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続・夢の中だけ勇者さま?  作者: 菅原よしひろう
夢から夢へ
18/34

僕は夢を見た(74) オーク討伐

アズールレーン、FGO、艦これとイベントが続いたため、サボってしまいました(^_^;)

洋子の申し出とジアの参加宣言のせいでエアリスの森のオーク退治をするハメになった僕。

今、エルマを抱き抱えエルマの家に向け飛行中。

エルマもオーク討伐に参加するため、衣装を着替えることになったからだ。

エルマの家の玄関先に舞い降りる。

小走りで家の中へと向かうエルマ。


エルマ:「ちょっと待っててね。」

よしひろう:「ういっす。」


待つこと数分、エルマが戦闘衣装を身に纏って現れた。

その手には深い赤色の魔封石がはめ込まれた杖を持っている。

孫にも衣装とはこのことか、と一人納得しながら思わず一言呟いてしまった。


よしひろう:「綺麗だ…」


それがエルマにも聞こえたらしく、顔を少し赤らめながら僕の胸ぐらを掴んで言った。


エルマ:「さあ!行くわよ!」


その一言でハッと我に返る僕。


よしひろう:「お…おう!」


エルマを抱き抱え空へと舞い上がる。

向かうは王城。

ジアと洋子が待っている。

エリーの部屋のテラスに降りる僕とエルマ。

部屋に入ると重武装したジアが仁王立ちで待ち構えていた。

その白金の甲冑姿も見とれてしまう程美しい。

背中には大きな大剣を下げ、正に戦乙女。

普段のモジモジして腰が引けたようなジアとは大違いだ。

さすがアークランドで最強と歌われるだけのことはある。

僕の視線を感じたのか、ジアが話し掛けてきた。


ジア:「どうした?ヒロ。」

よしひろう:「え?!あ…その…ジア様のあまりの美しさに見とれてしまいました。」

ジア:「そうか、そうか(笑)」


そう言うと上機嫌になったジアが背中の大剣を抜いて見せる。

薄っすらと光る刀身、何か魔力を秘めているようだ。


ジア:「この剣は我が王国に代々伝わる魔法の剣だ。」

ジア:「この剣ならばヒロにも勝てるかもしれんな(笑)」

よしひろう:「いやいや、勘弁してください(苦笑)」


他愛もない話をしていると、何やら視線を感じた。

視線を感じる方を見ると洋子がそろそろ出発しようと目で合図をしてきた。

黙して頷く僕。


よしひろう:「そろそろ行こうか?」


その一言に反応して、エリーが立ち上がり、両手の人差し指をツンツンと合わせながら、召し使いの方を見る。

それに答えるように召し使いは両腕でバツ印をした。

どうやらエリーも同行したかったようだ。

召し使いに止められ、しょんぼりするエリー。


エリー:「ジア姉、ヒロ、エルマ、気をつけて。洋子も。」

エリー:「無事に、無事に帰って来るのじゃ。」

よしひろう:「行ってきます。」

洋子:「すぐに帰ってくるから。」

ジア:「帰ってきたら土産話しを聞かせてあげるから。」


テラスに出る僕とエルマ、洋子、ジア。

僕はエルマを背負い、洋子はジアを背負う。

僕と洋子は空へと飛び上がった。

僕らが水平飛行に移るとエルマとジアは馬に跨がるような格好になる。


洋子:「方角はどっち?」

よしひろう:「このまま真っ直ぐだ。」

洋子:「了解!」


洋子が先行して飛行する。

洋子の左斜め後ろを飛ぶ僕。

何気に洋子の方を見ると…

バタバタとはためくスカートの内側が丸見えだった。

見てはいけないと分かっていても、ついつい…目が…


よしひろう:「(水色か…)」


僕の視線の先に目を向けるエルマ。

そこに見える物を理解したエルマが僕の耳をおもいっきりつねる。


よしひろう:「痛たたたたたた!」

よしひろう:「何するんだよ!」

エルマ:「どこを見てんのよ!!」

よしひろう:「(ギクッ)」

エルマ:「洋子の前に出なさい。」


