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お人よし悪魔と駄女神さま  作者: 瑞沢ゆう
三章 探し求める者
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勇者の旅路

──勇者ヘラクレアと元冒険者ギルド受付嬢ミシェルの二人が、ヨシュアを探す旅路に出て一週間。二人はカイン王国から東へと向かい──現在、帝国国境沿いの森を進んでいた。


 そう、二人は順調にヨシュアから遠ざかっていたのだ。


「──ねえ、本当に帝国なんかに師匠が居るの?」

「確証は有りませんが、有能な方なら帝国へ向かってもおかしくは有りません。行ってみる価値は有るかと」


「ふーん……私は、もっと辺鄙な所にいる気がするんだけどな」

「帝国で手掛かりが掴めなかったら小国を廻って、アベル王国へ行きましょう。そこでも居なかったら……西の果てにある荒れ地でも探してみましょうか? まあ、そんな所に居ないと思うんですけどね」


「案外、西の果てで国でも作ってるかもよ?」

「フフッ、まさか」


 この時ばかりは頭が切れるミシェルではなく、直感型のヘラクレアの方が正しい事を言っていた。このままだと、二人がヨシュアに出会えるのはだいぶ先になりそうだ。


「あっ、ミシェル見て! 帝国の壁が見えたよ! ──うわー、それにしても大きい壁だわ。こんなので国を囲えるなんて、やっぱ帝国って凄い……」

「そうですね。国ごと壁で囲えるなんて考えられません……」


 森を抜けた二人は、高さ三十メートル(マンションだと十階)の壁を見上げ、帝国の国力に唖然としていた。


 帝国がこの壁を作り出したのは約五十年前。最初は高さ五メートルほどの壁を作り、国を囲い出した。そして、五メートルの壁の建築が終わったのが四十年前。


 その頃からだろうか、圧倒的な国力を持っていた帝国が、さらに力を増してきたのは。


 国を壁で囲う事に成功した帝国は、国中の魔物を掃討し、魔物に怯える事のない広大な土地を手に入れた。その後、安全な土地で農地を増やし、インフラ整備を進めた帝国は、他国が逆立ちしても追い付けないほどの先進国になっていったのだ。


 だったら、他国も真似すれば良いじゃないかと思えるが、事はそう簡単ではない。


 例えば、小国の一つが真似をして、自国を囲う壁を作り始めたらどうなるだろうか? 当然、隣国から攻められるだろう。


 隣国にしたら、国の境を決定してまう様な壁など目障りに他ならない。この点から、小国が自国を囲う壁を作りだすのは不可能。ならば、大国として栄えるアベル王国とカイン王国ではどうだろうか? 否──この二カ国も不可能だ。


 何故ならば、それだけの大規模な工事をする『金』が無いからだ。壁作りをするにはまず人が必要不可欠、それに払う金もまた必要不可欠。しかも、工事中に魔物に襲われるかもしれないし、他国から攻撃を仕掛けられるかもしれない。そんな危険な仕事に安い給金で働く者が居る筈が無い。


 なにより、壁の材料も大量に必要になる。莫大な人件費と材料費を壁作りに投入してしまえば、それこそ、壁が出来る時には国が干上がっているだろう。それが分かっているからこそ、アベル王国とカイン王国は、帝国の真似をして壁作りなど出来ないのだ。


 と言う事はだ、元々莫大な資金力と軍事力を保有している帝国だからこそ、国を囲う壁を作り出せたに他ならないのである。


「所でさ、此処まで来たのは良いけど……中入れんの? 帝国の入国審査って、相当厳しいらしいじゃん」

「任せて下さい、私に考えが有ります」


 心配そうな表情で聞くヘラクレアに対して、自信あり気に答えるミシェル。そんな二人は、帝国へ入国するための門へと歩みを進めていく。


「──此処が入国門? また馬鹿デカい事……こんな鉄の塊どうやって開けるのかしら」


 入国門へと到着した二人。

 鉄の門を見上げ、ヘラクレアが呟く。


「お二人は帝国市民ですか?」


 二人が鉄の門を不思議そうにペタペタ触っていると、門上部に取り付けられたスピーカーから、男の声が聞こえてきた。それに答えるのは、ミシェルのようだ。

 

「いいえ、違います」

「では、入国許可証はお持ちですか?」


「いいえ、持っておりません」

「……でしたら、即刻入国門から立ち去って下さい。十秒以内に立ち去らなければ敵意有りと判断し、攻撃致します」


 十秒──限られた時間の中で、帝国へと入るためのキーワードを盛り込まなければならない。ミシェルは頭の中で言葉を組み立て、早口で話始めた。


「私達は、武道大会に参加する為に参りました! 参加者はこのヘラクレアと言う私の隣にいる女性です! 大会への出場は推薦ですが、特別枠として飛び入りの参加者も募っているとお聞きしております! 是非とも、審査のほど宜しくお願いします!!」


