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続・夢の中だけ勇者さま?  作者: 菅原よしひろう
王都攻防戦
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僕は夢を見た(69) 王都攻防戦

王都南門の外郭で目覚める僕。

雨はまだ少し降っていた。

風上の方を見ると雲の合間から青空が見える。

もう少しで雨が止みそうだ。


レギオナ:「(主殿、お戻りになられたようで。)」

よしひろう:「(あー…ただいま。)」

よしひろう:「(僕がいない間に何か変わった事はあった?)」

レギオナ:「(態勢に変わりはありませんが…)」

レギオナ:「(エルマ様が酷くお怒りです。)」

レギオナ:「(今すぐに西門まで来いと仰ってますが…)」

よしひろう:「(い、今すぐ行くと伝えてください…)」

よしひろう:「(それから、ごめんなさいと。)」

レギオナ:「(御意。)」


僕は急いで飛び上がり西門へと目指す。

西門の上空にたどり着くと、レギオナが手を振って合図をしてくれた。

レギオナを目印に舞い降りる。


よしひろう:「レギオナ、お待たせ。」


すると背後から僕を呼ぶ恐ろしげな声がした。


エルマ:「ヒ~~ロ~~」


その声に思わず直立不動の姿勢を取る僕。


よしひろう:「は!はい!」


僕の両肩に両掌を乗せギューっと力を込めるエルマ。

グイと僕の体を180度反転させて僕を睨み付ける。

その目の下には疲労からか隈ができていた。


エルマ:「貴様~、どこをほっつき歩いてた~?」

よしひろう:「ご、ごめんなさい!」


ここはもう平謝りするしかない。

僕のその哀れな姿を見てがっくりと肩を落とし頭を下げるエルマ。


エルマ:「はぁ(ため息)…この話はもういいわ…」

エルマ:「これから私を連れて城まで行きなさい。」

よしひろう:「はひ!(少し噛んじゃった。)」

エルマ:「ロイ!後は頼んだわよ!!」

ロイ:「ああ!任せてくれ!」


エルマをお姫様抱っこし陛下の待つ王城へと飛翔する。

僕の後を梟の姿に変身したレギオナが続く。

王城の入り口に降り立ち、陛下のいる謁見の間へと入る。


陛下:「おお!待ちかねたぞ!」

陛下:「戦況はどうだ?」

エルマ:「厳しゅうございます。」

エルマ:「このままではもって二日が限界かと…」


エルマの言った「二日」という言葉に周囲からどよめきが起きる。

陛下の隣にいた小太りの男が口を開いた。


小太りの男:「なんと!?二日しかもたぬのか!!?」

エルマ:「こちらの方は?」

陛下:「内務大臣の「マーモット卿」だ。」

マーモット卿:「これからどうするつもりだ!?」


エルマに噛みつかんばかりに声を張り上げるマーモット卿。


エルマ:「僭越ながら、私に策がありあす。」

エルマ:「お聞きくださいますか?」

陛下:「うむ。申してみよ。」

エルマ:「ハッ!」


エルマがエリー付きの召し使いに頼んでテーブルの上に王都の地図を広げさせた。

エルマが指を指しながら説明を始める。


エルマ:「このように王都全域に魔法使いを配置し、プロテクションの魔法を巡らします。」

エルマ:「そして街全体を防御した上で、よしひろうの爆砕陣の魔法で街を含めた怪物達の居る範囲全てを粉砕するのです。」


周囲から「おぉ」というどよめきが起きた。


よしひろう:「え!?俺が!?するの!!?」


内務大臣が血相を変えて反対する。


マーモット卿:「馬鹿な!住民の命を危険に晒すのか!?」

マーモット卿:「しかも、このようなどこの馬の骨かも分からぬ若造に全てを託すなどと!」

ジア:「あの…(モジモジ)」

エルマ:「ヒロは勇者ですよ!」

マーモット卿:「何が勇者だ!それにエルマとやら!お前の噂は兼がね聞いておるぞ!」

マーモット卿:「スーパーノヴァとか破壊神とか疫病神とか言われとるらしいじゃないか!」

ジア:「あのぉ…(モジモジ)」

エルマ:「私の事は好きに呼んでもらって構いません。が、ヒロに向かってどこの馬の骨とか!撤回してください!!」

マーモット卿:「誰が撤回するか!!だいたいここに住む者の許可をどう取る?」

マーモット卿:「陛下を含む王家一族の命を危険に晒すのか!?ええ!?」

フリージアの目が段々と据わってくる。

そして…


ジア:「黙れぇぇぇぇ!!!」


フリージアがマーモット卿の胸ぐらを掴んで叫んだ。


ジア:「貴様に代案はあるのか?!」

マーモット卿:「フ、フリージア様!?…いえ…その…」


マーモット卿は萎縮し目が泳いでいる。


ジア:「エルマ!ヒロ!すぐに取りかかれ!!」

ジア:「我々の命、そなたたちに託そうではないか!」

ジア:「良いですね?父上?!」

陛下:「は、はい…」


あまりの凄みに陛下も萎縮しているようだ。

僕を置いてけ堀にして話が進んでいく。

エリーが僕の元に駆け寄って来て僕の体を抱き締めた。


エリー:「私たちの全てを託します。」

エリー:「死んだら化けて出てやるのじゃ(苦笑)」


悪戯っ子のようにちょっとだけ舌を出すエリー。

これから自分の身に起きる事を薄々感ずいているからだろうか…

そう言うエリーの瞳に薄っすらと涙が滲んでいた。

この愛らしい姫様の言葉に俄然やる気が湧いて来る。

僕の事を勇者だと信じてくれる皆のためにも自分の出来る事を頑張ろう。


よしひろう:「大丈夫、誰も死にませんよ!」


というか、ここまで話が進んでしまうと「出来ません」などと言えるはずがない。


エルマ:「行くわよ、ヒロ!」

よしひろう:「ああ!」


エルマを背中に乗せ、各門を守っている魔法使い達に作戦を伝えて行く。

決行時間は一時間後の正午丁度。

その時間に間に合うよう、魔法使い達が自分の持ち場へと分散して移動していく。

チャンスは一度っきり。

僕自身、本当は自信が無い。

これほどの巨大な爆砕陣を放った事がないからだ。

放てるのだろうか?

