えてみたら、ヒロの背中に乗って行くんだから、重さ気にしなくても良かったんじゃない???」
よしひろう:「う…(するどい所に気がつきやがる)」
レギオナ:「(ウフフフ)」
ふと時計を見ると、そろそろ正午だ。
エルマ:「え!?もうこんな時間?」
よしひろう:「そろそろ出発しようか?」
エルマとレギオナが頷く。
エルマの屋敷の玄関先にある少し開けた場所に移動した。
エルマの荷物はレギオナの計らいでレギオナが担ぐ事になった。
美しい戦闘服に身を包むエルマ。
その姿に涙を堪えきれない母親のマーサ。
マーサ:「無事で帰ってくるのですよ。」
タチアナ:「行ってらっしゃい、お姉様。」
ライアンはじっと堪えて笑顔でエルマを送り出す。
よしひろう:「行ってきます!!」
そういうとエルマを背中に乗せ一気に舞い上がる。
それに続くレギオナ。
そして南へと続く道へと向かい飛行する。
エルマは家族が見えなくなるまで手を振っていた。
王都の南門から続く街道をひたすらエアリスに向けて飛翔する僕たち。
王都とエアリスの中間地点で荷馬車を何台も連れている一行が見えてきた。
その先頭には緑色のローブに身を包んだエナがいた。
その左右と前部には銀に青色のラインが入ったフルプレートの甲冑姿の騎士が三人。
エルマ:「あれ、ロイヤルガードよ。」
よしひろう:「へぇー」
何も考えずに上空から声をかける僕。
よしひろう:「エーーナーー!」
僕の声に気づいたエナが大きく手を振って応える。
エナ:「エアリスで会いましょー!!」
お互い手を振って別れる。
よしひろう:「エナが率いているのは補給部隊だったよね?」
エルマ:「そうそう。後は救護部隊と思う。」
よしひろう:「着々と準備が整ってきて武者震いがしてきたよ。」
エルマ:「これだけの軍勢を動かすのだから、何か情報を掴んでいると思うの。」
エルマ:「それを知るのはジア様と一部のレンジャー、騎士だけだと思うわ。」
よしひろう:「着いたらコッソリ教えてもらおうぜ。ジア様に(笑)」
エルマ:「そうね(笑)」
僕とエルマがそろそろエアリスの街が見えて来そうな所までたどり着いた時、エナの補給部隊で事件が起こった。
エナを中心に王国旗を掲げた騎士が三騎、街道を進んでいる。
その姿を街道脇の雑木林から弩でエナを狙う森林迷彩服の男が一人、息を殺して待ち構えていた。
段々と男に近づいていくエナ達。
男が矢を放とうとする瞬間、弩の十字になっているど真ん中にクナイが突き刺さる。
森林迷彩服の男:「!!!?」
男は慌てて身を起こし腰の剣を抜く。
が、レンジャーが既に背後に回り込み喉を切り裂いていた。
声も無くその場に崩れ去る森林迷彩服の男。
遺体を調べ。どこの手の者かを探るレンジャー。
レンジャー:「賊の手がかりは無しか…ん!?、この首筋の刺青は!?…」
この戦いを知ってか知らずでか、エアリスへと向けて何事も無かったようにエナ達一行の補給部隊は進んで行く。
エアリス上空へと辿り着いた僕とエルマとレギオナ。
上空から見ると陣形が良く分かる。
エアリスの西門外側の草原に整然と立てられている大きめのテント。
それより西側に長槍部隊が4~5列。その後ろ、テントとの間にに弓、弩隊が同じく4~5列。
エアリスの城壁の内側には翼竜らしき生物が二十数匹…
よしひろう:「翼竜!?」
エルマ:「あれは王国が誇る翼竜部隊。」
エルマ:「パンツァードラグーンよ。」
エルマ:「口からファイヤーボール並みの火球を放つの。」
よしひろう:「そんなのまで持ってたのかよ!」
よしひろう:「凄いな、姫様…(ゴクリ)」
エルマ:「でもね、夜間戦闘には向かないの。」
よしひろう:「なんで?」
エルマ:「翼竜を操るのが人間だから。」
よしひろう:「あー…なるほど。使いどころが難しいな。」
ジアを探して立ち並ぶテント周辺を眺める。
テント郡の中心に大きめのテントが設営されており、ジアの愛馬である真っ白な馬が繋がれているのが見えた。
