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続・夢の中だけ勇者さま?  作者: 菅原よしひろう
夢から夢へ
17/34

僕は夢を見た(73) 洋子、再び

エリーから借りている屋敷の自室のベッドの上で目覚める僕。

ボーッとする頭を横に振りながら身支度をする。

見違えるように格好良くなった刀「風」を腰に差し、姿見を見ながら自身の中二病的な感性をくすぐる格好の良さにご満悦になる。

そうしていると、玄関のドアノッカーを叩く音がした。


よしひろう:「今日はえらく早いな、エルマ。」


と呟きながら玄関へと向かう僕。

「おはよう」と言いながらドアを開けると、そこにはスーツ姿の女性と、セーラー服の女性が二人立っていた。


よしひろう:「えーっと…え!?」

よしひろう:「現世(うつしよ)の巫女様!?」


「ふふっ」と、にっこりと笑う現世の巫女。


現世の巫女:「急にお邪魔してごめんなさいね。」


そして現世の巫女の横に目をやると、そこにいるのは以前夢の中で合ったことがある少女だった。


よしひろう:「確か…清水洋子さん?」

洋子:「おはよう。よしひろうさん。」

洋子:「私のことは「洋子」と呼んで構わないわ。」

よしひろう:「あー、はい。おはよう、洋子。」

洋子:「巫女様から聞いたけど、あれから随分成長したそうじゃない?」


そう言われてもピンとこずに返答に困ってしまう。


よしひろう:「巫女様はどこまでご存知なんですか?」

現世の巫女:「全部、かな?(笑)」

現世の巫女:「まさか君が赤備えの武者だとは思わなかったわ。」

よしひろう:「そこまで知っているのですか…」

よしひろう:「でも、あれは僕自身の力ではなく、刀が力を貸してくれたおかげなんですよ?」

現世の巫女:「刀は力を引き出すためのきっかけにすぎないわ。」

現世の巫女:「あの赤備えの武者になる力は君自身の持つ力よ?」


洋子が少しムッとした様子で話に割って入ってきた。


洋子:「あー!もう!!ムカつくわ!」

洋子:「なんであんたみたいなのがよりによって赤備えなのよ!!」


洋子の怒る理由が分からずに困惑してしまう。

洋子や巫女様の言う「赤備え」にどんな意味があるというのだろう?