エルマの有無を言わせない強い口調の命令に冷や汗が一筋流れる。


よしひろう:「はい…(ションボリ)」


言われるがまま洋子の前に出て飛行する僕。

途中、休憩を入れつつ移動をし、エアリスの街に着いたのは正午過ぎだった。

騎士宿舎の前に降り立つ僕等。

守衛に挨拶をする。


よしひろう:「こんちわー」

守衛:「あ!?よしひろうさん?お久しぶり!」

よしひろう:「お久しぶりです。」

よしひろう:「今日はアスター隊長に呼ばれて来ました。」

守衛:「そうでしたか。隊長なら部屋にいます。どうぞ、どうぞ。」


騎士宿舎へ入るよう促す守衛。


守衛:「今日は見慣れない方もご一緒なんですねぇ…」


と不思議そうに僕たちを値踏みするように眺める守衛。

洋子、エルマと順番に見ていき…

フリージアに視線を移したと同時にビシッと背筋を伸ばし直立不動の姿勢をとる。


守衛:「し、失礼しました!!」

よしひろう:「ん???」


僕は気にせず騎士宿舎へと入り、アスター隊長の居る部隊長室の前へと向かった。

扉をノックをするとアスター隊長の声が返ってきた。


アスター隊長:「誰か?」

よしひろう:「よしひろうです。」

アスター隊長:「入れ。」


扉を開け、中へと入る僕達四人。

久しぶりに会った隊長は笑顔で僕達を迎えてくれた。


アスター隊長:「久しぶりだな、よしひろう。」

アスター隊長:「王都での活躍は耳にしていたぞ。」


ギュッと握手をする僕と隊長。


アスター隊長:「ところで、援軍は他には何名来てくれたんだ?」

よしひろう:「えっと…この四名です…」


アスター隊長の顔色が変わった。


アスター隊長:「た、たった四名か!?…」

アスター隊長:「どう思う?」


と隊長が振り返った先にはクレハが居た。

クレハは両腕を組み、少し考える仕草をした後、「まぁ、なるようになるでしょ!」と笑顔を見せる。


よしひろう:「クレハさん、お久しぶりです。」

クレハ:「おひさー。」

よしひろう:「こんなところで何をしてるんですか?」

クレハ:「実は恩赦を頂いて、今は騎士見習いさね。」

よしひろう:「よかったですね!」


久々の再会を喜んでいるとエルマが咳払いをした。


エルマ:「懐かしいのは分かるけど、私たちの事も紹介していただけるかしら?」


よしひろう:「あー」


こちらがエアリスの街を守る守備隊の隊長のアスターさんで、隣に居るのが騎士見習いのクレハさん。

と、エルマ達に向かって紹介をした。

アスター隊長とクレハが右手の拳を左胸に当てて騎士らしい挨拶をした。

次に僕は隊長を見ながらエルマを指差して「エルマです。」と一言で説明し終えると顔面にエルマの拳が飛んで来た。

顔面を手で押さえながらその場に踞る僕。


エルマ:「もっとちゃんとした紹介の仕方があるでしょ!」


堪えきれず笑いだすアスター隊長とクレハ。


次に洋子を紹介した。


よしひろう:「こちらは清水洋子です。僕と同郷の者です。」


その華奢な体つきと服装のせいか、隊長が心配そうに一言呟いた。


アスター隊長:「戦力になるのか?」

洋子:「ヒロよりかは戦力になりますわ(笑)」


最後にフリージアを隊長の前に連れ出し、紹介した。


よしひろう:「こちらが…」


名前を言う前にアスター隊長の顔が強ばり、フリージアの前に跪く。


アスター隊長:「まさか姫殿下がお越しとは。失礼いたしました。」

ジア:「うむ。許す。」


慌ててクレハも跪いた。


ジア:「早速だがオーク討伐に向かいたい。」

アスター隊長:「姫殿下が直接剣を振るわれるのですか!?」

ジア:「無論そのつもりだ。」


アスター隊長が慌てて地図を持ってきてテーブルに広げる。

そしてオーク一団の説明を始めた。


アスター隊長:「敵の居場所はこの洞窟です。」

アスター隊長:「よしひろうなら見覚えがあると思うが、例の山賊がねぐらにしていたあの場所だ。」