よしひろう:「あ!あれだ!!ジア見っけ!!」
よしひろう:「挨拶に行こうか?」
エルマ:「そうね、作戦のことも聞いておきたいし。」
ジアのテントの前に舞い降りる僕たち。
入り口を守るロイヤルガードが、突然現れた僕たちに驚いて身構える。
しかし、すぐに僕たちの事を理解したのか、警戒を解いた。
よしひろう:「あ…あのぉ?」
ロイヤルガード:「よしひろう殿ですな!姫殿下がお待ちです。どうぞ中へお入りください。」
あっさりと中へ通され拍子抜けする僕たち。
中へ入ると同時にジアらが僕らに気がづいた。
ジア:「ヒロ、エルマ、レギオナ、良く来てくれた!」
ジア:「さ、遠慮無くこちらへ。」
近づくと知った顔があった。
騎士団副隊長のウォレスだ。
よしひろう:「お久しぶりです。ウォレスさん!」
ウォレス:「ああ、元気にしていたか?あれから暫くぶりだが、随分男の顔になったな!」
そう言いながら僕の肩をガッシリ掴む。
ウォレス:「丁度今から作戦会議をするところだ。」
よしひろう:「間に合って良かったです。」
ウォレス:「さぁ、君たちも座りたまへ。」
フリージアが指し棒を持ち、長い机の一番前に立つ。
僕ら三人はジアから最も遠い位置に座るような形となった。
ジア:「我々は後衛の長槍部隊より前面に陣取る!」
ジア:「後衛は戦闘経験の無い者達ばかりだ!!なので戦力と見なすな!只の壁だと思え!!」
ジア:「この長槍隊、弓隊、弩隊の指揮はエアリス騎士団隊長のアスターに任せる!」
アスター隊長:「ハッ!」
ジア:「さて、ここからが本題だ。」
ジア:「前衛中央は私とレンジャー5名とする!」
周囲がざわめいた。
一人の青年が立ち上がりジアに進言する。
青年:「中央を姫殿下と僅か5名のレンジャーとでは余りに無謀ではありませんか!?」
ジア:「ヘイズよ。我が剣が敵に遅れを取るとでも?」
ヘイズ:「い、いえ…」
僕は小さな声でエルマに話し掛ける。
よしひろう:「ヘイズって何をしてる人なの?」
エルマ:「王国騎士団の隊長よ。ロイヤルガードのトップでもある人。」
エルマ:「ウォレスさんの上官ね。」
よしひろう:「へー。若いのに凄いな。」
ジアの指示が続く。
ジア:「前衛の右翼はヘイズに任せる!」
ジア:「騎士120名をもって守り抜け!」
ヘイズ:「ハッ!」
ジアの指し棒が前衛左翼を指し示す。
ジア:「左翼は…」
ジアが少し考えていた。
迷っていたのかもしれない。
暫くの沈黙があり、そして宣言した。
ジア:「左翼は、よしひろう!」
よしひろう:「は?!」
急に自分の名が呼ばれたため、ビックリして立ち上がる僕。
その場にどよめきが巻き起こる。
全員の視線が僕に向けられていた。
ヘイズ:「た、たった独りに左翼を任せるおつもりですか!?」
ジア:「言い直そう。左翼はよしひろう、その従者レギオナ、そしてエルマ、この3名とする!」
ヘイズ:「わ、わずか3名…ですか…」
ジアは周囲の雰囲気を気にもせず作戦指示を続けた。
僕は呆然としながら席に着く。
ジア:「ウォレス率いる騎馬隊80名は半数ずつ左右に待機させ、合図が有れば敵陣を横断し敵隊列を崩せ!」
ウォレス:「ハッ!」
ジア:「パンツァードラグーン隊は空からの攻撃への防御と地上への援護に当たれ。」
男:「ハッ!」
ジア:「魔法部隊は第二皇女エカテリーナの指示に従うように!」
ジアが次々と指示を出している間、僕はエルマに泣きを入れていた。
よしひろう:「俺たちだけで左翼だってよ…」
エルマ:「確かに予想外だわ(汗)」
レギオナ:「フフフ」
よしひろう:「やれると思うか?」
エルマ:「王都を守った実績があるじゃない。」
よしひろう:「ま、まあな…」
レギオナ:「(主殿、自信を持って)」
よしひろう:「(あははは(苦笑))」
ジアの指示が終わったようだ。
ジア:「以上だ!解散!!」
一同:「ハッ!」
僕たちはテントを出て、左翼の一番後方に来ていた。
エルマがリュックからテントを取り出し、設置していく。
