ルーキー狩り① 回想編
ブックマーク及び評価ありがとうございます!
──人間界、冒険者ギルド──
それは、ヨシュアが冒険者となって数日が経った時だった。
どの採取依頼にしようかと掲示板を眺めていると、ヨシュアの隣に男が並ぶ、そして此方に視線を合わせ、
「よう、お前ルーキーか?」と、話しかけて来たのは人が良さそうな笑顔をふりまく男。
「ええ、そうですけど。何か?」
俺みたいなルーキーに何の用だろうと、ヨシュアは単純な疑問でそう答えた。
「いや、実はな俺のパーティーで一人欠員が出ちまってよ、これからダンジョンに稼ぎに行かなきゃいけねえのに戦闘職が足りなくて困ってんだ。お前さん戦闘職か?」
笑顔だった男は、突然困り顔になりヨシュアに問う。
「えっ、ああ。まあ戦えない事も無いですが、あんまり戦闘は好きじゃなくて……ハッキリ言って弱いですよ?」
「だったらサポートだけでも良い、入ってくんねえか? 頼むよ、今日稼げなきゃ餓死しちまう、この通りだ」と、頭を下げてお願いする男。
ヨシュアは悩むが、ここまでされて断るのは可哀想だとつい頷いてしまう。
「本当か!? いや~マジて助かったぜ! 恩にきるよ。俺はゼマンってんだ! あんたは?」
「ヨシュアです。あの~本当にサポートだけですからね?」
「ああ、分かってるって! さあさあこっちだ、外にメンバーを待たせてるんだ。紹介するぜ」
肩をガッチリ掴まれ、まるで連行される犯罪者のように連れて行かれるヨシュア。
周りの冒険者の視線は冷やかだ、そして多くの者はこう思う『またやってるよ』と。
実は彼、ルーキーを餌食にする悪徳冒険者の一人『ルーキー狩りのゼマン』として多くの冒険者に嫌われている。しかし彼等は、ゼマンを非難こそするがギルドに訴える事はしない。
冒険者という職業につく者達は多かれ少なかれ問題を抱えているのだ、何かから逃げてきた者、はたまた犯罪を犯して身を潜める者、そんな、ならず者達を無条件で受け入れる冒険者ギルド。
冒険者という職業は危険が伴い依頼中に死ぬ事も少なくない、そんな職業を選ぶのはやはり訳ありの人種が多数だろう。
そして、危険な依頼をこなすのは死んでも問題ない者達。国としても助かるのだ、兵や一般市民を犠牲にせずとも魔物退治や盗賊討伐などを犯罪者や犯罪者予備軍が自ら赴いて退治してくれる、そしてなにより死んでくれるのだ。
そんな持ちつ持たれつの関係で成り立っている冒険者ギルドにとって、冒険者同士のいざこざなど正直どうでも良いのだ。確かに、外で冒険者が犯罪を犯すのは世間の目もあり、厳しく目を光らせてはいるが、内輪で殺し合う程度だったら目に付かない限り詮索しない、依頼中に死んだ事にすればそれで済んでしまう。
それがこの世界の冒険者ギルドと冒険者の腐った実情である。
なので、ギルドでルーキーを助けようという正義の心を持った者など居ない。自分の身は自分で守れ、それが冒険者達の総意だ。
──ヨシュアがゼマンと共にギルドの外に出ると、二人の男女が待ち構えていた。
見下すような目で見てくるケバケバした女、そして顔は笑ってるのに目が死んでいる男。
「おう、お前ら。今回手伝ってくれるヨシュアだ──ヨシュア、うちのパーティーメンバーを紹介する。紅一点の魔法使いミリア、そして弓使いのラバウルだ。因みに俺はシーフだ」
「皆さん宜しくお願いします」と、丁寧に頭を下げて挨拶をするヨシュア。
それを受け「よろ~(冴えない男ね)」と、気だるく返すミリア。そして「宜しく、ヨシュア(早く苦痛に歪む顔が見たい)」と、不気味な笑顔を浮かべるラバウル。なんとも個性的な面々だ。
「そうだ、ヨシュアは何の戦闘職なんだ?」
「えっ、ああ……素手? で戦います」
「じゃあ『モンク』か! 中々頼もしいじゃねえか、宜しく頼むぜ!」
「ああ、はい……なるべく頑張ります」
挨拶を済ませたヨシュア達は、早速ダンジョンに向かう事にした。
──人間界、ダンジョン「深き闇」──
ダンジョンの入り口にたどり着いたヨシュア達は、ダンジョン攻略に向け最後の準備をする事に。
まあ、ゼマン達に攻略する気などないのだが。それに未踏破ダンジョンである通称『深き闇』を攻略出来るような実力もない。
所謂、彼等は寄せ集めの『ゴミ』みたいなものだ。盗賊崩れで口ばかり達者なゼマン、魔力が少なく一日に一発しか魔法を使えないミリア、生物の苦痛を浮かべる顔が何よりも好きな異常者ラバウル。
そんな彼等は、腕の良さそうな新人を見つけると声をかけてこのダンジョンに連れてくる。三人だけで挑むとしたら10階層までが限界だが、一人加わると平均して20階層まで進める。この差が大きいのだ。
1~10階層まではルーキーが慣らしに使うような階層で魔物から取れる素材や魔物自体の価値もたかが知れている。
11~50階層は、ルーキーを抜け出した中堅冒険者が挑む階層、ここからは素材や魔物の価値も上がって、四人パーティーで挑むとしても結構な利益になる。
51階層からは出現する魔物の強さが桁違いに上がるため高ランク冒険者しか生きて帰れないが、素材や魔物の価値は破格だ。これはどこのダンジョンも一部例外を除き同じ仕組みとなっている。
そして、彼等が何故ダンジョンに目をつけたかと言うと──死体の処理に困らないからだ。ダンジョンで死亡した場合、その身は即座にダンジョンに喰われ塵となって消えてしまう。死体処理には好都合なのだ。
やはり、外で死んでしまうと処理も勿論だが、誰かに見られると厄介なのだ、さすがに冒険者とはいえ殺人を見られたと有ったら問題になるどころか、国も重い腰を上げざるをえない。
まあ、その前にギルドの暗部に消されてしまうだろうが。
──準備は良いか? 回復アイテムは持ってるから安心してくれ」と、人が良さそうにヨシュアを気遣うゼマン。
ヨシュアもすっかり騙され、素直に「大丈夫です!」と、笑顔で答えてしまっている。
「よっしゃ! じゃあお前ら、ダンジョンに出発だー!」
「「「 おーう! 」」」
ゼマンの合図をうけ、ヨシュアを先頭にダンジョン『深き闇』へと歩みを進めていく。
ヨシュアは仲間と呼べる間柄になってくれるかもしれない人達と出会えたと思い、喜びが抑えきれず純朴な笑顔を浮かべていた。
そして、ゼマン達もある意味喜びを抑えきれずほくそ笑んでいた──今日は獲物が狩れると……。




