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お人よし悪魔と駄女神さま  作者: 瑞沢ゆう
二章 エノク奪還編
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声明×暴動

──エノクの町『広場』──


 ガヤガヤと人混みで溢れる広場。その中に、フードを被り携帯の電波表示のように小中大と並ぶ人影。


 そして、フードの三人は広場の中央に立つ人物を凝視していた。


「静粛に!! スネーク子爵様がお見えになる!」


 一人の兵士が、広場の中央を囲む民衆にそう叫ぶ。しかし、民衆は話す事を止めず広場は騒々しいままだ。


「ええい! 黙れ!! 黙らぬ者は牢獄にぶちこむぞ!!」


 兵士が脅しともとれる言葉を叫ぶが、民衆はさっぱり黙る気配がなく、兵士の威厳も形無し状態だ。


 というのも、この兵士は子爵が連れてきた兵士の一人であり、傍若無人な態度でこの町を闊歩するため、民衆からは大変に嫌われていた。


 誰がお前の言う事など聞くか! と、民衆の視線も冷めたものだ。


「貴様ら!! 口をきいた者から斬り殺すぞ!」


 とうとう我慢の限界にきた兵士は腰元の剣を抜くと、民衆へとちらつかせながら威嚇を始めた。


 すると、民衆は、「ふざけんなー!!」「お前みたいなヒョロヒョロに殺されてたまるか!」と、怒りを露にする。


「くっ! くそー!! お前らが悪いんだぞ!」


 思い通りにいかない民衆に兵士の苛立ちはピークへと達し、こともあろうに一人の女性を狙って剣を振り上げた──


「キャッー!!」


 女性の悲鳴が聞こえ、あわやという時、


「──あんちゃん、おいたが過ぎるぜ」


 と、フードを深く被った男が兵士の前に立ちはだかり、兵士が振り下ろした剣を籠手で受けた。

 唐突に現れた男に剣を弾かれ、動揺した兵士は震え声で呟く。


「な、なんだ貴様……」


 兵士の問いに、「ん、俺か?」と、フードを外す男。


「レメクさんだ!!」「おっー、レメクさんが助けてくれたぞ!」「レメク様カッコいいー!!」


 ヒーローの様に現れたレメクに民衆の喝采が沸き起こると、レメクはそれに答えるため片手を上げる。


「あ、ありがとうございました」


 助けられた女性が頬を赤らめながらお礼を言うと、「民を助けるのは騎士なら当たり前の事だ、気にすんなよ」と、スマートに返すレメク。


 そんなレメクは、おいたが過ぎた兵士へと向き直し、「自国民に剣を向けるとは兵士の風上にも置けねえ野郎だ!!」と、怒号を浴びせながら睨みを効かせる。


「ひぃっ! す、すいませんでしたー!!」


 レメクの怒号と鬼の形相に恐怖を覚えた兵士は、一目散に何処かへ消えて行った。


「たくっ、最近の若いのは肝が小せえな……」

「いやいや、レメクさんに怒鳴られれば誰だって逃げますよ」

「ハハッ、違いねえ」


 先程とはうってかわり、和やかな空気に包まれる広場。そんな時、「パカッパカッ」と馬の蹄の音が聞こえてきた。


「来なすったみたいだぜ。子爵様のお話とやら、黙って聞かせてもらうとするか」


 レメクがそう言って地べたにドカッと座り込むと、騒がしかった民衆はそれを機に、スネークが乗っているであろう馬車へと注視するのだった。


──人混みを分け、馬車が広場中央へと到着すると、先ず降りて来たのは仮面を付けたヨシュアとメーサだ。


 二人は周囲を警戒するようにキョロキョロと周りを確認すると、「異常有りません」と、馬車の中のスネークへと報告する。


 その後、ゆっくりと降りてきたスネークは二人を伴い、中央に置かれたお立ち台へと上がっていく。


「──ふむ」


 と、広場に集まった民衆を見渡すスネークは「ゴホンッ」と、咳払いをした後、腹に力を入れ声を上げる。


「よくぞ集まってくれた、エノクの民よ!! 今回、集まってもらったのは他でもない、王からの勅命を言い渡すためだ!! 私の言葉は王の言葉と思ってもらって構わない!」


 スネークの言葉に静まりかえっていた民衆は再び騒がしさを取り戻す。


「王からの勅命? 戦争でも起こすってのか?」

「さあ、でもいい予感はしねえ」


「静まれ!!」

 

 民衆のざわめきを一喝するスネークは、さらに言葉を続ける。


「先ず一つ、前領主のご子息とご令嬢であるアダムとイブの死に心から哀悼の意を」と、胸に手を当て悲しげな表情をするスネーク。なんとも白々しい。


「しかし! 悲しんでばかりいられないのも事実。エノクの町のため新しい領主を決めなくてはならない!」


「おっ、て事はとうとうレメクさんが領主か?」

「順当にいけばそうだろうな、この町を纏められるのはあの人ぐらいだ」

「あの人もやっと出世か」

 

 そんな、レメクの領主登用を期待する言葉が民衆からちらほらと呟かれるなか、民衆の期待を打ち砕く言葉がスネークから放たれる。


「そして、今回。エノクの町、新領主の勅命を承けたのは──私事、サマエル・スネークである!!」

「「スネーク辺境伯様、万歳!!」」


 声高々に宣言しながら手を上げるスネーク、それを称える取り巻きの兵士達。しかし、民衆は誰一人スネーク辺境伯を称える者は居ない。


 渋い顔や、眉間に皺を寄せる民衆を他所に、スネークはさらに衝撃の発言をする。


「そして、もう一つ……ここに、エノク開拓団を発足する!! 開拓場所は西の荒れ果てた土地! 団員は以下の通りである!」


 突然の開拓団発足の声明を出したスネークは、開拓団とは名ばかりの自身に害をなす、または今後反乱分子として芽が出そうな人員を読み上げていく。


 勿論その中にはレメクとレメクが団長を務める騎士団の名前も有った。


 レメクの開拓団入りは言わば領地替えの様なもの。レメクは前領主から町の一角を領地として賜れ騎士爵を名乗っていたのだ。


 スネークの理不尽な発言に民衆達は、「あんな所で開拓なんか出来るか!」「そうだ! 死ねって言ってるようなもんだぞ!」と、語尾を強め喚き出す。


 しかし、スネークはそんな民衆を気にする事なく開拓団の人員を読み上げ終わると、


「これは王からの勅命である!! 従わない者は相応の裁きを受けてもらう。また、開拓団出立は二日後、名前を読み上げられた者は直ぐに出立の準備をするように! 以上」


 言いたい事を言い切ったスネークは、スッキリした表情でお立ち台を降りていく、が──


 民衆の中からスネークの声明に怒りを露にした集団が、立ち上がっていた。


 その中にはレメクの騎士団や、主に開拓団入りを命じられた者達が殆どだ。


 そんな、総勢二百を超える集団は此処は戦場かと、錯覚するほどの闘志を剥き出しにし、スネークへと土煙を上げ迫っていく──

ここまで読んで頂きありがとうございます!

面白い、続きが気になると思って頂けましたらブクマ、評価を頂けると幸いです。



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