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お人よし悪魔と駄女神さま  作者: 瑞沢ゆう
二章 エノク奪還編
18/68

ようこそ闇ギルドへ、歓迎会?

ブクマ、評価、ありがとうございます!

「じゃあ──」

 

 ヨシュアが言葉を発しようとしたその時、


「いやー参った、何か凄いの居ると思って見に行ったんだけど誰も居なかったわ……って、どうしたメーサ? そいつ誰? てか、ここで仕事しちゃ駄目だよ」

 

 空気を読まずに現れた目付きの鋭い男は、メーサが知らない男の胸ぐらを掴み威嚇している場面を、てっきりお仕事中だと勘違いしてしまう。


「チッ、良い所で……クソマスが」

 

 もう少しの所でヨシュアの気持ちを知れたのに、と悔しい気持ちを悪態で表すメーサ。


「いやいやいや、そのクソマスっての止めろや! 俺のマスがクソみたいって言われてるみたいじゃん!? せめて皆みたいに『闇マス』って呼んで」

「そっちの意味も込めて言ってんのよ」


「……なーに!! 見た事あるんですか~? 俺のマスは世界一ですー!」

「世界一クソだな」


「くっー!! なら見してやろうか!? ──ホレ!」


 と、モザイクまっしぐらな行動を取る闇マス。悔しいのは分かるが……。


「で、どっちなの?」と、既に意識はヨシュアに戻っていたメーサは、闇マスの行動など眼中になかった。


「ちょっと!! 見てよ! 俺のマス見てよ!!」


 闇マスの必死な懇願も最早聞こえていないメーサ。大の男がなんとも哀れだ。


 そこに、先ほど消えたメーサの部下である男女が戻ってくる。


「お茶持って来ましたよ~って──何やってるんですか闇マス……」

「元々おかしい人だけど遂に変態にまで成り下がったか」


 部下の部下にあられもない姿を晒す闇マス。部下からの評価は地の底に落ちた(元々地の底だが)


