表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

学校の七不思議、実はもう死にコンテンツなのではないか説

「という訳で、第291回黒日木小学校七不思議会議を始めません、お疲れ様でした」

「なんでよ」

「あれ?説明が必要かい?花子さん」

「会議の参加者があなたと私だけだから?」

「それもそうだけど、もっと重大な問題があるんだなこれが」

「なによ」

「学校の七不思議、実はもう死にコンテンツなのではないか説」

「そう?いまだに噂はされてると思うのだけど」

「うん、まあされてるね。それが本当に七不思議の噂なのかは謎だけどね」

「どういうこと?」

「……僕のリサーチ結果によれば、今この学校に流れている噂をすべて合計すると計十不思議になるよ。正直僕はこの現状が一番不思議で仕方ないね」

「え、それ本当?」

「うん、あー、じゃあいいよ。仕方ない、今回までは会議をするとしよう。議題は『不思議が多すぎる件について』だよ」

「ずいぶんと間抜けな会議ね」

「間抜けなだけならいいんだけどね、正直僕たちにとって結構な死活問題だよ?」

「それもそうね」

「じゃあ順番に不思議を言って行くけど……順番は適当でいい?」

「いいわよ」

「じゃあ一つ目の不思議、『トイレの花子さん』」

「私じゃない」

「そうだね、君だね」

「実際たまに会いに来る人いるわよ?みんなすぐに逃げちゃうけど」

「らしいね、ちなみに君がいるトイレってどこだっけ?」

「2階東女子トイレの手前から二つ目の個室だけど?」

「3階東女子トイレの手前から二つ目と四つ目の個室、3階西女子トイレの手前から四つ目の個室、2階東女子トイレの手前から一つ目と二つ目の個室、2階西女子トイレの手前から三つ目の個室、1階西女子トイレの手前から二つ目の個室、そして教員用トイレ」

「何それ?」

「君がいると思われているトイレだよ」

「え、な、なんで?」

「伝言ゲームみたいなものじゃないかな、人の噂って信憑性がないものだよ」

「人の噂を媒介して生きているような存在が言っていいことじゃないと思うわね」

「ていうかさ、ずっとずっとずっっっっと聞きたかったことがあるんだけど聞いていい?」

「何かしら?」

「なんで君成長してるの?」

「え?」

「なんで君成長してるの?」

「え?」

「なんで君」

「聞こえてる、聞こえてるからちょっと待って」

「この学校ができた当初は僕と同じか僕より年下くらいの容姿してたじゃん」

「そ、そうね」

「なんで時が経つにつれて君老化してるの?君が幽霊系なのか現象系なのか知らないけどちゃんとその辺自覚してるの?」

「自覚って言われても、勝手に成長してたわけだし、したくて老化してるわけじゃないし……」

「今年で創立24年だから、最初に会った時が容姿的に6歳前後だったとしても今アラサーじゃん。もう君はまごうことなき花子『さん』だよ、普通にさん付けで呼ばなきゃ怒られるレベルだよ」

