第十五話 ニーフェの森
オリディオール島の中で最も大きい森。
ニーフェの森。
中には大きな湖が森の奥に存在する。
そこに有名な占い師『ビルハッド・ギンチェスター』なる人物がいると言う。
果たしてエルディア達は、魔法陣に描かれた悪魔の存在を知ることができるのか?
エルディア、クフィン、カーリオの3人はレイアークから南へ馬に乗り、そこへ向かっていた……。
エルディア達は馬を走らせ、レイアークから南へ行き、オリディオール島で一番大きな森、『ニーフェの森』の入り口へ、たどり着いていた。
東西に広がる大きな森が3人の目の前にあった。
彼らのいる場所からでは、東西にある森の終わりが分らないほどの広さだった。
時は真夜中で、遥か上空にはやや雲のある夜空が広がり、ぼんやりと光る綺麗な月も出ていた。
いくつもの小さな虫の声が聞こえ、風はほとんど吹いていなかった。
ひんやりとした風が森の奥から草木の香りと共に、僅かに運ばれてくる程度だった。
そして月の光に照らされた森を良く見ると、遥か先に木が盛り上っている見える場所があったため、高い木は奥に進むほどあるようだ。
クフィンが森を見つめ、感想を呟いた。
「ここがそうか……かなり大きな森だな……」
隣にいたカーリオは、ここに来たことはないか、2人に尋ねた。
「誰か……ここに来たことはありますか?」
「……ない」
「俺もないぞ。カーリオ、お前はどうなんだ?」
「……あらら、私を含めて誰もないんですね……」
この大きな森は町からも離れているため、島民たちは、何か特別な用事がない限り、誰も近づくことは普段しない場所だった。
だから辺りは人の気配が全くなかった。
「道は俺達の目の前にある。この道を進めばいいだけだろ……とにかく行くぞ」
この自警団の青年の言うとおり、3人の目の前には、一本の道が森の中へと続いていた。
幅は結構あり、3人が馬で横に並んで走っても余裕があるほどだった。
クフィンが森の中へ馬を走らせようとしたとき、エルディアが呼び止めた。
「……待って!ここから先は、きっと暗くて視界が悪いから、マナトーチの魔法を使おう……」
「エルちゃんの言う通りですね」
エルディアとカーリオはマナトーチの魔法を使い、自分の杖とロッドに魔法の青白い光を宿らせた。
2人の手に持っている物が光り、辺りが一気に明るくなった。
魔法を終えたカーリオはクフィンに向って、やや恩着せがましそうに話し掛けた。
「ああ……そうでした……あなたにも必要ですよね?しょうがないですから、友人である私がクフィンのその剣の鞘にかけてあげ……」
クフィンはカーリオの言葉を遮るようにエルディアに馬を寄せ、話し掛けた。
「エルディア、俺の剣の鞘に頼む」
それを聞いたエルディアは、すぐに魔法を詠唱し始めた。
「分った……」
カーリオは口をあけて沈黙していた。
「………」
やがてクフィンの方にも魔法の光りが宿り、森の中へ馬を進め始めた。
「はっ!」
しかし彼は途中で振り返り、固まっているバルガの魔道師に向かって叫んでいた。
「おい、行くぞ、カーリオ!」
エルディアも後へ続いた。
「行こう、カーリオ……」
2人は馬を走らせ、森の中へ入って行った。
カーリオは呟きながら渋々2人の後を追った。
「やれやれ……軽い冗談でしたのに……」
3人はニーフェの森の中へ入った。