よしひろう:「巫女様?赤備えってどういう意味なんですか?」


巫女様が少し考えるような素振りをした。

何と言えばいいのか少し迷っているようだ。


現世の巫女:「そうねぇ…選ばれし者、七人の中で最強と言えば分かりやすいかしら。」

現世の巫女:「選ばれし者の装具には三種類あるの。白備え、黒備え、そして君の赤備え。」

現世の巫女:「赤備えを中心に白備え、黒備えが数人という武装集団になるの。」

現世の巫女:「白備えは主に遠距離攻撃。黒備えは近距離攻撃が得意と言われているわ。」

現世の巫女:「赤備えはその両方を得意とする最強の存在。白と黒を束ねる中心的存在なの。」


いきなりそんな事を言われても、面倒事が大の苦手な僕には荷が重すぎる。


よしひろう:「マジですか!?」


現世の巫女:「マ・ジ・よ(笑)」

洋子:「ほんと、なんでこんなヤツが!」


そんな話をしていると、隣家からエルマがやって来た。


エルマ:「おはよう、ヒロ。お客さん?」

よしひろう:「うん。おはよう。」

よしひろう:「僕と同郷の知り合い。」

よしひろう:「こちらが現世(うつしよ)の巫女様。」

よしひろう:「で、こちらが清水洋子さん。」

エルマ:「私、エルマと申します。よろしくお願いします。」

現世の巫女:「現世の巫女です。よろしくお見知りおきを。」

洋子:「清水洋子です。こちらこそ、よろしくお願いします。」


洋子が小声で話しかけてきた。


洋子:「(すんごい美少女じゃない。どういう関係?)」

よしひろう:「(冒険者仲間というか、パートナーとうか…)」

洋子:「(へぇー)」


と意味深な笑顔を浮かべる洋子。


洋子:「よしひろうは「ヒロ」って呼ばれてるんだ。じゃ、私もヒロって呼ぶことにするわ。いいでしょ?」

よしひろう:「うん。どうぞ、どうぞ。」


エルマが好奇な目で洋子と現世に巫女を見る。


エルマ:「ヒロと同郷って事は、皆さんも勇者ってことですか?」

現世の巫女:「私は違うけど、こちらの洋子ちゃんは勇者かもよ?(笑)」

洋子:「勇者って呼ばれるとくすぐったいけど、一応、力はあるわ。」

エルマ:「凄い!見てみたいわ、その力を!」

よしひろう:「その話はまた後にするとして、朝食のお誘いじゃなかったのか?」


思い出したように慌てて朝食に誘うエルマ。


エルマ:「そうそう!皆さんも朝食を食べていきませんか?」

現世の巫女:「私は遠慮しておくわ。」

洋子:「私は頂こうかしら。」

現世の巫女:「洋子ちゃん、私はここで待ってるから、話が終わったらここに戻ってきてね?」

洋子:「はい。ありがとうございます。」


僕は洋子を伴い、エルマの家に向かう。

朝食を終えるとエルマが話を切り出した。


エルマ:「ヒロ?」

よしひろう:「ん?」

エルマ:「今からエリーの所に連れていって欲しいの。」

よしひろう:「いいよ。でも洋子は?」

洋子:「そのエリーさんの所ってどんな所?」

よしひろう:「僕のこの世界の皇女様の所。」

洋子:「うげ!?そんな高貴な所へ私なんかが付いて行ったら迷惑でしょ?」

エルマ:「そんな事はないわ!是非一緒に来てくれませんか?」


そう言われ、頭を掻きながら渋々承諾する洋子。

身支度を終え、いつもの薄黄色いドレス姿で現れたエルマを見て感嘆のため息をつく洋子。


洋子:「綺麗~!!すごく綺麗!!」


照れ笑いをするエルマ。


洋子:「ねぇねぇ!皇女様と会うのに、私、こんな格好でいいのかしら?」


洋子の姿は上がセーラー服で下はミニスカート姿だった。

どうやら洋子の通う学校の制服らしい。


エルマ:「とても素敵な衣装だと思います。可愛いですよ、とっても!」

エルマ:「それに異邦人ですし、何の問題もありませんわ。」

エルマ:「ヒロなんてもっと酷い格好で謁見してましたし(笑)」


そう言われ、苦笑いするしかない僕。


よしひろう:「それじゃ、行こうか?」


外に出てエルマを抱き上げ、お姫様抱っこをする僕。


よしひろう:「洋子?飛べるよね?」

洋子:「当然でしょ!」

よしひろう:「飛翔!」


エルマと共に空へと舞い上がる僕。

その後に続き空へと舞い上がる洋子。

三人はエリーの待つ王城の門の前に降り立った。

衛兵と話をし、エリーと会えるよう取り計らってもらう。

そしてエリーの部屋の前の待合室に通される。

そこには警護としてセナが控えていた。

セナに軽く手を振る僕。

セナは見慣れない服装の洋子に気が付き歩み寄ってきた。

そして話しかける。


セナ:「私はセナ。皇女様の警護をしている者です。あなたは?」

洋子:「私は清水洋子と申します。ヒロと同郷の者です。」

セナ:「洋子さんですね。それにしても、その衣装、とても可愛らしいですね。」


目を輝かせマジマジと洋子の制服を見るセナ。

エリーの部屋の扉が開き、エリーが現れた。


エリー:「ヒロ、エルマ、おはよう。」


そう言うと僕の胸に飛び込んできて顔を胸に埋めるエリー。


よしひろう:「おはよう、エリー。」

エルマ:「おはようございます。」


洋子は跪き挨拶をした。


洋子:「お、おはようご、ございます。姫様。」


エリー:「ん?この美しい女性はどちら様かの?」

洋子:「よ、よしひろうと同郷の者で、清水洋子と申します。」