「そんなに言わなくてもよくない?」

「というかその年でその恰好はさすがにやばいよ、一種のホラーだよ、いっその事グロテスクだよ」

「流石に私怒るわよ」

「君に会った大体の生徒が、見てはいけないものを見てしまった気がするっていう表情でトイレから出てくるの知らないの?」

「そうなの!?」

「自分の学校のトイレに花子さんの格好をした妙齢の女性がいるんだよ?余裕で通報ものだよ」

「そ、そんな」

「そして花子さんを見た人はこう噂するのさ、『トイレのコスプレおば」

「次の不思議に行きましょう、ね?」

「……そうだね、じゃあ三つ目の不思議は」

「三つ目?二つ目はどうしたの?」

「え?さっき言った通り『トイレのコスプレおばさん』だよ?」

「別カウントなの!?」

「生徒が別物としてカウントしていたからね」

「解せないわ」

「まあそういう訳で三つ目の不思議、『てけてけ』」

「ああ、あいつね」

「そう、彼だよ」

「呼ばれた気がする!!」

「あれ、今回タイミングいいね」

「何!?適当に言ったがあっていたのか!!」

「だと思ったわ」

「さてじゃあてけてけ君、君についてなんだけど」

「うおおおお!!止まってられん!!また来る!!」

「……行っちゃったわね」

「知ってた」

「あいつに止まっても死なないってことを教えてあげたらいいじゃない」

「教えたよ、そもそも君はもう死んでるよまで言ったよ」

「言うまでもないけど結果は?」

「『そうか!!なら止まるわけにはいかんな!!』だそうだ」

「会話のドッジボールやめなさいよ」

「僕が投げたボールと違うボールを投げ返してくる相手と、どうやってキャッチボールするの?」

「無理そうね」

「まあ、怪談としては優秀なんじゃないかな。見た目も怖いし、意味不明だし、正気じゃないし」

「褒めてるのかわからないわね」

「オカルト的には誉め言葉だと思うよ。じゃあ次に四つ目と五つ目の不思議、『動く骨格標本、または人体模型』」

「……二つツッコミを入れてももいいかしら?」

「どうぞ」

「なんで四つ目と五つ目をまとめたの?」

「似たようなジャンルだからね、後は生徒の噂でひとまとめにされてるパターンが多かったからかな」

「じゃあむしろなんで分けたの?」

「えっとね、ひとまとめのパターンとバラバラのパターン両方あったからだね。どっちかしか知らない人もいれば、この不思議をそれぞれ別にカウントしてる人もいたよ」

「グダグダじゃない」

「そもそも十不思議になってる時点でグダグダとかいうレベルじゃないんだけど」

「それもそうね、というよりももっと気になってるところがあるわ」

「はいなんでしょうか花子さん」

「この学校、もう骨格標本も人体模型もなくない?」

「正しく言えば人体模型は創立当初からこの学校にはなかったね」

「……この不思議どういうことなの?」

「さあ?」

「骨格標本って確かこの学校の七不思議の初期メンツの一つだったわよね?」

「そうだね、発声器官がなくて声が出せないから筆談しかできなかった骨格標本君がいたね」

「……今はいないわよね?」

「四年位前に子供が気味悪がるという親御さんの苦情を受けた先生方が、どうせ長い間使ってないし処分しちゃっていいんじゃね?という結論にいたって、彼がゴミ収集車に乗せられどこかへ旅立った時以来この学校にはいないね」

