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お人よし悪魔と駄女神さま  作者: 瑞沢ゆう
二章 エノク奪還編
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闇の者

ブクマ、評価、大変ありがとうございます!

そして、なんと! 100万PVを達成致しました!


これも皆様のおかげでございます。

よし、目指せ一億PV!!

──人間界、エノクの町『酒場』──


(ララちゃん、絶対怒ってるだろうな……)


 酒場の前で入る事を躊躇うヨシュア。


 それもそうだ、うっかりとはいえ同居人であるララを置いてきてしまったのだ、ララのむくれっ面がどうしても頭から離れない。


(それにしても、昨日よりでかくなってないか?)


 と、謎の進化を遂げた巨樹を見上げるヨシュア、これも多分、ララが怒ってやったのでは無いかと不安が込み上げてくる。


(ハァー、しょうがない……いこう!)


 意を決して、酒場に飛び込むヨシュア。そこに待ち受けていたのは……。


「いらっしゃいですわ!」と、バッチリ営業スマイルのララだった。


「えっ、何してるの? ララちゃん……」


 当然の疑問であろう。ララの正体を知っているヨシュアは女神が酒場で給仕しているなど違和感でしかない。


 しかし、当の本人は、


「あら! ヨシュア様ではないですか! 何って、働いているんですわ!!」と、ドヤ顔だ。


「ああ……そうなの? 何でまた?」

「……何故でしょうか? 流れに身を任せていたらこうなっていました。でも、楽しいですよ!」


「そう、ならいいんだけど……所でさ、酒場の雰囲気がガラッと変わってるけど、ララちゃんがやったの?」と、置いてきぼりにした話題がララから出ないうちに、他の話しで誤魔化そうとするヨシュア。


「ええ、私がやりました! どうです、素敵だと思いません!?」


 そう言ってララは巨樹を指さし、褒めて欲しそうにヨシュアをチラッと見た。


「た、確かに、凄い事になってるね……」

「凄いだけじゃないのですよ! ほらっ、行きましょうヨシュア様!」


 思った反応と違うと思ったララは、これを見せればとヨシュアの腕をグイグイ掴み、巨樹へ向かって進み出す。


 二人が進む巨樹を少し引きで見てみると、幹に渦を巻くように、手すりが付いた螺旋状の階段が上へ上へと伸びていた。


 階段を登った先には円状にテラスが広がっており、広さは大体、四人掛けのテーブルが二十卓ほど入りそうだ。それが計十一階層でワンフロアの高さは約五メートル、巨樹の高さは約六十メートルとかなりの規模の施設である。


 そして、驚くべきは幹の中に入れるという事。中は空洞になっており、中と外で食事と酒を楽しめるようになっているのだ。


 幹の真ん中には滑車が通っており、下で作った料理や酒を乗せて運べる。そして、今日は五階分まで客が入っており大抵の客はテラスで外の景色を楽しみながら酒を飲み交わしていた。


 マスターは客の大入りに大層ご満悦の様子だ。泣いた甲斐があったというものだろう。まあ、忙し過ぎるため給仕達はもう勘弁して、と泣きそうだが……。


 そしてこの巨樹は、後に巨大複合施設『楽園の塔』と呼ばれ、そのオーナーとしてマスターが一財産築くお話はまた別の機会で。


 話が逸れたが、そんな巨樹を最上階『展望デッキ』まで登ったヨシュアとララは、二人並んで町並みを見ていた。



「綺麗な眺めではないですか?」と、期待を込めた瞳で問い掛けるララ。


 きっと「君の方が綺麗だよ」とでも言って欲しいのだろう──しかし、


(綺麗って言っても、いつも空から見てるからな……てか、ララちゃん飛べるからもっと高くから見れると思うんだけど……)


