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お人よし悪魔と駄女神さま  作者: 瑞沢ゆう
二章 エノク奪還編
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究極の二択

ブクマ、評価、ありがとうございます!

──エノクの町『とある地下室』──


「さあ、座って。ヨシュア」と、ヨシュアの耳元で呟く女。


 エメラルドグリーンの髪と瞳、長い睫毛、長い耳、プルンッとした唇……見る者を幻想へと誘いこみそうな美しさ。そしてその瞳に見つめられた男は、ひとたまりもなく直立不動で硬直してしまう。


 また、特記したいのはなんと言っても『ボンキュッボン』だ、もう一度記す『ボンキュッボン』だ。


 そんな艶かしい女はヨシュアを椅子へと座らせると、こともあろうにヨシュアへと跨がった。


「もう、ビックリしたわ──ヨシュアがこんな所に居るなんて。でも、会えて嬉しいわ」

「俺もビックリしたよ……まさか君がこんな所に居るとは思わなかったし 。それにしても、相変わらずだね"メーサ"」


「だって……あんな殺気浴びせられたら堪んないわよ。んぅっ」


 耳元で呟きながら、悩ましい吐息を吐くメーサ。そして、その豊満な胸をヨシュアの胸板へと押し付け、分厚いその唇をヨシュアの唇へと近付けていった。


 ピンクに染まる空間、場所が地下室という所だけに、その妖しさは男の本能を剥き出しにする。

 このまま唇同士が磁石の様にくっつき事が始まってしまう、そんな時、


「そろそろ、本題良いかな?」と、真顔でメーサへと問い掛けるヨシュア。


「…………」


 ヨシュアの興を削ぐ問い掛けにメーサは黙る。しかしその表情は残念さ、切なさ、苛立ち、と様々な感情が見え隠れする複雑な表情だ。


 何故この男はこうなのだろうか……良い所まで行くのに後もう少し、というと所で、いつもこうやって興を削ぐ事を言う。やはり女として見られていないのか……。


 メーサの心にそんな思いが次々と沸き上がってくる。


「ハァー。もういいわ、あんたに期待した私が馬鹿だった……」諦め顔のメーサは、そう言ってヨシュアから降りると、反対側の椅子へと座りなおし、横柄な態度で足をテーブルにドカッと乗せた。


「いや~ビックリしたわ。姉さんがいきなり男連れ込んだから、また急にスカウトでもしてきたと思ったのに、跨がっちまうんだもんな」

「私も、ナニが始まっちゃうのかドキドキだったわ……姉さんも女だったのかと期待したのに」

 

 突然現れた男女にからかわれるメーサ。すると、額にピキッと青筋が立ち表情を強張らせる。


「うっさいわねあんた達!! 沈めっぞ! それと、此方の冴えない男はお客様だからお茶でも出してやんな」

「「おー怖……」」


「てか、お客様って……さっきと態度全然違くない? 会えて嬉しいとか言ってキスしようとしてたのに」

「確かに。でも、あの様子じゃ振られたみたいだからそっとしといてやろうぜ」

「全部聞こえてんだけど──死にたいの?」

 

 メーサの殺気が二人を襲う。流石に冗談が過ぎたようだが、日頃からこきつかわれている二人にとって、この位良いじゃんという思いもあった。


「はいはい、じゃあ私達はお茶入れて来ますね」


 女の方がそう言うと、男を連れ立っていそいそと消えいくのだが、


「振られた女って怖いな」「本当ね」


 嫌がらせにも近いその呟きは、確実にメーサの耳へと届いていた。


『グサッ!!』


 何かが刺さる音と共にメーサの『チッ』という舌打ちが地下室に響く。


「アイツら後でぼろ雑巾にしてやる……で? 頼みたい事ってなによ」


 メーサの問いに、やっと本題に入れると思ったヨシュアは口を開いた。


「ここは闇ギルドでいいんだよね?」

「そうだけど、誰か秘密で殺したいの?」


 メーサのそんな物騒な物言いに、ヨシュアは子爵の暗殺も頼めるのか? と、ふと疑問に思い、ものは試しとばかりに口にしてみる。


「スネーク子爵の暗殺って頼める?」

「ああ、アイツか。あれは他の奴からも頼まれてるけど無理だね。アイツは自分が殺されないように闇ギルに金貨一万枚払う事になってるんだ──まあ、それ以上出せるなら話は別だろうけど」


(金貨一万枚!? 流石にそんな大金無理だ。それにしても、どうやってそんな大金稼げるんだ? ……まあ、いいか) 


「そんな大金用意出来ない」

「なら諦めるんだね。……じゃあ、他に用が無いならこの後飲みに行かない?」


 メーサはあわよくば、の思いでヨシュアを誘う。


「いや、そっちはついでで、別に頼みたい事が有るんだ」

「なら早く言ってよ、今日は飲みたい気分なの」


「うん、実は身分証を作って欲しいんだ」

「ああ、そう言う事ね。そんなの簡単だよ、明日には用意してあげる」


「ありがとう、メーサ。じゃあ二枚頼むよ」

「ん? 二枚ってヨシュアと誰よ?」


 聞かれた事は答える馬鹿正直なヨシュアは、ペロッとララと一緒に住んでいる事やララも身分証が無くて困っている事を話してしまった。


 それが、メーサの逆鱗に触れるとは思わずに……。


「へー、そう言う事なんだ。私の事散々もてあそんで、挙げ句見向きもしてくれなかったクセに自分は他の女と宜しくやってたんだ。私がどんな気持ちであんたの元を離れたのかも知らないで……しかもそれを私に頼むって! どんだけ私の心を掻き乱せばあんたは満足なの!!」

「えっ、いや……もてあそんでなんかいないよ? な、なんでそんなに怒ってるの?」


 ここまで言われてメーサの気持ちに気付かないのは鈍感を通り越して『無感』では無いかと思えてくる。

 そして、本当は知っていて気付かないふりをしているのでは? と、勘繰りたくなるほどだ。


 そんなヨシュアに苛立ち「金貨二百枚」と、冷たく呟くメーサ。


 しかし、本当の代金は一人分で金貨十枚である。

 二人合わせても金貨二十枚なのだが、よほどムカついていたのだろう本来の値段の十倍を吹っ掛けていた。


「えっ、そんなに!? レ、レー君は一人金貨十枚だって──」

「うっさい!! ヨシュアの分だけなら金貨十枚、女の分もなら金貨二百枚! 払えないなら帰れ! 馬鹿ヨシュア!!」


 腹に据えた思いを罵声で表すメーサ、見ていて少し不憫に感じてくる。


「え、でも……」


 本来であれば金貨二十枚なのだ。その金額ならレメクが貸してくれると言っていたが、流石に金貨二百枚は借りれない。


「で、どうすんの! 私かその女どっち選ぶのよ!」


 煮え切らないヨシュアの胸ぐらを掴み、そう叫ぶメーサは究極の二択を迫る。


「えー? なに、どっちって? なんでそうなってるの?」


 訳の分からない選択を迫られ困惑するヨシュア。しかしメーサは待ってやらないとばかりに「早く決めろ!」と、叫ぶ。


 そして、焦ったヨシュアは思いのままに口を開く。


「じゃあ──」

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