よしひろう:「あー…」

アスター隊長:「敵の数は不明だ。」

アスター隊長:「洞窟の前の開けた場所に塀と櫓を造り、常時見張りが数匹いる。」

アスター隊長:「私の予想では40匹くらいはいると思う。」


このエアリスの街に常駐している騎士の数は20人に満たない。

なので大人数の援軍を隊長は期待していたのだった。


ジア:「今から直ぐに向かうぞ!」

アスター隊長:「殿下!騎士達の支度が間に合いません!!」

ジア:「構わぬ。お前とそこの女と我らとで事足りるであろう。」

アスター隊長:「!?」


顔が真っ青になるアスター隊長。


ジア:「行くぞ!!」

アスター隊長、クレハ:「ハッ!」


急いで甲冑を身に付け支度を済ませるアスター隊長とクレハ。

馬に股がり騎士宿舎を出発する。

馬の移動速度に合わせて僕と洋子はそれぞれエルマとジアを乗せ空を飛ぶ。


ジア:「エアリスに来たのは何年ぶりか…美しい場所だ。」

洋子:「深い森と大きな山、本当に美しいですね。」

よしひろう:「エルマも初めてだったけか?」

エルマ:「そうね。初めてよ。それにしても深い森だわ…」


森に入り、馬で行ける所まで馬で行き、いよいよ馬が入れなくなった所からは徒歩で森に分け入って行く。

その上空をゆっくりと飛行する僕と洋子。

そろそろオークのいる洞窟が見えて来る。

ゆっくりと地面に降り立つ僕と洋子。

50m程先に丸太で作った塀と櫓が見える。

そして櫓には二匹のオークが見張りをしていた。


息を殺して櫓を見つめる僕に洋子が近寄ってきて言った。


洋子:「装具を身に着けるわよ。」

よしひろう:「え?」


一瞬意味が分からずキョトンとしている僕を尻目に洋子が目を瞑り意識を集中した。

洋子の体を銀色の光の帯が包み込む。

具足、脛当、籠手、胴と下から順に装具を身に付けると同時に銀色の光が弾けていった。

そしてそこに現れたのは純白の装具に包まれ、右手に弓を持つ洋子だった。


ジアとアスター隊長は初めて見る和装の甲冑に見とれていた。


ジア:「なんと美しい…触ってもよいか?」


そういうと素材を確かめるように洋子の甲冑を撫で繰り回し始めるジア。


洋子:「はい、どうぞ。ヒロも早く!」

よしひろう:「そう言われても…」


前回身に付けた時は刀の力を借りてだったから、正直に言うと、発現のさせ方がサッパリ分からない。

意識を集中し、心の中で刀に語りかける。


よしひろう:「「風」よ!頼む。装具を!」


すると「風」が応えてくれた。

「真っ赤な甲冑を念じろ」と。

言われるがまま念じてみる。

炎に包まれる僕の体。

そして火花が弾けるとともに僕の体が真っ赤な甲冑に覆われていた。


よしひろう:「で、出来た!」


自分の両腕に装着された真っ赤な籠手を見ながら感動する僕。


洋子が僕の方を見て少し悔しそうにしているのが分かった。


洋子:「ヒロが赤備えだっていうことが信じられなかったけど、これで納得できたわ。」

洋子:「悔しいけど、巫女様の言ってたことは本当だったのね。」


ジアが今度は僕の甲冑に興味を引かれたみたいで、今度は僕の体を撫でてきた。


ジア:「そうだ、そうだ!この鎧だ!」

ジア:「これもまたなんと美しいことか…」

よしひろう:「ジアの鎧姿も美しいですよ。絶世の美しさです。」

僕の言葉に頷くアスター隊長とクレハ。


ジア:「絶世か…そう言われると、やはり嬉しいものだな(笑)」

ジア:「さぁ!始めるか!」


この洞窟には裏側に抜け道があるのを思い出した僕はジアとアスター隊長に申し出た。


よしひろう:「僕とエルマが裏の抜け道で逃げてきたオークを一網打尽にします。」

ジア:「うむ。」

アスター隊長:「頼んだ!」

よしひろう:「大丈夫だとは思いますが、使い魔をここに残していきます。」


よしひろう:「(レギオナ、出てきてくれ)」

レギオナ:「(御意!)」