「そうだね?」


 と、ヨシュアはこの通りである。期待をする方が馬鹿なのかもしれない。


「もう……ヨシュア様の、馬鹿ー!!」


 そう言ってララは怒って行ってしまった。残されたヨシュアは(何で怒ったの?)と、通常運転だ。


 そんなヨシュアは、


(あっ、そう言えば、やらなきゃいけない事が有ったんだ)と、町に出発する前に話したレメクとの会話を思いだしていた。



──いいかよっちゃん、酒場に着いたらおもいっきり殺気を放て。そうすれば『ヤツ』が釣れる」

「分かった。それでその人が来たらレー君の名前を出してララと俺の身分証を頼めばいいんだよね?」


「ああ、俺も此処に来た時に世話になった。それに、奴は同じ魔族だから安心して頼め」

「うん、でも何で殺気なの?」


「ん、ああ。奴はつええ奴に敏感だからな。よっちゃんの殺気なら間違いなく飛んでくるぜ」

「そんなもんかな? 所で、その人の名前は?」


「さあな、奴は闇の住人だ、一々名前なんか名乗らねえから分からん」

「そっか、その『闇ギルド』って信用出来るの?」


「信用は出来るが信頼はすんなよ。足元掬われるぜ」

「どういう事?」


「奴らはあらゆる所から依頼を請け負う、王族、貴族、商人。そして、金さえ払えば何だってやるのが奴らだ、どっかの貴族が敵対する貴族を消すのに暗殺依頼を出した数日後に別の敵対する貴族に暗殺依頼をかけられて殺されたなんてのも有るらしい。だから絶対気を許すなよ? よっちゃんは人が良いから特にな」

「えっ、あ、うん。気を付けるよ──


 この会話は昨晩、レメクとの飲みの席で、冒険者をクビになってどうしようも無くなり半ば自棄になってこの地にやって来た事を話した所、レメクが返した『闇ギルド』なら身分証を作ってくれるという話の延長であり、ララを迎えに行く出発前にその会話を思い出したレメクからの助言だ。


 そんな会話を思い出したヨシュアは、


(どれ、その闇ギルドの人を誘い出してみるか)と人の姿を解き、本来の姿である悪魔へと戻っていく。


 そして、


(殺す殺す殺す殺す殺す殺す、全員皆殺しにしてやる!!)


 増悪が籠ったそんな思いを殺気にのせ、解き放つ。

 町を覆いつくすほどの殺気、その余波は──一流と呼ばれるあらゆる者を氷つかせた。


──エノクの町「領主邸」──


「ひぃぃぃ!! なんだ今の殺気は!?」


 子爵が身を縮ませながら怯えた表情で、そう問う。すると、天井から二人分の気配とともに返答が返ってきた。


「わかりません。しかし、味わった事の無い程の殺気でした……」と、一人が返すと、子爵は少し思案した後こう呟く。


「明日、声明を出す。お前らの所から護衛を出せ! 一番、一番強い奴だぞ! そ、それと今すぐ護衛を増やせ!! 分かったか!!」

「は、はい……かしこまりました」


 それを最後に天井裏の気配が消えると、子爵は恐怖に震え机の下に隠れてしまった。


 ここまで恐怖を覚えるという事は、それほどの悪事に手を染め、多くの者から恨まれていると自覚しているのだろうか……。


──エノクの町『酒場、展望デッキ』──


 その頃、殺気を出し尽くしたヨシュアはスッキリした顔で町の景色を見ながら来訪者を待っていた。


(まだかな? そろそろ来てくれると嬉しいんだけど)


 ヨシュアがそんな事を思っていると、階段を登る『コツ、コツ』という音が聞こえ、ゆっくりとヨシュアの居る展望デッキへと向かっているようだ。


 その音を聞いたヨシュアは、一歩一歩近付く気配に(遂に来たか)と、階段を見つめ身構える。


──そして、階段を登り展望デッキへとやって来た者は……。


 真っ黒のフードで顔を隠し、ヨシュアを見つめこう呟いた。


「やっぱりヨシュアだ、フフッ」と。

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