「……」

「彼、楽しい人だったんだけどね……」

「……人?」

「というのが四つ目と五つ目の不思議でした」

「結局この学校の生徒たちは何を見ているの?幻覚?」

「集団心理かな、それかホラー系の児童文庫を呼んだことによる妄想」

「人間って怖いわね」

「気を取り直して六つ目の不思議、『増える階段』」

「増える怪談?」

「違う違う、階層の階に段ボールの段で階段だよ」

「何それ、私知らないんだけど」

「午前零時に西階段の三階と二階の間が一段増えるというものだね」

「それ怖くない?」

「怖いよね、学校が歪んだりしてないといいんだけど」

「片側だけ一段増えるということは3階の廊下が斜めになるのかしら」

「耐震性も気になるところだね」

「床か壁にひびとか入ってたりしなかった?」

「僕が見てる限りではなかったかな」

「なら割と融通の利く怪談のようね」

「というところで花子さんにネタバラシ、この不思議はガセなんだよね」

「ええ?」

「一カ月くらい階段の段数をただひたすらに数えていたけど、いつ数えても十三段だったね」

「普段は?」

「それがなんと、十三段だよ」

「異常なしね」

「そもそもの話をしてしまえばだけど階段の段数一段増えるって怖い?」

「それは、怖いんじゃない?」

「んーと、質問が悪かったね。この不思議、オカルトとして怖い?」

「……微妙ね」

「でしょ?さらに言わせてもらえば時間が午前零時っていう生徒には見ることができない時間設定も問題だね」

「忍び込むとかは?昔はあったじゃない」

「今この学校は9時以降誰かが学校に入ると警備会社に連絡が行くんだよ。まあ僕たちには反応しないから知らなかっただろうけどね」

「そうだったの?いつの間にこの学校にそんな警備体制ができていたのかしら」

「二年前くらいだったと思うよ」

「結構前じゃない」

「そんなわけで結局のところ、証拠もない、再現性もない、怖くないっていうないない尽くしのガセ怪談だね」

「……ガセ怪談の階段、ふふっ」

「君は駄洒落が好きになったよね、歳なのかな?」

「歳、歳なの?やっぱり私認めたくないけど老化かかかかかかかか」

「なんで急に発狂しだすのさ……」

「呼ばれた気がする!!」

「呼んでないよ」

「なにい!!ならば私は動き続けるとしよう!!」

「うん、頑張ってね」

「それで次の秘密はなんなの?」

「あれ、正気を取り戻したの?」

「……あいつを見ているとね、老化ぐらいどうってことないかなって思ったのよ」

「彼が人の役に立っているの初めて見た気がするな」

「それでなんだけどね」

「何かな?」

「できれば年齢については言わないでほしいわ、改めて実感すると心が持たないの」

「あー、うん、これ以上正規の七不思議メンバーを減らしたくないからそうさせてもらうよ」

「気を取り直していきましょう、七つ目の不思議はなんなの?」

「七つ目の不思議は『増える生徒』だね」

「それあなたじゃないの?」

「そうだね、放課後校庭で遊んでいると知らない生徒がいつの間にかに遊びに混ざっていることがあるというもの。つまり僕の怪談だね」

「何か言うことはあるの?」

「八つ目の不思議を聞いてもらってからにしようかな」

「八つ目?」

「そう八つ目、『消える生徒』っていうものだよ」

「うん、うん?」

「放課後校庭で遊び終わった後に人数を確認すると一人減っているというものだよ」

「……え?」

「そうだね、これも僕だね」

「えっと」

「なんでだ!?なんでだ!?なんでだ!?花子さんが分割されたのは子供たちの想像と現実が別物だったからだろうさ!でも僕に関しては遊んでる最中に姿変わったりしないんだけど!?出現してから消えるまでずっと同じ容姿してるんだけど!?どこに不思議を分割する様子があったのか言ってみろよ生徒諸君!」

「おおお、落ち着いて」

「僕の七不思議としてのプライドを酷く傷つけられた気分だ!なんなんだよ!!お前らの遊びに参加した増えた生徒は翌日授業に参加したのか!?消えた生徒がいるってことはこの学校で行方不明者が発生したってでもいうのか!?絶対自分の知ってる七不思議が足りなかったもんだからかさ増しした奴がいるんだろ!?おとなしい怪談だって馬鹿にしてるなら本当に生徒を減らす亡霊にでもなってやろうかおお!?」