僕の背嚢から梟が飛び出し、美しい少女の姿へと変身した。

驚くアスター隊長とクレハ。


ジア:「レギオナと申したか?」

レギオナ:「はい、フリージア様。」

ジア:「いつぞやは助けてくれたこと、心より感謝する。」


ドレスの裾を少し持ち上げ会釈で応えるレギオナ。


よしひろう:「レギオナ、ここにいる者達を守ってやってくれ。」


僕はそういうと腰に差してあったかつてレギオナが持っていた魔法のダガーをレギオナに返した。


レギオナ:「まぁ、懐かしい…よろしいので?」

よしひろう:「ああ、信頼の証だ。」

よしひろう:「(いつもありがとう)」


レギオナを抱き締める僕。

しばらくの沈黙。


よしひろう:「では、行ってきます。ご武運を。」


右手の拳を上げそれに応えるジア。

僕はエルマを抱き上げ、見張りに見つからぬよう洞窟の裏手に回る。


ジア:「洋子よ、どう攻める?」


矢筒より矢を二本取り出し、内一本をつがえた。

弓を引き絞り狙いを定める洋子。


洋子:「先手必勝でいくわ!」


そう言うと一本目の矢を放ち、すぐに二本目の矢をつがえる。


一本目の矢は櫓の塀に突き刺さった。

それを確認すると洋子は気合いを込めて叫んだ。


洋子:「ハッ!!」

「ズドォォォォォン!!!」


その瞬間、櫓の塀に刺さった矢が大爆発を起こす。


塀も櫓も見張りのオークも一瞬で消し飛んだ。

何が起きたのか理解できずに唖然として開いた口が塞がらないジアとアスターとクレハ。

洞窟の裏手に回った僕とエルマにもその爆発音と立ち上るキノコ雲が見えた。


よしひろう:「なんか、派手にやってるね…」

エルマ:「かなり…ね…」


爆発音に驚いてオークが続々と洞窟から出てくる。


ジア:「これでは敵に攻めてきた事を教えるようなものではないか!?」

洋子:「大丈夫。」


十数匹はいるであろうその群れに向かって二の矢を放つ洋子。

中間付近のオークに突き刺さる。

そして再び気合いを込めて言い放つ。


洋子:「ハッ!!」

「ズドォォォォォン!!」


洞窟から出てきた十数匹のオークが爆発に巻き込まれ四散し、絶命する。

三本目の矢をつがえる洋子。

しばらく待つが洞窟からはもうオークは出てこないようだ。

その頃、洞窟の裏手では…


よしひろう:「エルマ!二匹出てくるぞ!」

エルマ:「了解!」

エルマ:「赤き炎よ現れ出でよ。集いて舞いて火球とならん。」

エルマ:「ファイヤーボール!」

「ゴォォォォォォ!」


洞窟の裏手の抜け道を通ってきた二匹のオークは消し炭と化した。

そして、裏口を塞ぐようにゴオゴオと燃える炎のカーテン。

これでは逃げてくるオークをここで倒す計画がパーだ。


よしひろう:「これじゃ…オークもこっちに逃げたくても来れないんじゃないか?」

エルマ:「し、仕方ないでしょ!調整難しいんだから!!」

よしひろう:「通れなきゃ意味無いだろ(笑)」


その頃、洞窟の入り口側では…


洋子:「出てこないわね…」

ジア:「抜け道の方へ行ったか?」

アスター隊長:「私が入り口に近づいてみましょうか。」

ジア:「行くなら全員で行こう。」

洋子:「そうね。」


洞窟の入り口に少しずつ近づいて行く。

洋子は弓を掲げながら「槍よ!」と叫ぶ。

手に持つ弓が消え、金色の光が集まり槍へと姿を変えた。

目を丸くして興味深々な様子のジア。


ジア:「その技はどうやったら習得できるのだ?」

洋子:「これは選ばれた者のみが出来る技なので習得は無理かと思います。」

ジア:「では、ヒロもできるのか?」

洋子:「一応、できるハズなんですけどね(苦笑)」


洞窟の入り口まで来た。

中に入ろうとするアスター隊長を洋子が止める。


洋子:「待ってください。」


地面に右手のひらを当てて呟く洋子。


洋子:「サーチ…」


手を当てた地面に薄い水色の輪がポーンと広がる。