僕もその作業を手伝いながら明日の事を考えていた。
よしひろう:「レギオナ?」
レギオナ:「はい、主殿。」
よしひろう:「俺が前に出て戦うから、レギオナはエルマを守ってくれ。」
レギオナ:「御意。」
よしひろう:「エルマもそれでいいよな?」
エルマ:「分かったわ。頼むわね、レギオナ」
レギオナ:「はい。」
テントが完成し、中に入る僕たち3人。
よしひろう:「意外に広いんだな。」
エルマ:「寝るのは二人が限界だけどね。」
エルマ:「ちょっと待ってね、お茶をいれるから。」
そういうと集めた蒔きで湯を沸かすエルマ。
鍋の中の水が沸騰してきた。
沸騰しきる前にお茶の葉をコッヘルに入れ、火から遠ざける。
まさか陣中でお茶を頂けるとは…
よしひろう:「エルマって気が利くな。」
エルマ:「何よ!突然に!恥ずかしいじゃない…まったく…」
顔を赤くしたエルマがティーカップにお茶を注いでいく。
僕の分、レギオナの分、そしてエルマ自身の分。
お茶を飲みながらホッコリする僕達。
よしひろう:「美味しいなぁ…」
そう呟きながら遠くの山を眺める。
実に平和な一時だ。
冬場に暖を取りながらお茶を飲む。
そういうのも悪く無い。
のんびりくつろいでいたら遠くからラッパの音がした。
「プワ~~~」
その音が段々と近づいてきた。
「プワ~~~!」
いや、近づいているのではなく、各部隊の伝令兵が呼応してラッパを吹いていたのだ。
僕の居る陣でもラッパが鳴り響く。
「プワ~~~!!!」
思わず耳を塞ぐ。
よしひろう:「この音、どうしたの?」
エルマ:「きっと敵が現れたのよ!」
レギオナ:「(感じます。殺意をもった多数の獣が近づいて来ます。)」
よしひろう:「(了解!)」
残るお茶をいっきに飲み干し、左翼前面へと向かう僕達3名。
遠くに見える森林からわらわらと人形をした何かが沸き出てきている。
よしひろう:「(ゴブリンか?)」
レギオナ:「(はい、ゴブリンです。)」
右の方を見るとジアとレンジャーが余裕の表情で立っている。
さらに向こう側を見るとヘイズ率いる重装騎兵が剣と盾をもって壁を築いていた。
敵が森と前衛の中間を越えた辺りでジアがアスターに合図をする。
アスター隊長:「放てー!!」
アスター隊長率いる弓、弩隊が矢を放つ。
矢を受け倒れ込む無数のゴブリン。
アスター隊長:「装填、急げ!」
アスター隊長:「放てー!!」
さらに多くのゴブリンが倒れた。
それでも攻め寄ってくる無数のゴブリン。
敵がいよいよ近づいてきた。
よしひろう:「僕らも戦闘準備だ!」
意識を集中し、赤き鎧を顕現させる。
よしひろう:「レギオナはエルマを頼む!」
レギオナ:「御意!」
エルマ:「ヒロ!」
よしひろう:「何?」
エルマ:「爆砕陣は使っちゃ駄目よ!」
よしひろう:「え?」
エルマ:「騎馬隊が通れなくなるじゃない!!」
よしひろう:「わ、分かった!」
最初にゴブリンと接敵したのはヘイズ率いる騎士団だった。
ゴブリンの攻撃を軽く盾で防ぎ、脳天目掛けて剣を振り下ろす。
ひしゃげるようにして崩れ去るゴブリン達。
騎士団の威圧感に負け、右翼を攻めていたゴブリン共が中央寄りに流れて来る。
ジア:「フッ(笑)、ツーマンセルでいくぞ!」
レンジャー:「ハッ!」
ジアが大剣を横一文字に抜き一気に3匹のゴブリンを屠る。
返す剣でさらに2匹。
他のレンジャー達も二人一組でお互いをカバーし合い難なくゴブリンを仕止めていく。
その圧倒的な強さに後退りするゴブリン達。
森の中から新たにオーク達も現れて来ていた。
そして、森に逃げ込もうとするゴブリンを撫で斬りにしている。
よしひろう:「逃げる者は殺す…か。」
これまでの散発的な攻撃が、指揮された軍団規模の戦いに移行してきている。
オーク達に従い、隊列を組んで攻め寄って来るゴブリン。
途切れることの無い雲霞のごとき大軍勢。
よしひろう:「ついに本隊のお出ましか。」
僕はといえば左翼に攻め入てきたゴブリンを数匹仕止めていたのだが…
気のせいだろうか?
