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お人よし悪魔と駄女神さま  作者: 瑞沢ゆう
五章 プリズンブレイク
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抜け出せない監獄②

なんと書籍化!

5/30日にヒーロー文庫様から発売します!

詳しい情報は活動報告、ツイッターで!

「貴様何を吹き込んだ!!」

「落ち着いて下さいませ! きっと何かの手違いで──」

「黙れっ!! 私は二番目に生まれし大天使。長年奴に大天使長の座を奪われ、今宵こそは奴から奪った座を堪能する筈だったのだ!! だが……こんな屈辱を味わうはめになるとはっ!! 許さんぞメタトロン! お前は、私が必ず地獄に落としてみせようぞ!!」


 大天使ルシフェルは、鬼面を張り付かせながらそう言い残し、上層から去っていった。ルシフェルが向かうのは第二層。

 

 神々の楽園と言われている天界だが、その構造は三つに分けられていた。上層となる第一層は、主神から認めれた神々と大天使だけが住む事を許されている。メタトロンやラファエル等も、第一層で暮らしていた。


 そして、ルシフェルが落とされた第二層は、天界を守護する戦闘部隊──天騎使達が住まう場所。数万人の天騎使達は、日々鍛練に励み、天界を守るため凌ぎを削っている。


 更にその下層、第三層は労働を担う下級天使達の住まう場所。

 天騎使達と同規模の、数万人に及ぶ下級天使が天界の労働力として汗を流し天界の暮らしを支えていた。


◆◆◆◆


 大天使ルシフェルがその権威を失墜させてから数年後。ルシフェルの代わりとして大天使長補佐に就いていたメタトロンは、忙しい日々を送っていた。


「メタトロン様、世界樹の運用も順調にございます。この調子でいけば、数年後には下界の浄化も終わるかと。ただ、洞窟の中で核化したマナの残骸は吸収出来ず残ってしまうでしょう」

「そうか。その破壊はいつ頃出来るのだ?」


「天騎使達を派遣すれば数ヶ月で終わるでしょうが、核化したマナの残骸は破壊不要と考えます」

「それはどういう事だ?」


「核化したマナの残骸、通称コアが形成した洞窟は、怪物どもの醜い巣窟と化しています。ですが、その怪物どもを引き寄せる事で、下界の浄化を助けているのも事実です。下界への影響はそれ以外特段なく、放置していても問題ないかと」

「そうか、ならば良い。だが、洞窟から溢れた怪物も居るであろう? その怪物どもは下界に住む者達で対処可能か?」


「ええ、大丈夫だと思います。逆に言えば、怪物どもと下界の者を共存させる事で人口の爆発を防ぎ、バランスを取れるかと推測します」

「ふむ、であれば様子を見るか。そのまま監視を続け、変わった事があれば報告しろ」

「はい。それでは失礼致します」


 メタトロンへ定例報告を済ませた部下が大天使長補佐室を出て行くと、メタトロンは深いため息を吐きながら、椅子の背もたれへ体を沈めていく。


 ルシフェルが去ってから数年、慣れないながらもなんとか職務をこなしていた。メタトロンの他に、大天使長補佐は六人居る。

 他の大天使長補佐に頭を下げつつ仕事を教えて貰ってきたメタトロン。なにせ、去ったルシフェルからは引き継ぎなど一切なかったのだ。


 そして、今日は大天使長と大天使長補佐達が一同にかえし、定例会議をする日。深いため息の理由は、それも関係していた。



 その日の夜、メタトロンが是が非でも逃げ出してしまいたいと思うほど、嫌な時間がやって来てしまう。


「久しぶりねメタトロン」

「ああ姉さん。お変わりないですか?」

「ええ、変わりはないわ。それより、あなた少し疲れた顔してるわよ? ちゃんと休めてるの?」


 疲れた顔をしていたメタトロンを気遣う女性。彼女は、大天使長補佐の一人──サンダルフォンである。そして、彼女はメタトロンの双子の姉でもあった。


 同時期に主神から産み出された彼女達は、光と闇を司る天使。

 光の天使サンダルフォンと闇の天使メタトロン。

 二人は対極に位置するが、同一でもある。

 サンダルフォンは、メタトロンが唯一心を許せる者であった。

 

