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続・夢の中だけ勇者さま?  作者: 菅原よしひろう
王都攻防戦
14/34

僕は夢を見た(70) その尊き命を

無事に王都を囲む怪物達を一掃し、再び平和が訪れた。

僕は王都中心の王城の尖塔にいるエルマとレギオナを迎えるために空を飛ぶ。

尖塔に舞い降りると、エルマとレギオナが嬉しさのあまり抱きついてきた。

僕達三人は抱き合いながらしばらくはしゃいでいた。


エルマ:「どおだった?私の防御魔法?(笑)」

よしひろう:「凄かった!プロテクションとは違う魔法なんだろ?」

エルマ:「そうよ、上位魔法なの。」

よしひろう:「僕の爆砕陣が完全に防がれてたもんな…」

エルマ:「残念ながら「完全に」ではなかったけどね。一部防ぎきれなかった。」

エルマ:「さすがヒロね。」

レギオナ:「はい。さすがは我が主殿です。」

レギオナ:「あの炎でこの身を焦がして欲しいですわ。」


そう言って身を捩るレギオナを放置して謁見の間に向かうエルマと僕。

慌てて付き従うレギオナ。

謁見の間に着くと、内務大臣のマーモット卿が感極まって涙目、鼻水で出迎えてくれた。


マーモット卿:「勇者殿、先程の無礼を許して欲しい!」

マーモット卿:「エルマ殿も許して欲しい。申し訳なかった。」

マーモット卿:「そして王都を救って頂き心より感謝申し上げる。」


そして陛下の下へ行くよう手で仕草をした。

陛下の前で跪く僕とエルマとレギオナ。


陛下:「苦しゅう無い。表を上げよ。」

陛下:「そなた達には二度も救われた。」

陛下:「何度礼を言っても言い足りぬくらいじゃ。」

陛下:「何か褒美をとらせたいが、希望は有るか?」


エルマ:「勿体なきお言葉。そのお言葉だけで十分でございます。」

陛下:「よしひろう殿、何か無いか?」

よしひろう:「私もその言葉だけで十分でございます。」


僕がそう言うと、王妃のフローラ様が陛下の耳元で何か囁いた。


陛下:「おお!そうか、そうか…」


そう言って大きく頷きながら笑顔を見せる。


陛下:「我が娘達でよければいつでも言ってくれ。すぐに嫁がせるぞ(笑)」


ジア、エナ、エリー:「えぇぇ!?」


顔を真っ赤にしながらお互いを見合う三人の皇女達。


よしひろう:「えぇ!??」


急な話に僕も動転する。

そして何故かエルマも動転していた。


エルマ:「えぇぇぇ!!!?」


しばらくの沈黙の後、その場が笑い声に変わった。


よしひろう:「またまた、冗談でしょ?(笑)」

エリー:「やはりのう、父上様も冗談が過ぎるのじゃ(笑)」

エルマ:「あービックリした(笑)」

フローラ:「まさか、本気よ?(笑)」


絶句。


すると、その場にレンジャーが二人現れた。

紐でグルグル巻きにされ、猿ぐつわをされたローブを着た男を引き連れて。


レンジャー:「陛下、この者が此度の騒動の犯人の一味でございます。」


陛下の目が厳しい物になる。


レンジャー:「地下水道で何やら召喚術を行っていました。」

陛下:「何をしてでも構わぬ。吐かせるのだ!よいな?」

レンジャー:「ハッ!」


レンジャーがそのローブを着た男を連れて行こうとした瞬間。


ローブを着た男:「ガハッ!」


ローブを着た男が口から血を吐いた。


レンジャー:「何!?」


レンジャーすら反応できないスピードでローブを着た男の腹にナイフを突き刺した男がいた。


男:「へへっ。つまらねーことゲロされたんじゃこっちが困るからよ(笑)」


僕はその男に見覚えがあった。


よしひろう:「サザーランド!」

サザーランド:「覚えていてくれたとは、嬉しいねぇ、勇者さまよ!」

よしひろう:「どうして?あの時、爆砕陣で倒したハズじゃ…」

サザーランド:「このナイフは魔法を切り裂くことができるんだ。」

サザーランド:「あの時はほんと間一髪ってヤツさ(笑)」


レンジャーが剣に手を掛けた瞬間、サザーランドが再び動く。

疾風のごとく目にも止まらぬ早さでレンジャーを振りきり、僕目掛けて突進してきた。

刀に手を掛けるが間に合わない!


よしひろう:「くそっ!!!!」


僕にナイフが突き刺さる瞬間!!

エルマが僕の体に体当たりをした!!

「グッ!!!」

小さく呻き声を上げるエルマ。

サザーランドは瞬間的に体を引き間合いを

取り直す。


サザーランド:「チッ!メス豚が!!邪魔しくさって!!!」


倒れた僕の上にエルマが倒れ込んでくる。

慌てて抱き止める僕。

見るとエルマの左胸から血が滲んでどんどん広がっていくのが分かる。

エルマが僕の身代わりになってくれたのだ。


よしひろう:「エルマ!!」

エルマ:「ヒロ?…無事?」

よしひろう:「ああ!エルマのおかげで無事だ!!」

エルマ:「よかっ…た…」


エルマが左手を僕の頬に当てる。

その手にも血がベッタリと付いていた。

エルマの左手に手を重ね、エルマをしっかりと抱き締める。


よしひろう:「大丈夫だ。しっかりしろ!!エルマ!!!」

エルマ:「ヒ…ロ…」


エルマの手から力が抜けダラリと僕の頬からすり抜けた…


よしひろう:「エルマ!エルマ!?」


エルマの命が尽きた事は理解できた。

が、納得が出来なかった。

目から涙がこぼれ落ちてくる。

さっきまで一緒に笑ってた仲間が、大切な人が一瞬で目の前から消えて失くなるという無常感。

悲しみと怒りとがゴチャゴチャになり自身の感情がコントロールできなくなっていた。

その頃レンジャーがサザーランドを切り伏せようとするが、あまりのスピードの早さに手が出せないでいた。


よしひろう:「何故だ!?」

サザーランド:「お前が気にくわないからだよ(唾棄)」

よしひろう:「何故エルマを刺した!?」

サザーランド:「お前が泣くところを見たかっただけだしー(笑)」

サザーランド:「それに、ここにいる全員皆殺すしな!(笑)」

サザーランド:「アヒャヒャヒャヒャ」

よしひろう:「ぶっ殺す!!!」

よしひろう:「なぶり殺す!!!」

よしひろう:「うぉぉぉぉぉ!!!!!」


怒りと悲しみが頂点に達しようとしたその時…


「セーフティモード発動…」


抑揚の無い声が僕の内から聞こえた。

次の瞬間、目の前が真っ暗になる。

突然ブレーカーが落ちたような感じ。

肉体と精神とが離れたような感覚。

体を動かそうとするのだけれど、動かない。

目を開けようとするが開かない。

真っ暗な空間を魂だけがさまよっているような感覚。


よしひろう:「何故だ!?」

よしひろう:「俺はアイツを殺さないといけないんだ!!」

よしひろう:「敵を討たなきゃならないんだよ!!」

よしひろう:「どうして真っ暗なんだよ!!」

よしひろう:「うわぁぁぁぁ!!!(涙)」


目が覚めた…

興奮していたせいか動悸が早かった。

涙が止めどなく溢れてくる。

そして何故か右手の掌と左肩がジリジリと痛かった。


あまりのショックに今日は仕事を休んでしまう。

夢の中の事なのに…たかが夢のはずじゃ…

次の夢を見るのがとても怖かった。

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