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お人よし悪魔と駄女神さま  作者: 瑞沢ゆう
二章 エノク奪還編
31/68

開拓の様子&帝国へ

──一ヶ月後、ヨシュア邸周辺を取り囲む様に、開拓を始めたレメク含む開拓団。住居や周辺設備など、暮らしに必要な施設は粗方揃ろい、少し落ち着きを取り戻し始めていた。


 順調な開拓には天界のドジっ子こと、ララの力が大きく貢献していた。


「ララさーん、此方も頼むぜ!」

「あー! 何してんだよララさん!! 俺の家壊すなよ!」

「ごめんあそばせ。手元が狂ってしまいましたわ」


「手元が狂ったってレベルかよ……」


 自分の家を貫く樹木を唖然として見る男。折角建てた自分の家を早々に壊された男の目は、若干涙目だ。


「まあまあ、家ならまた建てれば良いさ。ララさんも悪気があった訳じゃないんだ、あんまり責めてやるなよ」


 家を壊され気を落とす男に、励ますような言葉を掛ける少し小太りな男。その言葉に、家を壊された男は何かを指差して答える。


「あれ見ろよ」

「ん? 一体なんだって──」


 指差す方向に振り向いた小太りな男は、衝撃の光景に叫びを上げた。


「あー!! ありゃ俺の家じゃねえか! ちょっと、ララさん! なんて事──」


 自分の家から樹木が突きだした光景を見た小太りな男は、ララに文句を言おうと声を上げるが、それを止める様に、最初に家を壊された男の手が肩に置かれた。


「な、なんだよ!?」

「また建てれば良いんだろ? 悪気は無いから責めんなよ。へへ」


「…………」


 ぐうの音も出ないとは、この事か……。


 兎も角、凄腕の魔法使いと認識されているララの協力(創造と破壊)の元、開拓は急速なスピードで進んでいく。


「おい、ララさん! 道の真ん中耕してどうすんだよ!」

「おい、ララさん! 水が欲しいとは言ったが、俺にぶっかけろとは言ってねえよ!」

「もう、皆さん文句が多いですわね」


 そんな自由奔放なララの元に、困り顔のアダムがやってくるが、そのアダムの顔は、少し老けた様に見えた。


「ラ、ララさん……張り切ると疲れますから、休んでいて下さい」

「大丈夫ですわ!! 私、こんなに頼られる事が素晴らしいとは思いませんでした。まだまだ、頑張りますのでお気になさらずに。あっ! 彼処に困っているお方が」


 そう言って、走り出すララ。

 アダムの言葉(懇願)は、届かなかった。


(父さん、町を作るとはこんなにも大変なのですね……)


 レメクから領主の勉強だと、開拓の責任者を任されていたアダム。だが、連日届くクレーム(ララの事)に頭を悩ませていた。


 最近では、責任者を任されたのではなく押し付けられたのでは? と、疑心暗鬼に陥るアダム。そんな彼の困難はまだまだ続く……。


「ちょっと、ララさん!!」

「あちゃー」


(父さん、もう辞めたいです……)


 一方、スネークの元に潜入中のヨシュアは──



──エノクの町『領主邸』──


「ヨシュアさん、おはよう」

「ヨシュア殿、おはようございます」

「おはようございます。今日も朝からご苦労様です」


「いえいえ、これぐらい屁のカッパです!」

「そうです、ヨシュア殿も何か有りましたら、何時でも言って下さい」

「ありがとうございます。そうだ! また、皆で懇親会しましょうよ、皆の日頃の労を労いたいです!」


「それは是非!」

「いやはや、楽しみですな」


 メイド、執事とそんな会話をするヨシュア。すっかり場に馴染み、その素直さと優しさで評判の方もうなぎ登りのようだ。


(そろそろ動いても怪しまれないかな?)


 皆と打ち解けた事で『そろそろ動き出すか』と、思案するヨシュア。そんなヨシュアに、スネークから呼び出しがかかる。


「ヨシュア殿、スネーク様がお呼びです」

「ああ、はい。直ぐに行きます」


 呼びに来たのはやつれ顔の執事。


(今までの従者とは確かに違うようだが、何か引っ掛かる。何かと言われれば分からんのだが……まあ、もう少し様子を見ていよう)


 執務室へと向かうヨシュアの背中を見て、彼はそんな言い知れぬ不安を抱いていた。

 

 そして、さらに後方からヨシュアの背中を睨むように見つめる者がいる。


(皆が騙されたって、私は騙されない! 必ず私を狙っている筈、ケアは欠かさないんだから!!)