 何とか十秒以内に言葉を収めたミシェル。

 息を切らし、帝国側の言葉を待つ。


「……分かりました、審査致しましょう。ですが、貴女が一緒に入国する理由は何でしょうか?」

「私は、薬師です。ヘラクレアの体調面と精神面の管理を務める、サポーターとして同行願います」


「……分かりました。ヘラクレアさんが審査を通りましたら、貴女の同行も許可しましょう──では、審査の者がそちらに参りますので、門から少し離れてお待ち下さい」


 スピーカーからの声が途切れ、風のそよめきが二人の髪を撫でる。二人は、男の声に従い門から少し離れ、審査する者を待つ事に。


「──ねえ、武道大会に出るなんて聞いてないんだけど……」

「今、初めて言いました。でも、ヘラクレアなら審査など楽勝で通ると思いますよ? 多分ですけど、審査は戦闘になるでしょうから」


 この一週間、ヘラクレア対魔物との戦闘を見てきたミシェルは、この審査を通る絶対的自信を持っていた。そして、


『ゴゴゴゴッッ』


 二人が審査する者を待っていると、鉄の扉が開く音とともに、一人の男が扉から現れる。


「お待たせしました。審査を務める者です、お手柔らかに」


『ゴゴゴゴッッ』


 迷彩柄の上下に黒いベストを着た、金髪碧眼の男が二人に挨拶をする中、鉄の扉が閉まる。


「それで、審査は何をするのですか?」

「勿論、戦闘です。私はこう見えても、此処に駐在している兵士の中で一番強いですよ」


 ミシェルが男に問い掛けると、やはり『戦闘』、を見る審査だと答える男。その言葉に、ヘラクレアが前に出る。


「だったら、ちゃっちゃと戦おうよ」

「おやおや、気が早いお嬢さんだ……まあいいでしょう。では、ルールは二つ──相手に参ったと言わせるか、相手を気絶させた方が勝ち。武器の使用はお任せします」


「分かったよ、さっさと来な」


 男がルールの説明を終えると、ヘラクレアは人差し指で『こっち来な』と、安い挑発をする。


(この女! 帝国兵士の俺に向かって、舐めた真似しやがって! 瞬殺してやる!!)


 どうやらヘラクレアの挑発は成功したらしく、心の中で憤怒する男。だが、その怒りを表情に出す事なく、至って冷静な態度を装い構えた。


「では、始めます」


 男はそう言うと、ヘラクレアに駆け寄る。


 男の作戦はこうだ──


 姿勢を低くし、ヘラクレアの目前まで迫る。そして、タックルを匂わせガードの体勢を取らせたら、すかさず後ろへ回り込み、首に手を回して締め上げて終わり。


 しかし、そう上手くはいかない。


「ゴフッ──」


 ヘラクレアの目前に迫った男、後ろへ回り込むつもりが、体を九の字にして吹き飛ばされ──気絶した。


 この間、僅か二秒の出来事である。


 常人には目視出来ない場面。兵士がヘラクレアに駆け寄るスピードも目では追えないほど速かったが、それをいとも簡単に撃破したヘラクレアのスピードは、まさに神速の域だった。


 まあ、彼女として少し膝を突き出しただけなのだが。

 

「──お見事です。審査を通りましたヘラクレア様は入国を許可し、一週間後に行われる武道大会に出場して貰います。また、サポート役の薬師の方も同行を許可します。それでは、入国の為、扉を開けますのでお待ち下さい」


 スピーカーからの声が途切れ、鉄の扉が開き始めた。

 そして扉が開くと、四人の兵士が現れる。


 四人の内、二人は気絶した審査役の兵士を運び、残りの二人はヘラクレアとミシェルを扉の中へと案内する。


 こうして、無事に帝国へ入国を果たした二人、だが──


 後方の森の中から二人を熱く見つめる視線に、気付いてはいなかった……。


「──おいっ、行ってしまったぞカイゼル!」

「まあまあ、焦りは禁物だぜ? 兄者」


「フンッ。しかし、あの女が本当にヨシュアだと言うのか? あやつは西に向かったのだろ?」

「そう思わせて、女に変装してるのかもしれないだろ。それに、あの女の子の戦闘見ただろ? ヨシュアそっくりじゃんか」


「まあ、確かにそうだが……何か府に落ちん」

「とりあえず、俺達も後を追って入ろう」


 そう言って、ヘラクレアとミシェルの後を追い始める男達。

 容姿端麗な男達(悪魔)が二人に迫るのも時間の問題であった。

しばらくヘラクレアとミシェルの活躍を書いていきます! お付き合いのほど、宜しくお願いします。


ブクマと評価の方も宜しくです!

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