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お人よし悪魔と駄女神さま  作者: 瑞沢ゆう
二章 エノク奪還編
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開拓団の行方&懇親会

「──では開拓団の諸君、頼んだぞ。人数が増えていたのには驚いたが、開拓を進めるのに人が多い事に越した事はない。そう、思わんかね──レメク卿」

「そうですな、人数が増えて助かります。それより、今回の暴動の一件、大変申し訳ありませんでした。私が不在だったとはいえ、騎士団が暴動を先導していたのは明白。それを温情により寛大な処分(入国禁止)で済ませて頂いた事、感謝に尽きません」


「良いのだよ、騎士団は国に良く尽くしてくれた。今後は流浪民となるが、気を落とさず頑張ってくれたまえ。おや……そうなると、レメク卿もただのレメクか。フヒヒヒッ」


 わざとらしく皮肉を吐くスネークに、騎士団は怒りに震え、今にも暴動を起こしそうだ。


「そうだな、スネーク。国に属さないとなると、あんたに頭を下げる必要もないな?フッ──よっしゃ! お前ら行くぞー!!」

「「おー!!」」


 レメクの号令により、西門を出る開拓団。騎士団五十名弱、エノクの民二百五十名による、一大開拓団だ。


 先ほど、スネークが『増えた』と言っていた者達だが、彼等はアダムとイブが酒場に訪れた時に居た連中だ。レメクは彼等にも開拓団の誘いをかけていた。


 一番の理由はアダムとイブの事が洩れるとまずい、という事なのだが、人数が増えれば開拓(国作り)も少しは楽になるだろうと考えたのだ。


 まあ、町に根をはる者達ばかりなので、全員は来ないと思っていたのだが、この日集結した者達は、あの時酒場にいた者全てだった。


 嬉しい誤算に、レメクは改めて前領主含め、アダムとイブが慕われている事を実感した。


「チッ、忌々しい奴だ……ヨシュア、後は頼んだぞ。奴等を荒れた地に沈めてこい」

「仰せの通りに」


 出発した開拓団に渋い表情をするスネークは、側に仕えていたヨシュアに開拓団の始末を命じる。ヨシュアはそれに頭を下げて答えると、開拓団の後を追った。


 その姿を見送るスネークは、ほくそ笑む。良い駒を手に入れた、と。


 今回の計画の一端として、反乱分子の追い出しと始末を考えていたスネークは、開拓団という名の反乱分子達を私兵を使って始末する気だった。


 しかし、あのエデン騎士団だ……私兵を投入しても返り討ちに合う可能性が高い。その時は、国に牙を剥いた者達として、国に死刑を求める腹図もりだったのだ。


 そして、エデン騎士団が死刑になる確率は高い。国の中枢にいる貴族達はほぼ全て、スネークの手が回っており、彼等が思惑通りに動いてくれるのは間違いない。


 彼等には、たんまりと金を献上し、かつ弱味を握っているのだから。


(良い買い物をした。アイツに払う金は高いが、それだけの価値が有る。これで、権力(辺境伯の地位)と(ヨシュア)を手に入れた私が、王になる日も近いな)


「フハハハハッ」


 確実に、ヨシュアが騎士団を殲滅するだろう、と考えたスネークは上機嫌で王となる後の自分を想像し、高笑いを上げていた。


──それから一時間後、荒れた地を進む開拓団の先頭を進むレメクに、ヨシュアは声を掛ける。


「いや~、凄い荷物だね……町でも作るみたいだ」


 開拓団の行列には、大量の物資(食料や材木)を運ぶ一団がいる。それを見て、率直な感想を述べるヨシュア。

 それに対してレメクは、呆れた顔をしてヨシュアに答えた。


「かっ~、みたいじゃくて作るんだよ! 町どころか何れ国をよ。よっちゃん、やる気あんの?」

「いや、なんか国を作るなんて、想像出来なくて……」


「全く……一国の主になるんだ、もっとしっかりしてくれよ」

「えっ!? やっぱり俺がやるの? レー君の方がそういうのは似合うと思うんだけど……」


「魔王と呼ばせてやる! とか言ってた奴が、良く言うよ──それにな、俺はこの国で偉くなるって事がどんだけ面倒だか学んだんだ。だから、王になんか絶対なんねえ……頼んだぞ、ヨシュア王!」

「え~、ズルいよ……あっ! 王様ってどっしり構えているものだよね? ──頼んだぞ、レメク大臣」


「うげっ、そう来たか……しょうがねえ──お任せあれ、王よ」

「ハハッ、俺の国の大臣とか、大変そう……」


「人ごとだと思いやがって……おっ、そうだ。そんな事より戻んなくて大丈夫か? あんまり帰りが遅くなると、怪しまれるんじゃないか? どうせ、俺達の暗殺でも頼まれてんだろ?」

「流石、レー君! その通りだよ──それじゃ、そろそろ戻るね。あっ、でもさ、何か証拠とか持っていった方が良いかな? レー君の首とか」


「どさくさ紛れにあぶねえ事言うなや! ……まあいい、だったらこれ持ってけや」


 そう言って、腰にぶら下げた剣を抜きヨシュアに差し出すレメク。この剣は、レメクが騎士爵を前領主から任命された際に、賜ったものだ。


「良いの? これって、大事なものなんじゃ──」

「良いんだよ! どうせ、後で取り返すからよ」


「……分かった。じゃあ、俺が大事に預かっておくよ」

「ああ、頼んだぞ……ほらっ、早く行け」


 そう、ぶっきらぼうに返すレメクは、ヨシュアの前に片手を差し出す──それを固く握ったヨシュアは「行ってくる」と、短く返し、エノクの町へ戻っていった。


(頼んだぞ、ヨシュア)