一度っきりという言葉が肩に重くのし掛かってくる。

各魔法使い部隊への通達が終わると、エルマを街の中心にある王城の尖塔へと連れていく。


エルマ:「ここで私が王都全体を守る防御魔法を張るわ!」

エルマ:「それから…タイミングを合わせないといけないわね。どうする?」

よしひろう:「それならここにレギオナを置いていくよ。」

よしひろう:「レギオナ、僕が爆砕陣を放つその時をエルマに教えてやってくれ。」

レギオナ:「御意。」


エルマと拳を合わせる僕。


よしひろう:「お互い全力でいこうぜ!」

エルマ:「私の防御魔法は強力よ(笑)」


お互いを見つめ合う二人。

うんと頷き僕は王都の上空高くへと舞い上がる。


2000mくらいは上昇しただろうか。

眼下に小さく王都が見える。

刀を抜き、横にして両手で持つ。

もうすぐ正午だ。

王都を見ると、街のいたるところでプロテクションの魔法が張られ、虹色のシャボン玉の泡のように光っていた。

僕も遅れまじと王都中心に狙いを定めて気を練る。

赤い点が現れ、水面に滴が落ちたようにパーンとその円が広がって行く。

爆砕陣の魔方陣だ。

もう少し広く、もう少し広く。

意識を集中しつつ、気持ちを高めすぎて目が覚めないよう注意しながら攻撃範囲を徐々に広げていく。

なんとか怪物達のいる範囲をカバー出来るくらいまで攻撃範囲を広げる事ができた。


よしひろう:「やばい…これ以上だと目が覚める!!」

よしひろう:「(レギオナ!聞こえるか!)」

レギオナ:「(はい、主殿。)」


正午の鐘が鳴り響く。


よしひろう:「(行くぞ!)」


その頃、エルマは。


レギオナ:「エルマ様、来ます!」

エルマ:「承知!!!」


エルマが防御魔法の詠唱を始める。


エルマ:「我が周囲に有りき虚ろなる空間よ…」

エルマ:「集いて鉄壁なる障壁とならん。」

エルマ:「その堅固なること鋼竜の如き。」


街を覆い尽くすほどの巨大な虹色の竜の翼がエルマの持つ魔法の杖から現れた。


エルマ:「顕現せしは鋼の翼、我を守る盾となれ!」


その魔法で生み出された巨大な翼が閉じるかの如くエルマを中心に円形に街を包み込んでいく。

王都全体が虹色の光に包まれた。

虹色に輝く空を不安げに眺める3人の皇女達。

僕は刀を大きく振り上げる。

そして渾身の一撃を王都目掛けて解き放った!


よしひろう:「行くぞぉぉぉぉ!エルマァァァァ!!!!」

よしひろう:「爆・砕・陣!!甲!!!」


上空を見上げるエルマの目によしひろうが放つ一撃がキラリと光って見えた。


エルマ:「(来る!)」

エルマ:「ガーディアンドラグーン!!!」


防御魔法の虹色の光がさらに強く輝き始めた。

そして虹色に包まれた街の中心部から外側に向けて爆砕陣の炎の渦が広がって行く。

虹色の防御魔法に弾かれてギンギンという金属音のような音を鳴らしながら広がる爆炎。

王都の外郭を越え、防御魔法の掛かっていない所へ到達し、そこにいる怪物達を飲み込んでいく。

炎と衝撃波とで粉々になっていく怪物達。


よしひろう:「うぉぉぉぉぉ!!!!」

エルマ:「うぉぉぉぉぉ!!!」


「ゴォォォォォ!!!」

爆炎に包まれる王都。

「ピシッ!!パリン!!!」

虹色の防御魔法の一部に亀裂が入り砕け散った。


エルマ:「クッ!!!」


しかし、その内側に張っているプロテクションのおかげで辛うじて街への被害は防いがれていた。

その砕けた内側を守るのはロイ。

プロテクションを必死に維持する。


ロイ:「うぉぉぉ!守ってみせる!!!」


ロイの放つプロテクションの虹色の光が増していく。

防御魔法と爆砕陣とが激しい轟音と共にせめぎ合い、ギンギンという金属音が街中に鳴り響く。

その音の恐ろしさに耳を塞いでじっと耐える住民達。

今までに見たこともない光景、聞いたこともない音…

不安からか皇女達も王妃にすがるように抱きついていた。

そして…爆砕陣の炎が収まり始める。

徐々に消えていく炎。

王都の外郭より外側は粉々に砕かれ焼き尽くされ、動く物の気配は無い。


よしひろう:「ハァハァハァ…」


全身から汗が吹き出していた。

そして全力を出し切った達成感。

街も無事だ。


エルマ:「ギリギリってとこかな?…あ、危なかったわ…」


その場にへたり込むエルマ。

そして大きなため息をつく。


よしひろう:「(レギオナ、無事か?)」

レギオナ:「(エルマ様共々、無事ですわ。)」

よしひろう:「(そうか!よかった!!)」


雨は止み、雲の切れ間から太陽の光が王都に差し込む。

その光の眩しさに手で目を隠しながら青空を見上げるエルマ、そしてロイ達魔法使い。

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