かなり緊張した様子の洋子。

その返答にエリーも驚いた様子だった。


エリー:「な!?なんと!?ヒロと同郷とな!!?」


少し頬っぺたを膨らませ、睨むように僕に質問を投げ掛けるエリー。


エリー:「どういう関係じゃ?」

よしひろう:「どうと言われましても…顔見知り程度の関係ですが…」

エリー:「うむ。そうか。それなら良い。」


僕の返答にすぐさま機嫌を直すエリー。


エリー:「ささ、皆、中へ。」


エリーに促され部屋へと通される僕とエルマと洋子。

エリー付きの召し使いがテーブルの椅子を引き、ここへ座るようにと目で合図をしてくれる。

テーブルの上には紅茶とお菓子が置かれていて、和やかな雰囲気でお茶会が始まった。

話題は自然と洋子の事に集中する。


エリー:「私はエリザベートです。このアークランド王国の第三皇女です。」

エリー:「洋子さん?私の事はエリーとお呼びくださいね。」

洋子:「はい。ありがとうございます。エリー。」

エリー:「それにしても…ヒロの回りには美しい女子ばかりじゃのう…」


眉を潜めるエリー。


エリー:「洋子はヒロと同郷と言ったが、その衣装はヒロの郷では普通なのか?」

洋子:「え?はい、皆このような格好をしていますが…」

エリー:「なんと!?そ、その、なんというか…下着が見えそうなその格好が普通とな!?」

洋子:「え、ええ。」


「うーむ」と考え込むエリー。


エリー:「エルマ?」

エルマ:「はい?」

エリー:「我らも洋子の衣装を見習った方が良いのではないか?」

エルマ:「えぇ!?い、いや、そこはもう少し考えた方が良いかと…」

エリー:「何故だろうか、負けている気がするのじゃ。」

エルマ:「そこは勝たなくても良いかと…(苦笑)」


洋子の噂を聞き付けたエナとジアがエリーの部屋に現れた。


エナ:「おっはよう!皆の衆!!」

ジア:「お、おはようございます…(モジモジ)」

エリー:「おはようございます。姉様。」


エナが洋子の真後ろに立ち、洋子の肩を揉みながら言った。


エナ:「あなたがヒロと同郷の勇者様ね?」

洋子:「え?あ?はい。清水洋子と申します。」


エナが屈託のない笑顔を見せながら洋子に自己紹介をする。


エナ:「私はこの国の第二皇女のエカテリーナ。エナって呼んでね。」

エナ:「で、こっちが第一皇女、私のお姉様のフリージア。」

エナ:「ジアって呼んであげて。」

ジア:「フリージアです…(モジモジ)」


モジモジしながら会釈をするフリージア。


エナ:「ねー?ねー?貴女も空を飛べたり、大爆発を起こしたりできるの?」

洋子:「は、はい!で、できます。」

エナ:「それにしても、その際どい衣装、恐れ入ったわ!」

洋子:「わ、私の世界ではこれが普通なんです…」


スカートの裾を押さえながら少し恥ずかし気に答える洋子。


エナ:「凄いわねぇ…で、ヒロとはどういう関係?」


その質問をした瞬間、自由に会話していた周囲が静まり返った。

皆がその質問にどう答えるのか気にしている。

洋子:「え?えっと…じょ、上司でしょうか?」

皆:「上司!!!!?」


僕もその答えには驚いた。

上司っていったいどういうことなんだ?

僕の赤備えの装束の事から言えば、確かに上司というのも頷けるが、そんな事は周囲の者は一切知らないから、意味が分からなくて当然だと思う。


エリー:「部下と呼べるのはレギオナだけかと思いきや…」

エルマ:「こんな美人さんが部下とは!?」

エナ:「エロい事とか命令されてない!?」

ジア:「あわわわ…(モジモジ)」

よしひろう:「してません!!!」


そこへ突然、セナが入って来た。


セナ:「ご歓談中申し訳ございません!」

エリー:「どうしたのじゃ?」


エリーの前に跪くセナ。


セナ:「ハッ。たった今、エアリスのアスターより書状が届きまして。」

エリー:「うむ。」

セナ:「エアリスの山中にてオークの群れが砦を築いたそうです。」

エリー:「ふむふむ…えぇ!?」

セナ:「討伐を行いたいが故、よしひろう殿と騎士十数名を派遣して頂きたいとの事です。」

エリー:「なんと!?で、父様には?」

セナ:「はい、既にお伝えしており、只今、騎士隊の準備をしておられます!」

セナ:「よしひろう殿、エルマ様もご支度をお願いします。」


あまりに急な話で騒然となるお茶会。

その話を聞き「フフッ」と不適な笑みを浮かべる洋子。

やっと自分の出番が来たなという感じで席を立ちセナに向かって胸を張って申し出る。


洋子:「セナさん、騎士隊は不要です。」

セナ:「え!?」

洋子:「そのオークの群れ、私とヒロとで討伐してみせましょう。」

よしひろう:「はぁ!?」


何勝手な事言ってんだよ!と思わずツッコミを入れそうになる僕を遮り、ジアが覚醒した。


ジア:「なんと!?新たな勇者の活躍が見れるとは!!」

ジア:「我も一緒に行くぞ!!」

皆:「えぇぇぇ!?」


召し使いが必死に止めるも聞く耳を持たないジア。

ジア様のこのいつスイッチが入るか分からない性格には困ってしまう。

こうなったら意地でも付いてくるんだろうな…とため息をひとつ。

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