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プロローグ
「きゃあっ!」
ピンクブランドの髪を持つ少女が転び、床に手作りのお菓子が散らばる。
「あら、ごめんなさいね?足が引っかかってしまったようで。………何かしら、このゴミは。もしかして、私の婚約者に渡そうとでも?身の程を知りなさい。」
そう言って少女に足を引っ掛けた彼女はその散らばったお菓子を踏みつけた。
「あら!私としたことがつい踏んづけてしまいましたわ!どうしましょう、靴が汚れてしまったわ。」
「わ、私の作ったお菓子……」
「うふふふふ。これに懲りたら、もう私の婚約者に近づかないことね!!」
そう言い残し、彼女はその場を取り巻きとともに去っていった。
「それでは私、ここで失礼させていただくわ。殿下に呼ばれておりますの。」
そのまま彼女は待ち合わせ場所に向かう。
「やぁ、少し遅れていたね、クローチス。首尾はどうだい?」
どこか愉快げに聞いた男に、彼女も笑顔で答える。
「上々だ。計画は順調に進んでいる。怖いくらいにな。」
そう言い切った彼女の笑顔は、凛々しい一輪の花のようだった。