 一人、違うベクトルを向くメイド。誰かは説明するまでもないだろう。最早、襲って欲しいのでは無いかと、思わずにはいられない思考をする、メイドだった。



「──二日後、帝国へ向かうため出立するぞ」


 呼び出しに現れたヨシュアに、唐突にそう話すスネーク。突然の出立、しかも向かう先が帝国だと聞いたヨシュアは、思考の海へ浸る。


(帝国? 確か、人間界では一番大きな国だよな。闇ギルドに作って貰った身分証も、確か帝国と書いて有った筈……此処からだとかなり距離が有るけど何でまた帝国なんだ?)


「おいっ、聞いておるのか」

「は、はい! ……しかし何故、帝国に?」


 スネークに思考の海から引きずり出されたヨシュアは、自身の疑問を率直にぶつけた。


「うむ……まあ、知り合いが居てな。帝国に向かった後はカイン王国、そしてアベル王国首都に向かう。準備をしておけ」

「あ、はい。それで、期間はどの位ですか?」


「約二ヶ月ほどだ」

「そうですか……ですが、そんなに空けて、エノクは大丈夫なんでしょうか?」


「反乱分子は始末した。何を心配する必要がある? それに私の私兵はほとんど町に置いていく。お前が居れば私の方は安心だしな」

「確かに、その通りですね。では、自分は準備しますので、失礼します──」


 スネークの話を聞いたヨシュアは、これはチャンスだと思った。二ヶ月も不在にするなら、レメク達を呼び戻し町を取り戻す事が出来る、と。


 そして、戻ってきた頃に悪事の証拠を掴んでいれば、スネークを陥れる事が出来るかもしれない。

 

(レメクに相談しに行かなきゃ)


 そう思ったヨシュアは、急いでレメクの元へ向かって行った──

 


──西の開拓地『ヨシュア邸』──


「──確かに、チャンスだな」


 ヨシュアからスネークが二ヶ月不在になる話を聞いたレメクは、神妙な顔をして頷いた。


「でしょ! だから、出発する前に屋敷に何か証拠が無いか探ってみるよ。だいぶ怪しまれないようになったしさ」

「ああ、頼んだ。それと、もう一つ頼み事なんだが、俺を王都まで運んでくれねえか?」


「王都? 良いけど、なんでまた?」

「まあ、ちょっと伝が有ってな」


 何か企んでいる様な表情のレメクに、ヨシュアは不審に思いながらも、この顔は何かいい考えが浮かんでいる顔だと認識し「分かった」と、短く返した。


「悪いな。なら、早速連れてってくれ」

「良いよ──あっ、それよりさ、ここまでやってなんだけど……俺がスネークを始末すれば済むんじゃないかな?」


 確かに、スネークを始末すれば今回の一件は済みそうなものだが──それを聞いたレメクは首を横に振った。


「それじゃダメだ」

「えっ、どうして?」


「確かにスネーク自体はそれで済むかもしれん。だが、この町の状況を考えると、得策じゃねえ。スネークを始末すると、この町はまた領主不在になっちまう。いいか、この町は前、領主様の力で発展を続けていた。それに答える様に住民も、町に富をもたらすため奮闘した。そのお陰でこの町は辺境に有りながら潤ってる。そんな町が領主不在ならどうするよ?」

「他の貴族が奪いにくる?」


「ご名答。スネークみてえな悪い貴族は他にもいるんだ。そんな奴等に目を付けられるのは間違いねえ」

「でも、アダムはお父さんが嫌われてるから、スネークしか来なかったって」


「それは違うな。スネークしか来なかったんじゃなくて、スネークが他の貴族を止めてたんだろ。金も結構払ったんじゃねえか?」

「成る程……スネークならやりそうだ」


「でだ、そんな状況を打破するには、悪どい貴族達を一網打尽にしてえ。スネークの尻尾にはそんな貴族が連なってる」

「もしかして、それもあって王都に?」


「まあな……な、なんだよ、その顔!」


 ニヤニヤしながら見るヨシュアに、恥ずかしそうに怒鳴るレメク。ヨシュアはそんなレメクに言葉を返す。


「いや、流石レー君だなーって──やっぱり、王様はレー君の方が似合うよ。レメク王」

「う、うるせえ! と、兎に角、よっちゃんは、潜入を続けてくれ。それに、帝国とカイン国に行くってのも気になる。そこでまた悪巧みしてるようなら、何か証拠を掴んどいてくれると助かる」


「仰せのままに──レメク王」

「て、てめえ、まだやんのか!」


「ハハッ、ごめんごめん」

「たっく……」


 ふざけるヨシュアに呆れるレメク。だが、ヨシュアが笑顔で笑う時の目の奥に、光が戻っているように見えたレメクは少しばかり安堵していた。


(こいつが本気出せばそんな悪どい連中も始末出来るんだろうが……そんな事──させたくねえ。だから、面倒で遠回りだが、頼んだぜヨシュア)

ブクマ、評価して頂けると脳汁出ます!( ̄- ̄)ゞ

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