「そんなことしたらあなたもあの子みたいになるわよ!?」

「呼ばれた気がする!!」

「呼んでねえよクソが!」

「ええ!?怖!?誰この人!?怖いから止まらない!!」

「ああ、あああ、め、めんどくさい。この人って変なところに逆鱗もってるから本当にめんどくさい!」

『うるさい』

「え?ああ、ヒッキーちゃんね」

「ヒッキー!お前も会議に参加しろよ!お前も一応七不思議の初期メンツだろうが!」

『ヒッキー呼ばわりやめて』

「九つ目の不思議!『無人の放送室』!放課後学校で騒いでいるとスピーカーから声や音楽が流れてくる!放送室に行っても誰もいないけどな!」

「でもヒッキーちゃんの声って普通にかわいいし選曲も普通だから怖さはほとんどないわよね」

『そう?』

「怪談としての自覚はあるのかね……」

「落ち着いたようね」

「ああごめん、ついカッとなった」

「うん、まあ、わからなくもないから」

「ていうかヒッキーちゃん」

『ヒッキーじゃない』

「いやでも黒日木さんって呼ばれるよりあってると思わない?」

『うーん?』

「え?何それ、どういうこと?」

「あれ?花子さん知らなかったっけ?ヒッキーちゃんってこの学校自体の意志が具現化したものなんだよ?」

「んん?」

「だから本当の名前は黒日木さんなんだけど、声のイメージと会わなかったからヒッキーちゃんって呼んでるんだよ」

「ちょっと、ちょっと待って」

「何かな?」

「え、え?じゃあもしかしてヒッキーちゃんって偉い人?」

「偉い人かどうかは良く知らないけど、ざっくり言うと僕たちの大家さんみたいなものじゃない?」

「……」

「それでヒッキーちゃんさあ」

「黒日木さん申し訳ございませんでした!」

『「え?」』

「ほら!あなたも謝って!」

「え?え?なんで?」

「私たち学校から追い出されたら消滅するのよ!?」

「まあそうだろうね、どちらも実体がないタイプだし、ジャンルとしては地縛霊に近いものがあるからね」

「なんでそこまで理解しててあんなに失礼な態度が取れるの!?自殺志願者なの!?」

『自殺する?』

「別に自殺するつもりはないよ?あの子じゃあるまいし」

「……というか黒日木さんいいですか」

『何?』

「本当にこの学校の化身なんですか?その割にはやることが地味と言いますか……」

「それこそ失礼じゃないの?」

「い、いや、そういうつもりでは」

「というかヒッキーちゃんは普通にいろいろできるよ?滅多にやらないけど」

「え?」

『やる?』

「え?」

「じゃあまず扉から」

【ガン!!ガン!!】

「次に窓」

【ガラガラッ】

「そして蛍光灯」

【カチカチカチ】

「あ、消しといてね、夜に電気が付いてたのが見られると問題になると思うから」

【カチ】

「じゃあ次は黒板」

『何を書く?』

「じゃあ円周率とか」

『円周率……』

「待って待って!なんですか!?何が起こっているんですか!?」

「まあこの辺でいいかな?こんな感じでヒッキーちゃんは学校の中ならポルターガイスト的な現象起こし放題なんだよ」

『3.141の次なんだっけ』

「もういいってば」

「……黒日木さん様、今までの御無礼をお許しください」

『黒日木さん様』

「花子さんって割と上に媚びるタイプだよね」

「私はね、消えたくないの。たとえ地べたに這いつくばっても、たとえプライドを投げ捨てても、たとえキャラが崩壊しても、私はただひたすらに消えたくないの」

「ふーん。まあヒッキーちゃんいい人だし、この学校が崩壊しない限りは大丈夫だと思うけどね」

『私寝る』

「はいはーい、騒いでごめんね」

「申し訳ございませんでした」

『花子さん』

「はい、なんでしょうか!」

『私は今までのあなたが良かった』

「……わかったわよ、ヒッキーちゃん」

『うん、お休み』

「……ほらね、あの子はいい子なんだよ」

「そうね、そうみたいね」

「それじゃまあ、最後の不思議だね」

「ええ、最後はいったいなんなのかしら?」

「『七不思議のすべてを知ったものは不幸な目に遭う』」

「……」

「……」

「……」

「……」

「……ねえ」

「何かな?」

「十不思議のすべてを知った場合はどうなるのかしら」

「さあ?幸せに恵まれるんじゃない?」

七不思議初期メンツ


増える生徒

10歳くらいの男子生徒の容姿。

そもそもは学校ができる前からその場にいた浮遊霊。

学校ができた際に取り込まれた。

明確な名前がないため周りの人は呼ぶときに若干困っている。


花子さん

今年30の花子さん。

よく見るタイプの花子さんの服装をしている。

最近肩こりと腰痛がひどい。

でもおばさん呼ばわりは認めない。


てけてけ

下半身のない熱い男。

止まると息ができないと思っているマグロ系怪談。

実は生徒との遭遇率が最も高く結構知名度が高い。

そもそもは学校建設の際に事故で死んだ大工。


黒日木さん(ヒッキーちゃん)

学校にやどった魂が具現化したもの。

実は七不思議の中で精神的な年齢が一番若い。

学校の化身なため実際はかなりのことができるのだが基本やる気がない。

正直なことを言うと警備をしなくてもこの子だけでなんとかできる。


骨格標本

骨。

もう学校にいない。

誰も行方を知らない。


二宮金次郎の像

1ミリも話題に出なかった。

もう学校にいない。

誰も行方を知らない。


屋上の少女

こちらもほぼ話題に出てない。

屋上に一人でいる生徒を突き落とすという相当やばい怪談だったが

唯一生徒を殺すタイプの怪談だったせいか除霊された。

花子さんが消えることにトラウマを持っているのはこの子のせい。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 新作投稿をお待ちしていました。 今回も最強最狂最狂に面白かったです。 てきてきの狂いっぷりが最高 [気になる点] 花子さんとてけてけ以外の七不思議知らない。。 [一言] 花子さんのトラウマ…
2018/10/31 23:12 退会済み
管理
[良い点] 花子さんで笑いました。コレは怖い。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