「いや、これはね、メーサが悪いんだよ?」

「うわー、姉さん襲おうとしたの? 闇マス最低。これからはクソマスって呼びますから」

「同意。クソマス、そろそろ閉まって下さいよ。クソマスのクソマス」


「くっ……俺が悪いって言うのか」と、唇を噛み締める闇マス。


 流石にあの説明では自業自得だ。


「とりあえず、俺のマスの事は忘れてくれ……で、そいつ誰?」と、ズボンを履きながらメーサに問う闇マス。


「あっ? 誰だっていいでしょ」

「いやいや、そうはいきません。お仕事ならちゃんと俺を通せ」


 そう言いながら、闇マス雰囲気がガラッと変わる。どうやら仕事モードに切り替えたようだ。


「チッ! うるせえな! 私の旦那だよ!」と、何故そうなるのか? と、言う事を言い出すメーサ。己の欲が溢れ過ぎた結果かもしれないが。そして、


「「「「えっ?」」」」


 と、メーサ以外の全員の疑問が一致する。


「いやいやいや、そいつも『えっ?』って言ってるよね! 嘘ついちゃいかんぞ、メーサ」

「姉さん怖すぎる」

「振られた相手を旦那って」


「まだ振られてないわ! もう少しで落とせる所なの!!」

「……姉さん、それはちょっと苦し過ぎるよ」

「女って怖い……」


「もういいわ……で、君、誰?」と、聞く相手を間違えたと思った闇マスはヨシュアへと直接問い掛ける。


「申し遅れました、ヨシュアです。今日は闇ギルドに依頼をお願いしに来ました」


 と、胸ぐらを掴まれたままそう返すヨシュア。既に襟元はダルダルだ。


「ほー、それはありがたい事です。依頼とはどのような?」


 揉み手で一気に接待モードへと切り替わる闇マス。お客様は神様です、が闇ギルドのモットーである。


「ええ、実は身分証を二枚用意して欲しくて」

「それはそれは、でしたら金貨二十枚でお受け致しますよ。明日にでもご用意を」


(やっぱり金貨二十枚じゃないか……)と、メーサを見るヨシュア。


 メーサはその視線を避ける様に、横を向いて口笛を吹き誤魔化そうとするが、苦し過ぎる。


「金貨二百枚じゃ無いですよね?」と、一応聞き間違えかもしれない、と聞き直すヨシュア。


「金貨二百枚!? いえいえ、金貨二十枚で結構ですよ! もしかして……メーサが?」

「ええ、まあ……」


「そ、それは大変申し訳ありませんでした!! メーサ! お前、何時までお客様を掴んでるつもりだ! 早く離して謝れ!」


 闇マスが申し訳なさそうに頭を下げ、ヨシュアへ謝罪をすると同時にメーサを諭す。


 すると、メーサは『チッ!!』と、盛大に舌打ちをかますと、ヨシュアを離し、不貞腐れた表情で椅子へ座った。


「誠にすいませんお客様。お詫びといってはなんですが、今回は半額の金貨十枚でお仕事の方を承けさせて頂きます」

「本当ですか! それは助かります」


 良かったーと、安堵の表情をするヨシュア。それを見た闇マスも、何とか許して貰えそうだと安堵する。しかし、纏まりかけた案件をぶち壊すべく、メーサが口を開く。


「ああ、そういえば、さっきのクソヤバい殺気──ヨシュアがやったんだよ」と、ニヤニヤと悪い顔をして呟くメーサ。


「ほーう。それは本当か?」

「ええ、間違い御座いません」


「お主も悪よの~」

「へへっ、闇マスには負けますよ」

「「ふっははははは」」


 と、悪代官と越後屋のようなやり取りを繰り広げるメーサと闇マス。だが、その光景にヨシュアは何の事かさっぱり解らず首を傾げる。


 そんなヨシュアを置いて、メーサと闇マスは話を続けた。


「良いのか? メーサの知り合いなんだろ」

「ええ、寧ろ大歓迎よ。でも、ヨシュアは強いわよ? 魔界で最強の悪魔なんだから」


「マジか!? 噂には聞いた事は有ったが、まさかそんな奴とやれるとはな……興奮してきた」

「まあ、精々頑張って」


「よっしゃ!! じゃあ、ヨシュア。今日からお前は俺達の仲間だ、宜しくな!」

「「宜しくっす!」」


 どんどん話があらぬ方向に進んでいき、置いてきぼりのヨシュアは困惑を極めた。


「えっ? なんですか一体……仲間ってどういう──」


「じゃあ、歓迎会すっから下降りるぞー」

「「「はーい」」」


 と、話を遮られ地下室のさらに下へとヨシュアは連行されて行った。


「ちょっと! 何なんですか!? 教えてー!!」



──とある地下『訓練場』──


「──それでは、歓迎会を始める!」

「「「ヒューヒュー!」」」


「頑張ってヨシュア!」

「「新人! 良いとこ見せろよ!」」


(これは一体なんなんだ……)


 とある地下室をさらに下へと降りると、そこは広い空間が広がっていた。


 簡単に言うと、此処は訓練場である。闇ギルドと言えば屈指の者達が揃っているのだが、それをさらに鍛えるため、闇ギルドのアジトには訓練場を設けているのだ。


 しかし、もっと簡単に言うと、戦闘狂の闇マスが戦いたくて作ったものと言える……。


「さて、俺達流の歓迎会、たっぷり楽しんでくれ。ようこそ、闇ギルドへ──行くぞ!!」


 闇マスはそう言うと、相対しているヨシュアへ殺気を放ちながら飛び込む──


「いや、ちょっと待って下さい! 止めましょうよこんな事! 意味が全然分からない!!」


 と、ヨシュアの困惑した言葉が訓練場に響くが、全く聞くそぶりを見せない闇マス。


 そして、闇マスの振りかぶった拳が、ヨシュアの目前に迫る──

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