先程まで敵の攻撃が僕のいる左翼に集中していたように感じる。
よしひろう:「烈風斬!!」
僕の持つ刀から真空の刃が放たれる。
この技で目前の十数匹のゴブリンを真っ二つにするも、数ではこちらが圧倒的に不利だ。
敵の本隊がどんどんと近づいて来る。
数は数千?数万?
身構える僕、ジアとレンジャー、騎士団。
エルマ:「私が援護するわ!」
エルマの呪文の詠唱が始まった。
エルマ:「闇を照らす赤き炎、その力をもって全てを焼き尽くさん。」
エルマ:「我が身を通じて顕現せしものは炎竜。」
杖に付いた魔封石に急速に光が集まる。
エルマ:「現れ出でよ煉獄の吐息となりて!!」
エルマ:「ファイヤーブレス!!」
炎を輪郭とした竜の頭が顕現し、大きく開いた口からゴーっという音とともに炎が吐き出される。
まるで火炎放射機だ。
僕の頭上を越え草原中央どころか、森林地帯にまで炎が注がれた。
騎士団の目前から森と平原の境まで満遍なく炎が降り注ぐ。
見ると、騎士団達が余りの熱さに転げるように後退していた。
鉄の装備のせいで熱が中まで伝わってしまったのだろう。
よしひろう:「可哀想に…」
よしひろう:「つーか、俺も熱いぞ!?」
よしひろう:「熱っ!、熱っ!!」
よしひろう:「エルマ!いい加減にしろ!!」
エルマの魔法攻撃がやっと終わり、平原に目を向けると、動く者の無い焼け野原と化していた…
ジア:「敵は一旦退いたか…」
レンジャー(1):「エルマ殿に救われましたか…」
レンジャー(2):「いや、味方も危なかったのでは?(苦笑)」
レンジャー(3):「騎士団はさぞや怒っているでしょうな(笑)」
ジア:「転げ回っていたからな(笑)」
ジア:「戦闘隊形解除ーー!」
戦列が崩れ、皆思い思いのテントへと戻って行く。
そこに丁度よくエナの補給部隊が到着し、食料の支給をし始めた。
部隊全体が賑やかになる。
そして日が沈もうとしていた。
その頃、僕とエルマ、レギオナはジアのテントにいた。
ジア:「今日はよくやってくれた。」
ジア:「エルマのおかげで敵の先行部隊は壊滅。」
ジア:「味方に至っては死者はゼロだ!」
ジア:「まぁ、多少、火傷を負った者がいたがな…(苦笑)」
エルマ:「も、申し訳ございません。」
派手にやらかしたのを自覚しているのか萎縮して平謝りのエルマ。
ジア:「なに、大丈夫だ。騎士団には私から一言入れておく(笑)」
よしひろう:「あはは」
エルマ:「貴様は笑うな!というか、ジア様に伝える事があるでしょ!」
あー…
なんと言えばいいのか。
世の中、なかなか説明し辛い事ってありますよね?
信じて貰えるのかどうか…
意を決してジアに説明した。
よしひろう:「ジア、僕はこの世界の者じゃないんだ。」
ジア:「何を言っているんだ?」
よしひろう:「僕にとってはこの世界は夢の中の世界なんです。」
ジア:「…」
よしひろう:「なので、僕が僕の世界で目覚めると、僕はこの世界から消えてしまう。」
ジア:「ヒロの話を信じるとして、それは何時頃になるのだ?」
よしひろう:「日が暮れる頃です。」
ジア:「…もう時間が無いということか?…」
よしひろう:「はい。」
僕の体が薄っすらと輝き始めた。
レギオナ:「主殿…」
エルマ:「ヒロ!」
ジア:「あ?…え?…」
僕は咄嗟に刀をレギオナに手渡した。
よしひろう:「レギオナ!皆の事を頼む!」
レギオナ:「御意!」
僕の体が光に包まれ、そして消えていく。
そして…
目が覚めた…
枕の横に置いたスマホのアラーム音で目が覚める僕。
夢を見すぎたせいか、頭痛が酷い。
なんとか体を起こし、仕事に行く準備をする。
そして精神科で処方された薬を飲み、車に乗り込んだ。
夢の中の人達の事を思い一言呟いた。
よしひろう:「行ってきます。」