洋子:「1、2、3、、、8匹。」

洋子:「中にまだ8匹います。」

洋子:「近づいている…来ます!!」


抜刀するジアとアスターとクレハ。


ジア:「一匹だけ捕獲するわよ!いい?」

アスター隊長、クレハ:「ハッ!」


飛び出してくるオーク達に向け剣を構えた矢先に…

目にも止まらぬ早さでジアと洋子の間をすり抜け、オーク七匹を手に持つダガーの餌食にするレギオナ。

そして最後の一匹の腕を捻り上げ跪かせた。


レギオナ:「捕獲いたしました。」

ジア:「て、手際がいいな…(汗)」


レギオナ:「(主殿、全て倒しました。)」

よしひろう:「(ありがとう、レギオナ)」

よしひろう:「(できるだけ早くそちらに合流するよ。)」

レギオナ:「(御意。)」

よしひろう:「このまま放っておいて火事にでもなったらヤバイよな…」

よしひろう:「エルマ…いつになったらこの炎は消えるんだ?」

エルマ:「私に聞かないでよ!!もう少ししたら消えるわよ!!たぶん…」


待つこと数分、やっとファイヤーボールの炎が消えた。

エルマを抱き上げジア達のいる洞窟入り口へと飛行し、合流する。

見るとレギオナが一匹のオークを捕まえていて喉元にダガーを押し当てていた。

そしてその回りをジア、アスター隊長、クレハ、洋子が囲んでいる。


よしひろう:「え?捕まえたの?」

ジア:「ああ、聞きたいことがあったのでな。」


ジアがオークに話しかける。


ジア:「何故ここに来た?」

オーク:「グェグェグェ」


気色の悪い笑い声を上げつつ質問に応えるオーク。


オーク:「我らはおまえたちにとっての死への前触れだ。」

ジア:「死への前触れだと?どういう意味だ?」

オーク:「じきに御方の軍勢がやって来る。」

オーク:「そうなればおまえ達はみな殺しだ。グェグェグェ」

ジア:「御方というのは何者だ?」

オーク:「御方とは偉大なるお方のことだ。」

ジア:「魔族か?魔神か?」

オーク:「じきに分かる。グェグェグェ」

ジア:「おまえ達はどこから来た?」

オーク:「この森の遥か西からだ。」

ジア:「遥か西だと!?」

オーク:「そうだ。ずっと、ずっと西から来た。」

オーク:「これ以上話す事は何も無い…」

オーク:「さぁ、俺を殺すがいい。」


ニターと笑うオーク。

レギオナがジアの顔を見つめる。

ジアは黙って頷いた。

何を成すべきか理解したレギオナはオークの心臓にダガーを突き立てた。

絶命し、その場に倒れ込むオーク。

難しい顔をして考え込むジア。


アスター隊長:「姫殿下、これはいったいどういうことでしょうか?」

ジア:「王都に戻り急ぎ軍を編成せねばならないようだな。」

ジア:「洋子の力も借りたいが…どうだろうか?」

洋子:「わ、私ですか!?」


自分の顔を指して慌てたように聞き返す洋子。


洋子:「常にという訳にはいきませんが、できるだけ加勢したいと思います。」

ジア:「それはありがたい。」

ジア:「王都の騎士が約500名、魔道師約300名、街で兵を募れば5000名は集まるだろう。」

ジア:「問題はそれで足りるかどうかだ…」

ジア:「やはりヒロとエルマ、洋子の助力にかかっているな…」

アスター隊長:「エアリスの街が最前線になるのでしょうか?」

ジア:「ああ、そうなるかもしれない。」

アスター隊長:「民の避難も必要ですね。」

ジア:「うむ。そうだな…」

ジア:「だが率直に言うと、戦える者には皆戦って欲しいところだ。」

洋子:「ヒロがもっと成長する必要があるわね。」

ジア:「そうだな…敵の首領さえ打ち倒せれば勝機は…え!?ヒロの成長だと!!?。」


急に考え込み無言になるジアとアスター。


ジア:「……」

アスター隊長:「……」


暫くの沈黙の後、顔を見合わせる二人。


ジア:「もしかして、同じ事を考えていないか?」

アスター隊長:「私もそう感じました…」