「中々忙しくて……それに、この会議に出るのが嫌でどっと疲れました」

「あら、ふふっ、そんな事言ったらラファエルとガブリエルに怒られるわよ?」


「その二人が嫌いだから言っているのですよ」

「誰が嫌いなのメーたん?」

「恐らく、僕達の事だよラファ」


 噂をすればなんとやら、メタトロンが敬遠する大天使長補佐の二人──ラファエルとガブリエルが会議室へやって来た。


 この二人の容姿は幼い。幼女のようなラファエルと、少年のようなガブリエル。しかし、その見た目とは違い、ルシフェルの次に長い命を生きる大天使だ。


 その思考はずる賢く、常に何かを企んでいる節さえ感じさせてしまう雰囲気を持っていた。


 そんな二人に聞こえないような、小さな舌打ちをしたメタトロンは、先ほどの失言を取り繕うように明るい口調でラファエルとガブリエルを迎えた。


「これこれは、ラファエル様とガブリエル様ではないですか! お二人のご到着、このメタトロンは心よりお待ちしておりました!」

「ほんとかな~? 嘘ついたらラファたんプンプンしちゃうぞ!」

「白々しい。君が僕達を嫌いなのは分かっている。それに、僕も君が嫌いだ」


 不気味な笑みで微笑むラファエルに、仏頂面のガブリエル。


 それもその筈、ラファエルとガブリエルは、あのルシフェルの腹心として、長年彼を支えてきた者達だったのだ。当然、ルシフェルを失墜させたメタトロンを、良く思っていない。

 

 そんな理由から、会議室を包む空気は、中々に重たいものであった。だが、その重苦しさをぶち破るような、


「お待たせー! 皆待ったー? アズラエルが来ましたよー」


 お調子者の声が響き、長身の男が会議室の扉を開け放ち、やって来た。

 その天使の登場に、メタトロンは重苦しい空気から解放される喜びと、うざったい男が来てしまった苦痛を同時に感じていた。


「皆元気ー!?」

「アズたんうるさい」

「アズラエル、君はうざいを通り越している。死ね」


 うざったい天使アズラエルを一蹴するラファエルとガブリエル。


「ラファエルちゃんとガブリエル君が冷たい……サンダルフォン! 二人が虐めるんだ!」

「ほらほら、良いから座りなさい」


 一蹴され、サンダルフォンに助けを求めるアズラエルだったが、当のサンダルフォンも扱いは冷たい。


「まったく、いい加減落ち着いたらどうだアズラエル」

「あっ、ミカエルだ! ミカエルが来たって事は、大天使長様ももうくるね!」

「黙れアズラエル」

「う~、ミカエルまで……」


 最後に登場した大天使長補佐の一人、ミカエル。

 ララの執事でもあるミカエルだが、大天使長補佐としての任も背負っている。


 これで大天使長補佐は出揃い、後は大天使長を待つばかりとなった会議室。大天使長及び大天使長補佐は、七大天使と呼ばれ、天使達の憧れと尊敬を浴びていた。


 七大天使の序列として、大天使長がトップなのは勿論だが、補佐達にも暗黙の序列が存在している。


 上から順にいくと、以外な事に『死と安らぎ』を司る大天使アズラエルが補佐達の中で上にくる。


 次に、ルシフェルの腹心である『水と癒し』を司るラファエルと、『大地と恵み』を司るガブリエル。その次に『火と繁栄』を司るミカエル。最後は、『光』と『闇』の双子、サンダルフォンとメタトロンだ。


 因みに、ここに『生と快楽』を司るルシフェルが居れば、補佐達の中でトップにくる。それほど、ルシフェルの権威は高かった。


「──全員集まったようね」


 その声に、補佐達の緊張が高まる。

 淀みない仕草と荘厳なるオーラを纏う女性。


 この女性こそ全ての天使達と、そうそうたる大天使達の長であり、『全てを包む聖』を司る大天使聖その人だ。


 そして、彼女こそ──ヨシュアの母であった。

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