僕は夢を見た(57) 再始動
夢の中だけ勇者さま?[第二部]
ぼちぼちスタートです。
夢の中だけ勇者さま?[第一部]
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僕の名前は「菅原よしひろう」。
年齢は22歳。
職業はプログラマー。
夢の中で巫女から何かに選ばれたことを告げられるも、何に選ばれたのかは自身にも分からないという情けない状態。
確かなのは僕の他にも6名が選ばれているという事だけ。
そして夢の中で様々な人々と出会い、冒険をしている。
そんな僕の持つ特殊な能力は2つ。
一つ目は空を飛べる事。
二つ目は物質を通り抜けられる事。
この能力を使って色々な依頼をこなしてきた。
今日も先程まで友人のエリーの頼みでエルマという少女と共に地下迷宮を冒険してきたところだ。
今僕が居るのはアークランドという国の王都。
エリーとはその国の第三皇女のエリザベート様の愛称だ。
エリーの部屋で地下迷宮での出来事を報告し終わるエルマ。
エルマ:「ありがとう。ヒロ。」
「ヒロ」というのはエリーが僕に付けた愛称だ。
エリー:「ヒロは勇者ですもの!」
よしひろう:「勇者かどうかはひとまず置いておいて、どういたしまして。」
エルマ:「でも…」
エルマ:「そのボロボロになった装備をなんとかしなきゃね。」
エリー:「確かに勇者と呼ぶにはボロボロすぎるな。」
そう言って眉をひそめるエリー。
よしひろう:「ですね(苦笑)」
僕の装備は忍者スーツに盾の機能を備えた籠手とブーツ、エリーから拝領した剣だ。
だが、地下迷宮の吸血鬼レギオナとの戦いで忍者スーツも籠手もブーツも焼けてボロボロになってしまっていた。
よしひろう:「装備は明日にでも防具屋に行ってなんとかするよ。」
エルマ:「私のせいでこんな事になってすまない。」
よしひろう:「勝利の凱旋だろ?気にするなって(笑)」
よしひろう:「そんなことよりさ、エルマに頼みたい事があるんだ。」
エルマ:「私に出来る事なら何でも言ってくれ。」
よしひろう:「この子の面倒を暫くみてやってくれないか?」
と僕の背中に掛けた雑嚢から真っ白い子猫を取り出した。
エリー:「なんと可愛いのじゃ!」
エルマ:「私にこの子を!?」
目を輝かせ狂喜するエルマ。
エリーも子猫のあまりの可愛さに羨ましそうな顔をした。
よしひろう:「預けるだけだからな。」
エルマは子猫を抱き締めながらクルクルと舞っていて、僕の言葉が耳に入っていないようだった。
よしひろう:「おーい。エルマ、戻って来ーい。」
エルマ:「え?何か言った?」
よしひろう:「預けるだけだぞー。」
エルマ:「分かってます!」
「預けるだけ」という言葉にムッとしつつも子猫に頬擦りするエルマ。
エリー:「私にも抱かせるのじゃ。」
エルマから子猫を渡され満身の笑みを浮かべるエリー。
エリーも子猫に頬擦りする。
エリー:「可愛いのう!可愛いのう!!」
地下迷宮の探索での一番の収穫はレギオナを倒した際に手に入れた深紅の魔封石のはずなのだが…
子猫がそれを上回るとは…思ってもみなかった。
エリー:「エルマ、ヒロ、今夜は城に泊まっていくのじゃ!」
よしひろう、エルマ:「え!?」
エルマ:「いいのですか?」
エリー:「夜も更けてきたのでな。」
「パンパン」と手を打ち鳴らすエリー。
召し使いが現れた。
エリー:「部屋を2つ用意するのじゃ。」
召し使い:「かしこまりました。」
召し使いが部屋を後にした。
待つこと十数分。
召し使いが再び現れ、「どうぞこちらに」と手でもって行き先を促す。
エリー:「さあ、今日はゆっくりと休むのじゃ。」
よしひろう:「ありがとうございます。」
エルマ:「お心遣い、感謝いたします。」
エリー:「あ、その子猫は置いて行くのじゃぞ。」
エルマ:「えぇー!?」
後ろ髪を引かれる思いで子猫をエリーに預けるエルマ。
エリーの横ではエリーの飼い猫のエクスカリバーが子猫を興味深そうに見つめていた。
エリーが城に泊めてくれた理由の一つが子猫だったとは。
子猫様様である。
召し使いの後ろを付いていく僕とエルマ。
それぞれの部屋に通される。
よしひろう:「おやすみ。」
エルマ:「おやすみ。」
通された部屋は客人用の寝室のようだ。
ベッドの上にはガウンが綺麗に畳まれて置かれている。
部屋の隅には湯が張られた湯船が。
焼け焦げた装備を外し、服を脱ぐと湯に浸かる僕。
よしひろう:「あー!生き返るー。」
冒険の垢を落とし、生きてる事を実感する。
湯船から出てガウンを身に纏う。
そして、あらためて自分の装備を確認した。
布の部分は焼けて変色していた。
ヘルムの金色の鍔も色が剥がれて見る影もない。
籠手もブーツも使い物にならないだろう。
よしひろう:「鎖帷子とキーバックリール、クナイが辛うじて使えそうなくらいか…」
ここまでダメージを受けると修理するより買い直した方がいいだろう。
ベッドに横になる僕。
明日、エリーに頼んで外出用の服を貸してもらおうかな。
そう考えているうちに意識が薄れてきた…