アスターの言葉にニヤリとするジア。

ジアと目が合う僕。

ジアが人差し指をクイクイと動かし、僕に近くに来いという仕草をした。


よしひろう:「何でしょうか?」

ジア:「ここだけの話だが…」

よしひろう:「はい?」

ジア:「洋子とヒロと例の使い魔、後はエルマ。」

ジア:「この四人で何とかできないか?」

よしひろう:「へ?!何をですか!?」

アスター隊長:「西から来ると言っていたの死の前触れの本体の件だ。」

よしひろう:「えぇぇぇぇ!?」

よしひろう:「そんな力、ありませんよ?僕。」


僕の肩に腕を回し顔を近付けけながら話を続けるジア。


ジア:「無いなら鍛えればいい。」

よしひろう:「へ?」

ジア:「さっそく明日から特訓だ!」

よしひろう:「え?」

ジア:「私が直に稽古をつけてやる(笑)」

よしひろう:「えええ?」

ジア:「さぁ!帰ろう!!王都へ!」


来た時と同じように僕がエルマを背負い、洋子がジアを背負った。

レギオナは雑嚢に収まった。


よしひろう:「アスター隊長、ここでお別れです!」

アスター隊長:「また会おう!」

クレハ:「またねっ」


別れの挨拶を終え、大空へと舞い上がる僕と洋子。

一路王都へと向かって飛行する。

暫く飛行を続け、ふと洋子の方を見るとジアが幸せそうな顔をして洋子の背中に体を預けてピースカと涎を垂らしながら寝ていた。


よしひろう:「あー…スイッチが切れちゃったか…」


その様子を見ていたエルマも「ウフフ」と笑みを浮かべる。

帰路は休憩無しで進む。

おかげで二時間弱で王都へ着くことができた。

エリーの部屋のテラスに到着するとエリー達が部屋から出てきて僕らを迎えてくれた。


エリー:「お帰りなさい。」

エナ:「おかー。思ったより早かったじゃない。」


フリージア付きの召し使いが慌てて洋子の所に駆け寄ってジアの体を受け止めた。

ようやく目を覚ますジア。


ジア:「ふぇ~、重いよ~。」


覚醒していないフリージアにはこの重装甲の甲冑と大剣は重すぎるようだ。

そんなジアを軽々と背負って一礼して退室するジアの召し使い。


よしひろう:「あの召し使い、すげーな…」

洋子:「背中が涎でベトベトだわ(苦笑)」

よしひろい:「まぁまぁ(笑)」

よしひろう:「じゃ、俺達も帰るか?」

エルマ:「そうね。」


エリーとエナに別れを告げ屋敷へと戻る。

屋敷の玄関には現世の巫女(うつしよのみこ)様が洋子の帰りを待っていた。


現世の巫女:「どうだった?」

洋子:「この世界、気に入ったわ!」

よしひろう:「今度は僕が洋子の世界に遊びに行くよ。」

洋子:「却下。来たら殺すわよ!」

エルマ:「ウフフ」

よしひろう:「なんでそうなるんだよ…(苦笑)」

よしひろう:「助けには来てくれるんだろ?」

洋子:「考えておくわ(笑)」

洋子:「次に合う時までに強くなってなさいよ?」

エルマ:「明日から特訓ね(笑)」

よしひろう:「ふぇ~い」

エルマ:「しっかりなさい!」


と、僕の脇腹を肘で小突くエルマ。


洋子:「あはは」

現世の巫女:「それじゃ、帰るわよ?洋子ちゃん。」

洋子:「はい。またね、ヒロ!エルマ!」

エルマ:「またね。」

よしひろう:「じゃあな!」


お互い手を降って別れる僕達。

屋敷の自室のベッドに横になる。

雑嚢からレギオナが出てきた。

少女の姿になり、僕を膝枕してくれる。


レギオナ:「今日も色々あったわね(笑)」

よしひろう:「レギオナもお疲れ様…」


疲れているせいか、意識が急速に遠退いていく。


よしひろう:「レギオナ…ありがとう……」


目が覚めた。

枕元に置いてあるスマートフォンのアラームが鳴っていた。

慌ててアラームを止める僕。

朝の七時。

仕事に行く支度をしなきゃ…

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