 

──エノクの町『領主邸』──


「開拓団の殲滅、無事に完了しました」


 領主邸へと舞い戻ったヨシュアは、執務室へ報告に来ていた。


「そうか、ご苦労……んっ? それにしても血の匂いがせんが?」


 血の匂いがしない事を怪しむスネーク。それに対して至って冷静にヨシュアは返す。


「スネーク様の前で血の匂いをさせるのは失礼かと思い、身を清めて来ました。それに、返り血を浴びるほど自分は間抜けでは有りません。後、証拠として、レメクなる者の剣を持って来ました」


 自信あり気に話すヨシュアに、スネークは表情をニヤリとさせ言葉を返す。


「そうか、それは失礼した。おお、確かに前領主の印が入っておるな……ならば、報酬は何が良い? 女か? 金か?」

「では……この屋敷にいるメイドと執事を好きに使っても宜しいでしょうか?」


(ほう、こいつ両刀使いか……私と趣味が合うな)


「ヒヒヒヒッ、良いだろう。私の世話人を残して置けば特に問題はない。好きにしろ」

「ありがとうございます」


(遂に本性を表したか、獣め! ああ……私の貞操(後ろの)も散ってしまのか……)

  

 二人のやり取りを見ていたやつれ顔の執事は、そんな勘違いをして顔を青ざめさせていた。


「では、そこの執事さん。皆をロビーに集めてくれませんか?」


 唐突にきたヨシュアの言葉に、ドキッとするやつれ顔の執事は、「は、はい!」と、なんとか返し、執務室を後にする。


(ま、まずいぞ! 見た目の良いメイドや執事は後ろに並ばせて何とか誤魔化せねば!)


──数分後、領主邸ロビーにて。


「──皆さん、お忙しい中、集まって頂きありがとうございます。今日は皆さんに、お願いがあって集まって頂きました」


 ロビーに集められた執事やメイド達は、そんなヨシュアの言葉を固唾を呑んで聞いていた。


(何をさせられるんだ)と、戦々恐々としながら。


「それで、お願いというのは──広間で懇親会をしたいと思うので、食事等の準備をお願いしたいんです。量は執事やメイドの皆さんが満足出来る量をお願いします。良いですか?」

「は、はぁ。畏まりました……」


 代表して答えるやつれ顔の執事だが、その表情は困惑を極めていた。


 何故急に懇親会なんだ? もしかして、仲間を呼んで騒ぐつもりか? 大人数で騒いだ挙げ句、欲望の限り襲うつもりなのか? 


 数々の疑問が浮かぶ執事やメイド達は、そんな不安を抱えながら、言われた通り準備を進めていった。


──そして、準備を終えた一同は、再度広間に集められた。


(仲間の様子が見えない……一体どういう事なんだ?)


 一向に現れないヨシュアの架空の仲間に不安な表情を浮かべる一同。そこにやって来たヨシュアの上げる言葉を、聞き逃すまいと静けさが広がっていく。


「──皆さん、準備、ご苦労様でした! それでは、懇親会を始めたいと思いますので、皆さん、グラスを持って下さい!」

「「…………」」


「……あれ? どうしました?」

「すいません。皆さんとは私達の事でしょうか?」

 

 ヨシュアの問いに、やつれ顔の執事が答える。


「勿論ですよ! 皆さん以外に誰が? さあ、早くグラスを持って下さい!」

「は、はあ……皆、グラスを持って」


 やつれ顔の執事の言葉に、ぎこちない動きでグラスを持ち始める一同。皆がグラスを持った所で、ヨシュアの声が再度上がる。


「では改めて……今夜は大いに飲み、そして、騒ぎましょう! 乾杯!!」

「「か、乾杯」」


 こうして、大きく温度差がある懇談会が開かれた。


「じゃあ、皆さん。食べましょう! どれも美味しそうだ」

「えっ、私達も食べて良いのですか?」


 やつれ顔の執事が戸惑いの声を上げる。


「なに言ってるんですか、勿論です! 皆で食べて飲んで楽しみましょうよ!」


 ヨシュアの言葉に一同に動揺が走る。私達と懇親会などして、一体何が目的なのか? 全く意味の分からない展開に、頭を悩ましていた。


 そんな一同の一人一人に──ヨシュアは声をかけ酒を飲ませ、世間話をする。そして、全員をヨシュアが周り終わった時には、皆酒が回り、まさに宴会に相応しい騒がしさになっていた。


 皆と会話をした事で、執事やメイド達はヨシュアに対する見方を随分変えていた。

 それまでは、怪しい従者と思っていたのを、変わってるけど気さくで優しい人、という様に。


 こうして、ヨシュアの掌握作戦(皆と仲良くなろう!)は見事に成功する。


 だが、若干二名ほど、未だにヨシュアに対して警戒を強めている者がいた。やつれ顔の執事とヨシュアが最初に発見して仕事を手伝った、見た目の良いメイドだ。


((きっと、抵抗出来なくなるまで飲ませて、私達を公開レイプする気なんだ!!))


 そんな要らない心配をする二人──この二人の洗脳を解くのは苦労しそうだ……。

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