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お人よし悪魔と駄女神さま  作者: 瑞沢ゆう
二章 エノク奪還編
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前を向いて

「──エリーユに関しての話はここまでかな」

「その後は?」


「世界樹の後遺症なのか分からないけど、力に目覚めた俺は荒れた──敵対するものに手当たり次第。それを父さんに利用され、色々やらされたりもした。だけど、じいちゃんが亡くなって、ふと気付いたんだ──俺、何やってんだろうなって。それで、こっちに来たんだ」

「そうか……」


 ヨシュアの話を聞き終えたレメクだったが、かける言葉が中々出ない。そもそも、自分の兄が原因で起こった不幸であって、ヨシュアを責める要素は見付からない。


 ただ、ヨシュアにしたら、実際にエリーユを死に至らしめたのは自分だと、責めるだろう。自分が同じ立場なら、殺して欲しいほど自分を恨むかもしれない。


 だが、この事件を乗り越えなければ、ヨシュアが幸せだと思える事は無い──そう思うと、動かずにはいられなかった。


『ゴンッ!』


「ちょっと! 殴る事ないでしょ! ヨシュアは悪くないわ!!」

「分かってる! だがな……友ならこうするべきだ」


「意味分かんないわよ!!」

「いや、ありがとう……レメク」


 倒れこんだヨシュアは、口の縁に付いた血を指で拭いながら、レメクに向かってお礼をする。そして、


『ゴンッ!』


 立ち上がったヨシュアもまた、レメクを殴りつける。


「あんたら何してんの!? 止めなさいよ!!」


 睨み合う二人を止めるため怒鳴るメーサ。しかし、二人の空気はいつ殴りあいが始まってもおかしくない。


 そんな時、レメクが口を開いた。


「言いてえ事があんなら言えよ」

「なんで……」


「なんだよ! ハッキリ言えよ!」


 言い淀むヨシュアの胸ぐらを掴み、叫ぶレメク。それに答えるように、ヨシュアもレメクの胸ぐらを掴み、自分の気持ちをぶつけ始めた。


「なんで居なくなったんだよ!! お前が居れば、こんな事にはならなかっただろ! なんで……俺は、エリーユを殺してしまったんだ!! メーサも……なんでエリーユを止めてくれなかったんだ! あいつの性格なら皆を助けようと、突っ込んでいくのは分かりきっていたのに!! なんで、なんで俺は……」


 涙と鼻水で顔を濡らし叫ぶヨシュアを、レメクは力強く抱きしめる。


「良く言えたなヨシュア。そうだ──お前だけが悪いんじゃない。俺達も悪いんだ、だからお前だけ業を背負うなんて許せねえ。俺達にも背負わしてくれよ」


 ヨシュアと同様に涙と鼻水を流し、そう返すレメク。

 

「そうよ! ヨシュアだけズルいわよ。私達も一緒に歩かせてよ! 私達……友達でしょ」


 メーサもまた、涙と鼻水で顔をぐちゃぐちゃにしながら、ヨシュアを後ろから抱きしめた。


 その晩、三人は体を寄せ合い泣きはらした──



──次の朝。


「──三人ともどうしたんですか?」

「凄い顔だよ~」


 朝食の席でアダムとイブは、酷い顔をしたヨシュア達を不思議に思い、そんな言葉をかける。昨晩、泣きはらした三人。寝不足も相まって、そりゃもう酷い顔だ。


 アダムとイブは昨晩の話を知らない。重々しい雰囲気になった時、ララが気を使って、二人を二階に上げていたのだ。勿論、ララはリビングのドアの前で、ヨシュアの話をこっそり聞いていたが。 


「あっ、そう言えばヨシュア様は、今日から留守なんですわよね!?」


 ララが話をそらすようにヨシュアに問いかける。


「ああ、そうだよ。しばらく留守にするけど、メーサも此処に居てくれるから、二人で留守を頼んだよ」

「やっぱり、貴女もいるんですか」

「悪いかよ! ……まあ、仲良くしてよ」


 相変わらず一触即発のララとメーサだが、メーサが少し歩みよっている様なのでしばらくは持ちそうだ。


「悪いな、よっちゃん。巻き込んじまって」

「本当に申し訳ありません」

「気にしないでよ。俺に出来る事ならなんでもするさ! ほらっ頭上げて」


 相変わらず人が良いヨシュアは、二人にそう返し、頭を上げさせる。アダムとイブはそんなヨシュアに「ありがとう」と、口々にお礼を言い、和やかに朝食が続けられた。


 そして、ヨシュア出立の時──


「それにしても、本当に此処に来て良いのか?」

「ああ、勿論だよ。賑やかで楽しそうじゃないか! でも、此処まで来るのは大変じゃない?」


「それは心配ねえ! 俺達エデン騎士団はタフだからな! 町の奴らも負けねえ位タフな連中ばっかりだしな、何とかなんだろ!」


 スネークによって突如発表された開拓団だが、実際の所は、反抗しそうな人間を集めた島送りのようなものだ。その開拓団を心配したヨシュアは、ある程度住む事には不自由しない自宅周辺に来たらどうかと、レメクに提案していた。


「でよ、俺思いついたんだが──どうせなら此処に俺達だけの国でも作ってみねえか? 国と呼ばれる規模になるかは分からねえが……戦いのない平和な国をよ」

「えっ? そんな事出来るの?」


「まあ、時間はかかるかもしれねえが……前を向いてやってれば、色々見えてくるものも有るだろ?」

「それ良いね! 私も賛成! ヨシュア王の誕生だね」


 レメクの提案にメーサが乗っかり、ヨシュアを煽る。  この提案、実はレメクとメーサで前もって相談していたのだ。兎に角、ヨシュアには前を向いて歩いて欲しい──大きな目標を作って共に歩けるようにと。


「うーん、二人がやる気なら良いと思うよ。ただ、ヨシュア王ってのは止めて欲しいけど……」

「よっしゃ! なら決まりだな。スネークの野郎を成敗したら、取り掛かろうぜ!」

「私も闇ギルの力使って協力するわ! 良い人材も(拉致して)連れて来れるかもしれないしね」


「なんだか凄い話ですね」

「アダム。お前も手伝うんだぞ」


「えっ僕もですか!?」

「あったりめえだ! お前が立派な領主になったらエノクとは協力関係にすんだからよ」


「え、あ、はい……頑張ります」

「イブも手伝うー!!」

「おう、イブも頼むぜ」


「それなら私は妃になるのですね。楽しみですわ」

「なに勝手に結婚してんだよ! てめえは妾ぐらい、いや、メイドで十分だわ!! 私が妃なんだよ!」


「言わせておけば! 貴女こそ庭師ぐらいがちょうどよくってよ!」

「あんっ! やんのかこら!!」


「ハハッ、楽しそうでなによりだね。それじゃ、僕達は出発するから──アダム、二人を宜しくね」

「はい! ヨシュアさんも気を付けて下さい!」


 やり合っている二人を置いて、ヨシュアは天空馬車にレメクを乗せ旅立つ。


 とぐろを巻き、舌を出して獲物を狙う、蛇の元に──

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