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お人よし悪魔と駄女神さま  作者: 瑞沢ゆう
三章 探し求める者
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魔界出発、前夜

遅くなりましたm(_ _)m

──魔界出発を控えた夜。城のバルコニーで、丸く大きな月を見上げていたヨシュア。その肩に、女性らしい肉付きをした手が遠慮がちに置かれた。


「ヨシュア──お主は王となり、この地にその身を沈めるのか? 我の元には戻ってきてくれぬのか?」


 小柄の体を震わせ、ヨシュアからの答えを待つリリン。だが、なんとなく答えは分かっていた。


「ずっと王かは分からないけど、俺は此処に居たい」

「そうか、我も此処に居ようかな……なんて、冗談──」


「リリンがそうしたいなら構わないよ」

「えっ……もしかして。それは、プ、プロ、プロポ──」


「あっ、こんな所に居やがった! リリン、ズルいわよ! ヨシュアを独り占めしようなんて」


 リリンの言葉を遮るように、タイミング良くバルコニーにやって来たメーサは、リリンとヨシュアの間に割って入る。


「なんじゃお主は! 今良いとこだったのだぞ!」

「知らないわよそんなの! それより、良いこと思いついたから耳貸しなさいよ」


 メーサはそう言うと、リリンの耳元で何かを相談しだした。


「うむうむ、なに!? そ、それは……名案じゃ!」

「フフッ、でしょ?」


 何やらとてつもなく下卑た笑みを浮かべた二人は、ヨシュアの腕を掴み、連行していく。 


「えっ? ちょっとなに? どこ行くの?」


 不安気な表情をして二人に問うヨシュア。だが、その問いに二人が答える事は無い。それがさらにヨシュアの不安を煽り、一体何が待ち受けているのかと、恐怖を覚えさせていた。


「──さあ、準備は出来たぞ」

「そうね、後は覚悟だけよ」


「何を言っておる、覚悟などとうに出来ておるわ」

「それもそうね、野暮な事言ったわ」

「俺は覚悟出来て無いんだけど……何でベッドに縛られてるのかな?」


 現在、連行されたヨシュアは自室のベッドに手足を縛られて拘束されていた。


「何を言っておる。ヨシュアは覚悟などしなくて良いのだ。ただ、快楽に身を委ねれば良い」

「そうよ、責任なんて感じなくて良いの」


 舌舐めずりをしながら話す二人の姿に、段々とこれから何をされるのか分かってきたヨシュアは、青ざめた顔をして縛られている縄をほどこうともがく。


「無駄よ、この縄はアダマンを合成して作った特製の縄。いくらヨシュアがもがこうと千切れないわよ」

「そうじゃ、無駄な抵抗は止めて我らと契ろうぞ」

「ちょっ! 何脱いでるんだよ二人とも! こんなのおかしいと思うよ!? こういうのは愛し合った二人が──」


「ヨシュアは我らが嫌いか?」

「嫌いなの?」


 スルスルと服を脱ぎながら、目を潤ませて問い掛けるリリンとメーサ。そんな瞳で見つめられれば、とてもじゃないが嘘でも嫌いだとは言えなかった。


「……嫌いじゃないよ」

「ならば好きか嫌いかハッキリ申せ」


「好き? かな……」


 ヨシュアの言葉を聞いた瞬間、二人の目付きが獣のそれと同じに変わる。


「言質は取ったぞ!」

「でかしたリリン!」


 二人は喜び勇んだ表情をしてヨシュアへと飛び掛かる。こうして、ヨシュアの貞操が破られた……かと、思ったその時──


「お待ちなさい! 貴女達!!」

「お、お主は!」

「動けないようにした筈だったのに!」


 ヨシュアのピンチに現れたのは、俵巻きにされ拘束されていた筈の、ララだった。 


「私を誰だと思っているのかしら! 豊穣の女神、ララ・デメテールですわよ!」

「そんなの知らぬわ! 今良い所なのじゃ、退け!!」


 リリンの恫喝にも一切退かず堂々と佇むララ。そして、ララが解読不能な何かを呟くと──


「な、何よこれ!?」

「なんじゃこれは!? 離せ!」


 裸体を晒しギラつく二人を、得体のしれない触手が拘束していた。


「ヨシュア様、大丈夫ですか?」

「ああ、助かったよ。ありがとう」


 ヨシュアの拘束を解き心配そうに見つめるララに、手首の痕をさすりながらお礼を返すヨシュア。


「では、私はあの二人にお仕置きをしなければいけないので、ヨシュア様は別室でお休み下さい」

「お、お仕置き? 一体何を──」


 お仕置きの言葉に不安を覚えたヨシュアは、その内容を聞こうとするが、最後まで言葉を発する事なく背中を押されララに部屋を出されてしまった。


「そんなもの入れたら我はおかしくなる! 止めてくれ!」

「私まだ初めてなの! こんなので散らしたくない! あっ、だからってそっちはダメ!」


 二人の恐怖に満ちた声に、背筋が凍ったヨシュアはそそくさとその場を後にする。そして、ヨシュアは改めて思った。この世界には知ってはいけない事が有るんだと──


「「いやっー!!」」

「フフ、フフフ……フハァハハハハハ──」


 一夜明け、翌日の朝。城ではなく邸宅で一晩過ごしたヨシュア。恐る恐る城に戻り、食堂へと行ってみるとおしとやかに座る三人姿が見えた。そして、何故かお仕置きを受けたリリンとメーサの顔色が、艶々していたのだ。


「お、おはよう」

「「「おはようございます、ヨシュア様」」」


 ヨシュアが朝の挨拶をすると、何故か三人ハモり、そして何故か『ヨシュア様』と、いつもと違う呼び方をするリリンとメーサに、うすら寒いものを感じたヨシュア。どんな事が有ったらこんな風になるのか問いたいが問えない、そんな朝の朝食だった。


 そんな朝食を終えたヨシュア達は、いよいよ魔界出発の為、レメクを待つだけとなった。そして、


「おう、みんなおはよう!」


 爽やかに挨拶をするレメクが現れ、気まずい雰囲気に耐えきれなかったヨシュアはすがるようにレメクへ飛び付いた。


「待ってたよ、レー君」

「お、おい! なんだよ気持ち悪い、くっつくなよ!」


「だって、あれ!」

「あれ、って何だよ!?」

 

『あれ』の正体を探すため周囲を見渡すと女子三人と目が合う。


「「「おはようございます、レメクさん」」」


 揃いも揃って同じ言葉と動作で挨拶する三人に、玉を潰されるような寒気を覚えたレメクは、ヨシュアを引きずりながら、急いで食堂を後にした。


「何なんだアイツら!? 滅茶苦茶怖ええ……」

「だよね……」


「一体何が有ったんだ?」


 レメクの問いに、ヨシュアは昨晩の出来事を説明する。すると、レメクがたった一言ヨシュアへ返す。


「自業自得だ」


 それは多分、ヨシュアと女三人に向けられた言葉だ。そして、人の恋路に構ってられるか、と言わんばかりにヨシュアを引き剥がしレメクは食堂へと舞い戻る。


「俺とヨシュアは先に外で準備してっから、準備が出来たら来てくれ」

「「「分かりました、レメクさん」」」


(やっぱ怖ええ……)



──数十分後、準備が整った一同は、皆の見送りを受けていた。


「いってらしゃいませヨシュア王!」

「ヨシュアお兄ちゃんいってらしゃい!」

「「いってらしゃいませ!」」


「ああ、皆行ってくるよ!」


 アダムとイブや町の人々から見送られ、天空馬車は飛び立つ。


 魔界の闇に向かって──


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