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お人よし悪魔と駄女神さま  作者: 瑞沢ゆう
四章 それぞれのケジメ
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図る者


 ヨシュアがエルフの森を目指している頃──

 海岸の動向を見ていたシヴァはイフリートへ報告するために、魔王城へ帰還していた。


「大変よ貴方!! ヨシュア・デモンが帰ってきたわ!」

「なんだと!! 何故突然……」


「お陰で財を尽くした船は沈められたわ……どうするの貴方?」

「どうするもこうするもなかろう!! 出来る事など精々此方の陣営に加える為に策略する位しか出来ん!」


「では、どうやって? 地位、名誉、女。色々有りますが……」

「そんなもの分からん! そういう事はお前の仕事だろ!」


「ですが、あの男は欲がなく何を欲しているのか……」

「折角魔王になったというに……邪魔な奴だ……」


 ヨシュアの帰還により、計画が崩れていくのが想像出来る二人は、頭を抱え項垂れる。


 そんな時──幼い声が二人に届く。


「困ってるの? 助けて上げようか?」

「だ、誰だお前は!?」

「あ、貴女は……」


 イフリートとシヴァの前に現れたのはショートカットの青い髪が際立つ少女。


 突然現れた少女に驚くイフリート。

 対してシヴァは会った事が有る様な口振りだ。


「シヴァよ! こやつが誰か知っているのか?」

「し、知りません!」


 イフリートの問いにしらをきるシヴァ。

 その表情は焦りさえ見える。


「ひどーい! ラファたん忘れるとか酷いよ! ラファの渡したお薬のお陰でそのオジサンが正気に戻ったのに!」

「なんだと!? それは誠かシヴァよ!」

「い、いえ、それは!」


 イフリートの問い詰めに、しどろもどろになるシヴァ。

 その様子が少女の言っている事が本当だと物語っている。


「なんという事だ……こんな少女に助けられるとは。それにお主、魔族では無いな?」

「天使だよ! 天使のラファたん!」


「天使? なんだそれは?」

「うーん、説明するの面倒くさい! それより、困ってるんでしょ? 助けて上げようか? ヨシュアって奴より、強くなるお薬上げるよ?」


「フッ、何を言うておる。薬ごときでそんな事が……可能なのか?」

「ウフフ。興味有るんだね! じゃあ、少し効能が低いもの飲んでみて!」


 イフリートのゴツゴツとした手に、小さいラファエルの手から渡されたカプセル。そのカプセルをイフリートは訝しげに見つめる。


 本当に飲んで大丈夫か? そう思い妻のシヴァを見ると、シヴァは小さく頷いて飲んでも大丈夫だと表している。


 疑い深い妻が信頼している相手なら大丈夫か。そう思ったイフリートは、腹を据えカプセルを口に放り込み飲み込んだ。


「──ぐはっ! く、苦しい!」


 カプセルを飲み込んで数秒経つと、突然イフリートが腹を抑え苦しみだした。


 魔王の王座から転げ落ち苦しむイフリート。その様子を見た妻であるシヴァは、ラファエルに向かって怒号を飛ばす。


「貴様何を飲ませた!! やはりお前は間者だったか!!」


 そんなシヴァに、ラファエルは穏やかな口調で答える。


「まあまあ。もう少ししたら効果が出るから、怒らないで待っててね」


 その答えを怪しむシヴァはラファエルを一睨みすると、苦しむイフリートに寄り添い背中を擦る。そして──


「うぐっ! ううっ~、ん? な、なんだこれは!?」


 苦しんでいたイフリートだが、突然治まった痛みと同時に、不思議な感覚を感じていた。


(なんだこれは? 力が、力が奥底から湧き出てくるようだ!)


 謎の感覚に支配されたイフリートに、もう痛みは無い。そして、徐に立ち上がったイフリートはラファエルを見据えると、突然高笑いを上げた。


「カハハハハッ! これは素晴らしい! ラファたんと言ったな? お主は最高だ! カハハハハッ!」


 突然おかしくなった様に高笑いをするイフリートに、困惑するシヴァはその原因をラファエルへと問いかける。


「どういう事なの!? 一体何を──」

「強くなるお薬を上げただけだよ? どうする? もっと効果が有るお薬飲んでみる?」

「勿論だ! これ以上の力を得られるなら喜んで頂こう!」


「いいよ! でも、今度のはもっと苦しいよ?」

「構わん! それ位の痛み力と引き換えなら耐えようではないか!」


「じゃあこれどうぞ!」


 飴を渡す様なノリでラファエルから渡される薬。

 

 その薬を勢いよく飲み込んだイフリートは、先程とは比べものにならない痛みに襲われる。


「ウワッッッ!! 全身が焼けるようだ!!」


 火の耐性を持った炎鬼族にらしからぬ言葉。しかし、未知の痛みに襲われたイフリートが表現出来る言葉は、最早それしか浮かばかった。


 だが痛みに耐え、立ち上がった時──イフリートは確信した。


 この力が有れば世界は自分のもの。

 あのヨシュアでさえ赤子の様に捻り潰せると。


 こみ上げる力。沸々と沸き上がる自信。


 全身を駆け巡る力を確認する様に、右手の感触を確かめたイフリートは、魔王の間の窓際に近付き窓を勢い良く開け放った。


「見よ。これが我の力だ!!」


 イフリートは叫びを上げ、右手を窓から突き出すと、拳大の火の玉を放った。その光景を困惑しながら伺う妻のシヴァ。


 そんな火の玉で何を? そう疑問に思うシヴァだったが、その後の光景がその疑問を吹き飛ばした。


『ドゴォンッッ!!』


 遠くに見える高く聳えるハゲ山。

 その山は爆音と共に、消し炭となった。


「なんて事……」


 空いた口が塞がらないといった表情の妻を、イフリートは満足そうに見つめている。


 しかし、何故拳大しかない火の玉でそんな事が出来るのか? それは拳大の火の玉に、山を消し飛ばすほどのエネルギーが込められているからだ。


 破壊に派手な演出は要らない。

 スマートに。そして確実に破壊出来ればそれでいいのだ──


「凄ーい! じゃ、これで大丈夫だね! ラファたんはお空から見守ってるから! じゃあね~」


 別れの言葉を軽い雰囲気で告げたラファエルは、イフリートが開け放った窓からその身を投げ出した。


 驚いたイフリートはラファエルの姿を確認するため、窓から大柄な体を乗り出す。


 そして、イフリートの目に飛び込んてきた光景は──


 小さな体に不釣り合いな白い翼をはためかせた少女。

 ラファエルの姿だった。


「一体何者なのだあやつは……だが、力をくれた女神には違いない! フフ、フハハハッ! 感謝するぞ小さき者よ!!」


 イフリートの太い笑い声と感謝の言葉。その言葉を背に、ラファエルはとある所を目指し羽ばたく。


(フフ。喜んでる喜んでる! これで、生まれ変わるヨシュたんの力を測る位にはなるかな? 面白くなってきたね! フフ)


 何かを図りながら……。

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